風月も皆様の話に触発されてうっかり参戦っ!
どうぞお楽しみくださいませ☆

でも結構暗いスタート?!
今回少し短めです☆


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不安な夜 2《魔神様のお祭り参加》



『敦賀蓮には好きな人がいるらしい。』

キョーコの耳にそんな噂が届き始めたのは約一ヶ月程前からだった。

胸の中にモヤモヤとした気分を残しつつも、蓮の前では完璧な後輩を演じる。

だがそんなある日、キョーコは蓮へ告白する女の子の姿を目撃してしまったのだった。

綺麗に巻かれた髪に、抜群のスタイル。可愛らしい雰囲気の中にも大人の魅力を持った若手カリスマ女優が蓮に告白していたのだ。
あんな女性になりたいと切望していたキョーコにとってこの告白シーンへの遭遇は衝撃的だった。

「ごめんね…。君と付き合うことは出来ない…。」

申し訳なさそうに断りの言葉を述べる蓮にホッとしつつも、キョーコは絶望的な気分を味わった。

「…どうして?今、彼女いないんですよね?私じゃ…ダメですか?」

それでも尚食い下がる彼女に、蓮は申し訳なさそうに首を降った。

「ごめん…。好きな娘がいるんだ…。」

その言葉を聞いた瞬間、キョーコの中でガラガラと何かが音を立てて崩れて行くのを感じた。

自分は蓮に好きな人がいることを知っていたはずなのに、改めて聞かさせた言葉にキョーコは
ショックを隠しきれなかった。

あんなに素敵な人でもダメなのだ。自分なんて、足元にも及ばないくらい素敵な女性を想っているに違いない。

「相手は…どんな娘なんですか?」

どうしても諦めきれないのか、告白した女の子が蓮を問い詰めたが、蓮は首を降った。

「ごめん。それは言えない…。俺の勝手な片想いなんだ。俺のせいでその子に迷惑をかけたくないんだ…。」

キョーコはそれ以上会話を聞くことが出来ずにその場からそっと逃げ出したのだった。



「…がみさん…さんっ…最上さん!」

「え?・・・・ああ、はい・・・なにか御用ですか?」

蓮を目の前にして数日前のあの告白の日のことを思い出していたキョーコは、蓮に呼ばれていたことに気付くのが遅れてしまった。
変に思われただろうか?

「いや、用とかはないんだけど・・・・・最上さん、何か悩みごとでもあるの?」

「え?悩み事ですか?いえ、特にないですけど?」

「じゃあ・・・・・・今何を考えていたの?心ここにあらずって感じだったけど」

言えるわけがない。だからこそ、なんでもないというように装った。

「ああ、明日の仕事は早いから、帰ったら早めに寝ようとか・・・・あっ!」

「え?」

「すみません、時間ですので、私は失礼させていただきますね!」

これ以上一緒にいるのが苦痛で、顔を見るのが辛過ぎてキョーコは時間のないふりをして急いで立ち上がった。

「待って!車で送るから!」

「お気遣いなく。ちゃんと今日はタクシーを呼んでありますから」

「え?」

先輩からの申し出を口から出任せで断る。
蓮に対して抱く想いは最早一後輩が抱いていいような想いではないのだ。

いい後輩でいようとすることにすら罪悪感を感じるほどだった。
慌てて、車のキーを取りに寝室に向おうとした蓮に本当に大丈夫だということを伝えるために少々早口で口を開いた。

「ではこれで失礼します。敦賀さんも早くお休みになってくださいね」

「うん、今日はありがとう。帰り気をつけてね。家についたら電話して?」

今日は送られずに済むことにホッと安堵の息を吐いて、蓮の言葉に靴を履く振りをして顔を背けそっと淋しそうに微笑むと、顔を作り直して蓮に向かって言った。

「いいえ、もう遅いので電話はしません。心配しなくても大丈夫ですから。では!」

腕時計をチラリと確認する振りをして、時間がない演技をしつつ、足早に蓮の部屋を後にしたのだった。


蓮のマンションのエレベーターを降りてふぅー。と息を吐く。

どんよりとした雲が掛かった夜空を見上げてキョーコはまるで私の今の心のようだわ…と、思いながら帰路に着いた。


ふとした時に思い出すのは数日前の告白シーン。
女性の憧れNo.3に輝いたこともある女優でさえも、敦賀蓮の心は動かされなかった。

ーーーあんなに綺麗な人でダメだなんて…私なんて全然対象外で当たり前だわ…。

携帯電話を取り出して、蓮を想って握り締める。
自覚せざるを得なくなったこの想いを伝えた方がもしかしたら楽になるのかもしれない。

しかし、断わられた女性を思い描くたび、断わられることがわかり切った自分が告白するシーンは旗からみて滑稽以外の何者でもないと感じてしまうのだ。

ふぅ…と本日何度目かわからないため息をつきながら、思考の渦にのめり込むキョーコはいつものことながら、周りが見えておらずボーっとしてしまっていた。

その時、あははははと、男女数人の笑い声が耳を直撃したと思った瞬間、信号待ちしていたキョーコに衝撃が走った。

若干酔っ払っていた集団の一人がキョーコにぶつかってしまったのだ。

「あ、ごめ…」

ぶつかった本人が謝罪しようとした時には、キョーコの身体は道路に傾いていた。


ーー パッパーパパパパパパッーーー

けたたましいクラクションと共に、キョーコの目には迫り来る眩しい光が鮮明に映った。

食い入るように近付く光を見つめながら、キョーコは蓮の今までにみた表情を走馬灯のように思い出していた。

「危ないっ!!!!」

思考も働かず、周囲の叫び声もバイクのクラクションも聞こえない光の中にキョーコの意識は吸い寄せられていた。

手から零れ落ちた携帯が地面に叩きつけられガチャンと言う音が響いた。

その直後に辺りに響いたグシャッという音ーー。

そしてキョーコはーーー…



蓮がキョーコにメールを送る僅か3分前の一瞬の出来事だった。



《続く》



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魔人様~!え?!と思われるスタートでごめんなさーい!
でもでも浮かんでしまったのですっ!!

ウチの蓮キョがこれからどうなって行くのか気長にあたたかーく見守ってくださいませ♪