なんとか終わりました!!
最終話ですぅー♪

お楽しみくださいませ♪


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海・水・浴 5


途切れた意識の中、唇に何やら柔らかい感触が触れ、口の中に生ぬるい何かが流し込まれた。
柔らかい何かが口を覆って、次々と流し込まれるそれを、なんとか何度か飲み込みながら、意識が段々と浮き上がるのを感じた。

軽く咳き込んだことで、意識が戻ったキョーコは、ボーッと目を開いた。目の前には蓮がいて心配そうに複雑な表情で自分を見つめていることに気付き安心させたくて言葉を出そうとしたけれど、上手くいかなかった。

「…あ…つ…が、…さ…」

蓮の泣きそうな程酷く歪んだ顔をみながら、何とか笑いかけようとしたら、すぐに蓮の胸に抱きしめられた。

ざわっと周りの空気が乱れたことで、そこに沢山の人がいる気配を感じて、キョーコは蓮の胸の中で真っ赤になっていた。

慌てて蓮の身体から離れようと蓮の腕に手をかけた時、蓮の身体が僅かに震えていることに気付いたキョーコはそっと蓮を仰ぎ見ようとするが、それは抱き締められた腕に阻まれて上手く見ることが出来ない。

「つるが…さん?」

呼び掛けに答える代わりに蓮の抱き締める腕に力が篭る。

ーーー泣いてる…の?


自分の為に泣いているのだろうかと考えて、不思議な感覚に陥った。

違うかもしれないし、そうなのかもしれない。
腕の強さに抱き潰されそうな感覚を持ちながらも、キョーコの心にはじんわりと暖かい気持ちがこみ上げてきた。

ーーー心配…してくださったんですね。ありがとうございます。敦賀さん…。

キョーコは、そのまま蓮の腕をキュッと握り締めて、蓮の胸に顔を埋めて目を閉じ、その身を委ねた。


「良かった…」

しばらくして、蓮が漸く言葉を発したので、キョーコはそっと蓮を見るために顔を上げた。

「君は…すぐ無茶をするんだから…。」

そう言う蓮の顔は安堵の中に、苦しさを混ぜたような表情で、目元が微かに濡れていた。キョーコは申し訳なさそうに眉尻を下げる。

「ごめん…なさい…」

確かめるようにそっと頬に触れた蓮の手にキョーコが頬を寄せる。
何度も頬を撫でた蓮はやっと安堵の色を深くしたのをみて、キョーコも蓮を安心させようと少しだけ微笑みかけた。

「良かった…君が無事で…本当に、良かった…。」

「敦賀さん…」

心の底から安堵している声に、キョーコはまたもや胸が締め付けられる。

今までに感じたことのない甘い、甘い感情が溢れてくる。

自分を覗き込む瞳の色が、自分の頬に触れる蓮の手の動きが、キョーコへの蓮の想いの深さを物語っていた。

その瞳が不安に揺れ動くのを見つけて、キョーコは蓮への愛しさがさらに膨らむのを感じた。

ーーーずっと側にいたい。この愛しい人の…側に…。誰よりも貴方の側に…。
馬鹿な感情…なのかもしれない。もしかしたらこの人にも捨てられる日がくるかもしれないのに…だけど…。

蓮がキョーコの頬を撫でていた親指の動きを止めると、二人の視線が絡まった。

蓮の手が、キョーコの頬から首の後ろに回る。
そっとキョーコの頭を持ち上げ、徐々に近付くその顔に見惚れていると、唇に柔らかい感触が重なったのを感じた。
至近距離に目を閉じた蓮の長いまつげを凝視する。

ーーーえ…キス…されてる?

優しく触れて、一度離れた唇。
蓮の目が少し開いて、キョーコと視線が絡まるとキョーコは頬を少しだけ染めて潤んだ瞳で蓮を見つめ返した。

ーーー嬉しい。あぁ、好き…貴方が好きです。

目を細めながら再び近付く唇に、キョーコは応えるようにそっと目蓋を閉じた。

何度も何度も角度を変えながら重ねられる唇。

甘い甘い優しい口付けに、キョーコの心にじわりじわりと幸福が広がる。

角度を変えるたびに離れる唇が寂しくてもっともっとと思わず追いかけていた。

ーーー私…敦賀さんと…キス…してるんだわ。


恥ずかしいようなくすぐったいような…でも癖になりそうな感触を楽しんでいると、不意にキョーコの鼻がムズムズし始めた。



ーーーんっ。くしゃみ…出そう…っ!!



そう思ったキョーコが蓮から離れようと試みるが、蓮はそれを許さず追いかける。

出そうになるくしゃみを必死に抑えながら、蓮の胸板を強く叩いてグイッと全身の力を絞り出して蓮から逃れようとすると、漸く蓮が開放してくれた。

何で?と責めるような困惑したような視線で見てくる蓮の顔から慌てて顔を逸らした瞬間…。

「はっ…くちゅん!!」

顔を逸らしたはいいものの、蓮の胸板に向かってくしゃみをしてしまった為、蓮の方へ思いっきりくしゃみを飛ばしてしまった。

蓮は目をまん丸に見開いて、そんなキョーコの姿を見ていた。

「あ…。ご、ごめんなさい!!ごめんなさい!!ごめんなさい!!ごめんなさい!!」

ーーーやだっ!私ったら汚いっ!!敦賀さんに嫌われちゃったかも…。

キョーコの顔が真っ青に変わる。瞳に涙をいっぱいに溜めて、泣きそうな顔で蓮に謝り倒した。

「ぷっ。くくくくくく…。」

キョーコがもう本当にどうしたらいいのかと途方に暮れた時、頭上から押し殺したような笑い声が聞こえた。

「え…?きゃっ!!」

不思議に思って、見上げようとしたところで、またもや蓮に強く抱き締められた。

「クク。…ごめっ!!笑っちゃダメだと思うんだけど…ククク。ごめんっ!!無理だ。最上さんっ!可愛過ぎっ!!」

「えええぇ?!」

嫌われると思っていたキョーコは蓮の言葉に驚いてしまった。
蓮を汚してしまったというのに、何が可愛いのだろうか?

「き、嫌いに…ならないですか?」

気を遣って言ってくれてるのだろうかと、涙目で見上げると、蓮は嬉しそうに破顔した。

「嫌いになんて、なるわけないだろう?俺はこんなにも君に夢中なのに…。」

ーーーそう、君のものだとわかっていたら鼻水すら愛しいと思うほど、俺は君に夢中なんだ。

そう心の中で思いながら、蓮はキョーコの頭を嬉しそうにポンポンと叩くと、額にそっと口付けを落とした。

「もう君を離せない。誰よりも君の側にいたい。君の笑顔を俺だけのものにしたい。最上さん…好きだよ。ずっと…ずっと…。」

「敦賀さん…。」

蓮の告白にカァッと赤くなりながら、キョーコは蓮に縋り付くように蓮の腕に顔を埋めた。

「私も…貴方が好き、です。」

消え入りそうなキョーコの声をしっかり聞き取った蓮は、幸せいっぱいに破顔してキョーコのツムジにキスを落としてもう一度強く抱きしめた。

「君は、もう俺のものだ。」

蓮の嬉しそうに言う言葉に、キョーコもふふっと嬉しそうに微笑んだ。

もう一度キョーコが小さくクシャミをしたことで、蓮はキョーコの身体を引き起こして抱え込んだ。

「身体…汗が冷えちゃったんだね?寒い?」

蓮の足の上に座らされて全身を包み込まれた感覚に、ドギマギとしつつ、大丈夫と言いかけたキョーコはビキリと固まった。

ーーー汗?!そう言えば私…坊の中で、大量に汗かいて……

蓮に思いっきり密着しているという事は、蓮に汗がついてるという事で…つまるところ、汗臭い身体を抱き締められているということで…。

「ぃいぃっっっっやぁぁぁぁぁーーーーー!!!!」

真っ青になったキョーコの大絶叫が突然響き、その場にいた者たちはクラクラと目を回したのだった。


「病人はどこですか?!」

その現場から離れていたスタッフに誘導されてきた救急隊員は驚いた。

あたふたと顔を赤に青に変えるただ一人の少女を残して、他のものたちはほぼ全員、その場に突っ伏して目を回していたのだ。

「た、大変だぁ!!直ぐに応援を呼ばないとっ!!」

全員が熱中症で倒れていると思ったのか、蒼ざめてしまった救急隊員に、他の人よりも若干耐性のあった蓮が一番に立ち直り、救急隊員に手を上げた。

「いえ、他の人たちは一時的なもので大丈夫ですから。通報した病人はこの子です。」

一番元気そうな女の子を指さされて驚いた救急隊員だったが、次々に周りが起き上がるのを見て、首を傾げつつも、キョーコへと近づいたのだった。


「立って歩けますか?」

救急隊員の質問に、キョーコは不安気に瞳を揺らしながら立ち上がろうと試みたが、蓮に肩を貸されても上手く足に力が入らなかった。

ぐらっと傾いたキョーコの身体を蓮は咄嗟に支えて、キョーコをそのままお姫様抱っこで抱え上げた。

「俺が…運びます。」

「きゃっ!!つ、敦賀さんっ!!」

「暴れないで…大丈夫だから。」

優しい蓮の甘やかすような声に、暴れようとしていたキョーコは申し訳なさそうに眉尻を下げて素直にコクンと頷いた。

「つ、敦賀君!君はまだ撮影が…」

監督が漸く我に返り慌てた声をあげたが、蓮は足を止めて申し訳なさげに頭を下げた。

「はい。わかってます。でも、せめて救急車まで…見送らせて下さい。ちゃんと戻ってきますから。」

「…わかった。よーし!皆!!15分後には再開だっ!!準備して!!ほらっ!!散った散った!!」

まだ悶絶しているスタッフ達にも喝を入れて、取り仕切ると撮影現場はまた動き始めたのだった。





「あ、これ…もう放送されてるんですね?」

キョーコは可愛らしいエプロン姿のままで、キッチンから顔を出した。

手にはトレーに載せたスープとサラダの盛り合わせが二人分乗っている。

『今日のゲストはっ!!皆さん鼻血出して倒れないで下さいね!!敦賀っ!蓮っさんっです!!!!』

一週間前に収録したはずの映像がもう放送されているのを見て、キョーコは蓮の座るソファーの隣に腰を下ろした。

「そうみたいだね?」

言いながら蓮は自然な動作でキョーコの肩を抱き寄せ、そのコメカミにキスを落とした。

キョーコがおずおずと蓮の肩に頭を預けると蓮の手がサラサラとキョーコの髪を撫でた。

蓮は、さりげなくずっと坊の隣をキープしてる光をみて少しだけ顔を顰めた。
キョーコはキョーコで、蓮の隣にまとわりつくみちかや、ナイスバディのほのかとの息のあったチームワークを見て、本当に自分でいいのかな?とやはり自信がなくなりそうになっていた。

「来年はキョーコと二人っきりで海水浴に行きたいな。もちろん、着ぐるみはなしでね?」

画面に見入っていたキョーコの耳に、蓮の声が不意に入ってきた。
言いながら蓮はキョーコをすいっと膝の上に引き上げて横抱きにして抱き締める。

「そう…ですね。行きたいですっ!海水浴っ!!今回は全然味わえなかったですし…。」

海水浴の企画はキョーコの胸を踊らせていたのだが、坊の格好をしていたために、全然海水浴の気分を味わえなかったことを思い出した。

「誰の邪魔も入らない場所で、二人っきりで海水浴…したいね?」

「ふふ。プライベートビーチ…ですか?」

「うん。海が見渡せるバルコニーでシャンパンでも開けてさ、夜は浜辺で手を繋いでデートするんだ。」

「ロマンチックですね?」

「行きたいだろう?」

「行きたいですっ!!」

蓮の提案にキョーコは目をキラキラと輝かせた。半分メルヘンの世界の住人になりかけているその姿を蓮は蕩けんばかりの笑顔で見つめる。

「来年、絶対に行こうね?約束。」

「え?」

「本当は一週間くらい行きたいとこだけど、行けて3日かな?二泊三日でどう?」

「ええぇぇ?!でもプライベートビーチなんて何処に…。」

「それは秘密。行ってからのお楽しみだよ?」

「本当に…本当ですか?来年も、隣にいていいですか?」

「来年と言わず、ずっとずっと側にいて?それこそ、死ぬまでずっと…。」

「ふふ。なんだか、プロポーズされたみたいです。」

照れ臭そうにハニカミ、片手で口元を隠そうとするキョーコの手を取り、蓮はそのまま手の甲に口付けた。

「みたいじゃなくて…そのつもりだよ。俺と、結婚を前提にこれからも付き合ってくれるでしょ?」

「え…?」

キョーコは蓮の突然の言葉に面食らった。

「あ、あのっ、普通こういう場合って、結婚を前提に付き合ってくれないか?とかなんとか言うものじゃないでしょうか?なんでいきなり断定系なんですか?」

「だって、あの海水浴場でキスした時、キスの合間ももどかしい感じで、キョーコも俺にキスを返してくれてただろ?」

キョーコはそのことが蓮にばれてたのを知り真っ赤になった。
気付かれてないと思っていたのだ。

「な…な…」

「あ、気付いてないと思った?あの時俺はもう君の答えをもらったんだ。絶対に君を離さないってあの時のキスに誓ったんだよ?」

「そ、そんな勝手な…」

茹でダコのように真っ赤になったキョーコに、蓮は額をくっつけた。

「おじいちゃんやおばあちゃんになるまで、一緒にいようね?キョーコ。俺は君以外はもう、考えられないんだから。」

蓮の優しい声音が紡ぐ言葉にキョーコの胸はきゅうんと締め付けられた。

「後悔…しませんか?私なんかにそんなこと言って…」

「しないよ?するわけないだろう?」

「でも、先のことなんてわからないのに…っ!」

「先のことはわからないけど、もう決めたんだ。他の何を手放したとしても、君だけは絶対に離さない。」

キョーコの目から涙が零れた。次々に流れる涙は、キョーコの意志に反してポロポロと零れ落ちる。

「あ…やだ。なんで…っ涙が…。ちが、違うんですよ。敦賀さん…あの、なんていうか、すごく…嬉し…っく…て…」

「うん。わかってる。わかってるよ。キョーコ。」

そう言って、そっと涙がこぼれる目尻に唇を寄せた蓮に、キョーコはしがみついてわんわんと泣き始めた。

蓮はそのキョーコ背中を優しく叩いて宥めた。

「キョーコ、愛してる。来年も再来年も、その先もずっとずっとキョーコと二人で歩いて行きたい。」

蓮の優しい声に、返事をする変わりにキョーコはギュッと蓮の首に抱きついたのだった。


END



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☆オマケ☆

漸くキョーコが落ち着き始めた頃、番組は後半に差し掛かっていた。

ビーチバレー対決のゲーム以降は坊が抜けたことにより全部カットされ、変わりに番組の後半は新たな特集が組み込まれていた。

そこに登場したのは何故だか蓮と京子が所属する事務所の社長であるローリィで、蓮は嫌な予感にたらりと汗を流した。

そこに流れたのは、やはりと言うべきか、あの時のキョーコを必死で助けようとする蓮の姿で、キョーコだとわかってからの狼狽えぶりも余すことなく放送されており、蓮はやっぱり…と思いながらガクリと項垂れた。

その様子を丸々と目を見開いて固まって見ていたキョーコは、そこで漸く蓮に口移しで水を与えられていたことを知り、真っ赤になった。

「きゃーー!!破廉恥よぉぉぉぉー!!!!」

途中から見ていられなくなったキョーコはテレビをコンセントごと引き抜いて画面を消すと、そのままソファーのクッションに顔を隠した。

そんなキョーコが可愛くて堪らず、蓮は笑いながらキョーコを後ろから抱き締めて、髪にツムジにとキスを落とした。

ーーーあの映像は社長に頼めばもらえるかな?

キョーコの反応をみて、あれは永久保存版にするべきだろう。などと思った蓮は、腕の中の温もりにこれ以上ないほどの幸せを噛み締めたのだった。


☆おしまい☆


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やっとこさ終わりました!!
本当はキョーコと蓮を見てしまって使い物にならなくなってしまった光君とか、テンション下がりまくってやる気を失ったみちかちゃんとか、これチャンスとばかりにみちかとほのかを口説きまくる貴島とか書きたかったですが、絶対に収拾がつかなくなりそうだったので、やめました(笑)

でも、その後の撮影はどうなった?!と気になる人もいるよね?どうしよう…と迷ったけど、考えてるうちにローリィまで出しゃばってしまって、本編に入れたらなんか話の趣旨が変わるだろうと判断して一旦終わらせることにしました。

なので、オマケとして坊がいなくなった後の番組はどうなったかという補足を書かせて頂いてます(笑)

キョーコちゃんのくしゃみは、汗が冷えたら絶対出るよね?しかも、日陰で風通しが良くて氷を体に当ててるんだから、出なきゃおかしいよね?!とか思ってたらあんな内容に…(笑)

いや、本当に出来心といいますか、本当にすみません。(汗)

遊びました!!ええ、ええ、そこは認めますともー!!(笑)

細かく突っ込もうと思ったらきっと穴だらけのお話ですが、
楽しんで頂けたら幸いです。
皆さんの想像力をフル回転させてお楽しみくださいませ(笑)

お付き合いありがとうございました!!



さてさて、これをもってして、メロキュン企画お題テーマ第五弾『夏といえば…』は一旦これで終了です!!
といいましても、もしまだ書き足りないっという研究員の方がいたら遠慮なくUPしちゃって下さいね♪


お次はメロキュン企画、第六弾っ!!
もう企画内容は決まっておりますっ!!
第一走者の風月が準備でき次第、テーマと内容の方を発表させて頂きますね♪

メロキュン研究員の皆様は、グルっぽの方に第六弾のご案内をすでに載せておりますので、良かったらチェックしてどんどん参加して下さいませ♪

ではでは、またお会いしましょう♪


風月でしたー♪