2にしてますが、君の隣のキョーコバージョンです(笑)
最後に少しオマケが付け加えられたくらいです~( ´ ▽ ` )ノ
*****
君の隣 2
「京子ちゃん!デュエットしようよ!!デュエット!!」
「あの、あまり私歌を知りませんので…」
「まぁまぁ、あ、これなんかどう?」
「あの…だから…」
「あーこれもいいな。京子ちゃんはどれがいい?」
「………。」
新しいドラマの話を頂いた時、キョーコは嬉しくてクルクル回りながら台本を抱き締めて戯れた。
ーーーまた敦賀さんと共演出来る!!
尊敬する先輩の演技を真近で見れること。そして何より食生活が心配な蓮の様子をみることが出来るし、必要とあればお弁当だって作っていける。
その事にルンルン気分になりながら撮影に臨んだのだが、実際は主演の女優が蓮にピッタリとくっ付いていて、近づく事が許されなかった。
唯一主演女優の深澤がいない間に食事のことを話題に出し話かける。
話かける口実はそれくらいしか思い浮かばなかった。
蓮と会話を楽しんでいると不意に他から声がかかった。
「あ!京子ちゃん!今日もよろしくね!」
ーーー残念。タイムリミット…だわ…。
同じ現場にいても話せる機会は少ない。
漸く話せても最近は良く以前マスコットキャラの坊の時にお世話になったブリッジロックのメンバーに懐かしいのか囲まれてしまうのだ。
「おはようございます。光さん。」
残念な気持ちを綺麗に隠して笑顔で答えた。
「カーーーーット!!お疲れ様!!」
「「「「お疲れ様でしたぁ!!」」」」
監督の声を合図に撮影が終了すると、みんなの目の前で主演の二人に花束がスタッフから贈られ、エキストラも含めその場にいた全員が拍手を送る。
並んで立つその二人の姿が酷くお似合いに見え、キョーコは拍手をしながらも表情は優れなかった。
嬉しそうに笑いながら頭を下げる深澤とそれより控え目に頭を下げる蓮の姿。
そっと深澤の手が蓮の腕に掛かる。
深澤が蓮に何かを囁きかけると、蓮は笑って答えていた。
しかし、その際にキョーコは見逃さなかった。蓮の腕にさり気なく押し付けられた胸。
それに気付いているのかいないのか、蓮は笑ってるのでその真意はわからない。
ーーー嫌だな。
キョーコの中でポツリポツリと浮かび上がる想い。
ーーーそんなに近付かないで欲しい…。
彼女でもないのに、気付いたらそんなことばかりを考えてる自分に、キョーコはハッと気付いて首を振る。
小さく息を吐いて、キョーコはそっと人差し指で服を引っ張り自分の胸を覗き込んだ。
他の人に比べるとほとんどないのと同じくらいの自分の胸に今度は大きなため息を零す。
「京子ちゃん、お疲れ。」
「お疲れ様です。光さん。」
スタッフが片付けに入っても沢山の人に囲まれて挨拶を交わしている蓮をただ眺めていたキョーコに光から声がかかった。
打ち上げの会場に一緒に行こうと誘われて、特に何も考えず付いて行った。
盛り上がる宴会場で、沢山の大御所やスタッフに囲まれる蓮と深澤を見て、胸が苦しくなった。
何度も出てしまう溜息に、キョーコは他の人に聞かれていないか慌ててしまう。
本当はこの距離こそが正解なのかもしれない。
ーーー馬鹿ね…キョーコ。敦賀さんにとって私は沢山いる後輩の内のただ一人に過ぎないのに…。
少し話しかけてくれるからって何か勘違いしてるんじゃない?と自分に自嘲すら漏れた。
蓮の事ばかり考えてると、何時の間にか二次会にも参加する事が決まっていた。
帰るとも言い出せず光に掴まれた腕にこんな事しなくても帰らないのに…と苦笑を漏らす。
俳優としてのレベルの違う蓮との距離を見せ付けられた気がしたキョーコは、蓮とはここでお別れだと思っていた。
ーーーせめて最後に挨拶だけでもして行きたいな。
少しでも少しでも会話を交わしたいと思ってしまう浅ましい自分を後輩だからという言い訳で慌てて染める。
ーーー先輩に挨拶するのは当然だもの!!
考え込んでいたキョーコは突然側で聞こえた聞き覚えのある声に弾かれた様に現実に引き戻された。
「君たちはどこに行くの?」
ーーー敦賀さんだ!!
声が聞けただけで嬉しくなったキョーコがにっこりと微笑んで答える。
「カラオケですよ?」
「俺も一緒にいいかな?」
ーーー敦賀さんも一緒に行けるの?!
嬉しくなったキョーコが答えようと口を開く。
「ぜ…」
「「「「是非!!!!」」」」
しかし、蓮の言葉に反応したのはキョーコだけではない。
キョーコに言ったわけではないのだろう。その場にいた皆に投げ掛けられた言葉には参加する予定だった女優たちがキョーコの返事を遮って代わりに答えて蓮を取り囲む。
その手際の良さに呆気に取られながらも見つめていると、光から声がかかった。
「京子ちゃん?」
「ハッ!!な、何でしょうか?光さん。」
「いや…楽しみだね?カラオケ。」
「はいっ!!」
ここでお別れだと思っていた蓮と一緒に行く事が出来る。
その事が嬉しくて自然と笑顔が零れた。
「ちょっとー!蓮が行くなら私たちも行くー!!」
蓮が参加をすることで一気に増えたメンバー達。
それだけでも蓮の人気の高さが伺えた。
目の前では蓮と深澤がいちゃいちゃしており、キョーコは内心面白くなかった。
早く帰りたい様な、帰りたくない様なそんな気分だ。
帰ったらきっと今のこの気分は楽になっても、後で蓮と深澤がどうなったのか気になって気になって仕方がなくなるだろう。
時折光からの言葉に答えながら、頭は蓮の事ばかり考えており、そんな自分に『重傷だわ。』と、周りに気付かれないようにそっと溜息をつくのだった。
溜息をつく事になるとわかっていても、その目はやっぱり蓮を映したくなるのか、自然と目が行く。
ふと見上げた先で蓮の視線が重なって、キョーコの心臓がドキリと大きく跳ねた。
重なった視線に一瞬時が止まった。
ーーー好きです。貴方が…好き…。
きっと一生伝えることの出来ないはずのその想いをただ視線に乗せる。
しかし、その蓮の横には深澤がいるのを見て、それ以上見つめ続ける事は出来なかった。
無理矢理逸らした視線を下に落とす。意識を無理矢理他へむけた。
半数ぐらいの人が気付いたら帰っていて、何時の間にか残ったメンバーでオールをすることになっていた。
時計の針が3時を指す頃には元気だった人たちが一人二人と夢の中へ落ちて行く。
蓮の隣に座る女性達が蓮の太ももに手を置き、蓮の肩にもたれかかる様にして眠るのを見て、キョーコはムカムカと込み上げる想いと戦ってた。
すると、視界の端でコクッコクッと動く頭を見つけて声を掛けた。
「光さん?眠いんですか?」
「ん?…らいじょうぶらよ?」
半分夢うつつで呂律の回らない言葉を返した光が段々とキョーコの方へと傾いてきた。
「ひ、光さん?!」
とうとう眠りについてしまった光の頭がキョーコの肩に乗ったので、キョーコは慌てた。
蓮の前でこんな姿を見られたくないというのが本音だった。
「あ、あの、お休みになられるなら横になられた方が…」
言いながら、体を引き少しだけ距離を取ろうとするとそのまま光が膝の上に倒れこんできた。
「きゃっ!!ちょ、ちょっと光さん?!」
スリスリっと太ももに頬ずりされて真っ赤になったキョーコは、どうしていいかわからずに狼狽えるしかなかった。
蓮とキョーコ以外の殆どが眠りについており、辺りはシンと夜の静けさが訪れていた。
その時突然蓮が立ち上がる気配を感じて、キョーコはビクリと肩を揺らし、頬を染め潤んだ瞳で蓮を見上げた。
狭い座席を人の足を踏まぬ様に気をつけているのか、蓮がそろそろとこちらに向かってくる。
「つ、るがさん…。お疲れ…様です。」
「お疲れ…。」
言えなかった言葉を漸く口にすると、冷たい蓮の声が返ってきた。
しかもその目はキョーコを映していない。
「な、何か…怒ってます?わ、わたしくめは何か粗相を致しましたでしょうか?!」
「粗相…ね。これを粗相というのなら粗相なのかな…。知らなかったよ。最上さんは誰にでもその膝を貸し出すんだ?」
「…へ?!」
一瞬言われた言葉の意味が理解出来なかったキョーコだが、光の頭が膝の上にあることと、前に蓮に膝枕をしたことを思い出し、みるみる内に顔を赤くして抗議の声を上げた。
「こ、これは…光さんが勝手に…!!そ、それに…敦賀さんだって…っ!!」
「…?俺が…何?」
蓮に問われ一瞬言葉に詰まったが、キョーコは涙を貯めた目でキッと蓮を睨みつけた。
「深澤さん達に肩を貸してたじゃないですか!!…沢山の女の子に囲まれてさぞ楽しかったでしょうね!!」
最後の方は怒った様にプイッと顔を背けてしまった。
ーーーなにそれ…馬鹿じゃないの?
これじゃあ、自分が蓮を思っていることがバレバレだと思い、慌てて言い訳を探した。
「え…だってそれは…深澤さん達が勝手に…」
「私だって、望んでこうなったわけじゃ…」
ーーありません。といおうとした言葉は蓮の次の言葉が重なったことで言えなくなった。
「最上さん。…それって、俺が都合良く解釈したら、ヤキモチ妬いてくれたのかな?って思ったんだけど…違う?」
そう聞かれたキョーコは一瞬怪訝そうな顔をした後、ハッと自分の口許を手で抑えて、一気に耳まで真っ赤に染めた。
「ち、違いますっ!!そうじゃなくって!!わ、忘れてくださいっ!!今のは、違うんです!!」
キョーコが言うと、隣で突然ドサリという音を立てて蓮がソファの背に凭れていた。
片手で顔を覆って、ふぅーーーっと大きく息を吐いている姿を不思議に思って見つめる。
「あぁ…参った…」
「敦賀さん…?」
呼び掛けられた蓮は、片手で顔を覆った小指と薬指の間から、キョーコをジッと見つめた。
「な、なん…でしょうか?」
少しだけ夜の帝王の気配を感じて知らずに背筋を伸ばした。
この顔は苦手だ…何かを期待をしてしまう自分がいるから…。
「最上さん…その反応は、反則だよ。期待してしまう。そんな慌てた反応したら肯定してるようなもんだよ?」
「へ?!そ、それは…」
ーーーその反応ってどんな反応?!反則とか期待ってどういうこと?!だって本当のことですなんて言えないし…どう返事したらいいのぉ!!
蓮はまた顔を両手で覆って今度は膝に肘をついて、前傾の姿勢になると、両手で髪を書き上げたので、腕で顔が見えなくなってしまった。
「もし…君が妬いてくれたのなら…どうしよう…本気で嬉しい…。」
「へ?!」
蓮がぽつりと零した言葉にキョーコは目を見開く。
「つ…るが…さん?」
もう一度蓮は深く深く息を吐き出すと、自身を落ち着けるように大きく息を吸い込んで、蓮は真剣な顔でキョーコを見つめた。
キョーコも困惑した顔のまま、蓮を見つめる。
暫くの沈黙の後、漸く蓮が口を開いた。
「君が…どうしようもなく好きだ…。」
キョーコの目がこれでもかと言うほど見開いた。
「う…そ…」
「嘘じゃないよ。ずっとずっと好きだ。いや、好きなんて言葉じゃ足りない。愛してるんだ…ただ君だけを。」
ーーー嘘!!うそうそうそよ!!絶対からかってるんだわっ!!
「だって…だって私なんて、胸ないし、色気も何も…」
「最上さん、そんなことは関係ないんだ。俺は君といると幸せな気分になるし、君の笑顔をみると、辛い時でも頑張れる気がするんだ。君のそばに男がいるだけで嫉妬するし、君の笑顔を俺だけに向けて欲しいと望んでしまう。君の料理じゃなきゃ美味しく感じないし、君の温もりを感じて眠りたい。俺の心は最近じゃ君のことでいっぱいなんだ。何かを見つけるたびに、君を思い出す。もう…限界なんだ…。君のことが好き過ぎてどうしようもない…。だから…答えて…。」
「敦、賀…さん」
ーーー本当に…?本当、なの?
「最上キョーコさん、俺が君を好きだと自覚したのはダークムーンの演技で行き詰まった時だ。でも、社さんはそれ以前から俺の心が最上さんに向いてることに、気付いてた。ずっと『お前、キョーコちゃんが好きだろう?』ってからかわれてたんだ。大切な人は作らないって自分で決めてたから気付かなかった。この想いはもう、気付いた時には止められないくらい大きくなってたんだよ。」
「う…そ…」
ーーーあの時のって…
「最上さん、信じて…俺は君が好きなんだ…。」
ーーー私のこと…だったの?!
じっと、蓮とキョーコはしばらくの間言葉もなく見つめあった。
不安気に揺れていたキョーコの目から涙が零れる。
「本当…なんですか?私、私、信じていいんですか?もう、馬鹿になりたくないんです。想いを伝えて返って来たことがないから…怖いの…怖いんです。」
「うん。うん。わかるよ。でも皆そうなんだ。俺も怖いんだよ。」
キョーコの素直な気持ちを口にすると、蓮の優しい声と温もりがキョーコを包み込んだ。
「敦賀さんも…ですか?」
「うん。俺も…。一緒だね?」
恐る恐る見上げた先に、蓮の嬉しそうな笑顔があり、キョーコにも自然と笑顔が映った。
「はい。嬉しい…です。」
恥ずかしくて顔を蓮の胸に埋めそう答えたキョーコの頭に何か柔らかいものが当たった。
ドキドキドキドキと心臓が早鐘を打ち始める。
そっと添えられた顎を上に向けられ、蓮の視線がキョーコを射止める。
「君から…まだ答え貰ってないんだけど?」
嘘じゃないという確かな証拠が欲しくて、キョーコは考える前に言葉を返していた。
「……その前に、証明して下さい。」
「証明?」
「私のこと…好きだってことが嘘じゃないって…」
どうやって証明してもらえばいいかなんてわからない。方法を聞かれてもわからないが、蓮なら証明してくれるんじゃないか…そう思っていた。
「証明…ね。いいよ。じゃあ目を閉じて…」
請われるまま、キョーコは緊張しつつもキュッと目を閉じた。
するとフワッと柔らかい感触がキョーコの唇に触れた。
ーーー柔らかくって暖かい…マシュマロ?みたいな…。
そう考えていたキョーコだったが、不意に上唇と下唇をそれぞれ優しく吸い取って最後にもう一度唇を合わせられ、キョーコは蓮にキスされていることに漸く気づいた。
「…ふぁ…」
ちゅっと音を立てて離れた唇。
余韻に浸りながら目を開くと間近に蓮の顔があり、キョーコはカァッと顔を赤くして恥ずかしさを紛らわす様にパフっと蓮の胸に顔を埋めて抱き付いた。
それを蓮が破顔して抱きしめると、キョーコは漸く告白の返事を返した。
「私もっ、わたしも敦賀さんが好きですっ!!どうしようもないくらい大好きっ!!」
「最上さんっ…」
キスをされて素直になった心で言葉を告げる。
抱きしめ返してくれる蓮の腕の力強さに安心して身を任せた。
「好きだよ。好きだっ。キョーコ…キョーコ…。愛してる。」
苦しいくらいに抱き締められて、頭に何度もキスを送られた。
名前を呼ばれたことが嬉しくて、優しい蓮の言葉がキスが胸の中にじわりじわりと暖かい気持ちを生み出す。
「敦賀さん…敦賀さん…」
今の幸せを確かめるように名前を呼ぶキョーコの顎を持ち上げる。
「君のファーストキスを俺に頂戴?」
そういった蓮にキョーコは恥ずかし気に目を伏せて嬉しそうに頷くとそっと目を閉じた。
キスをされることが嬉しくて、もっともっとキスして欲しくて、キョーコはおずおずと蓮の首に抱き付いた。
夢中で貪り合う感覚に二人で溶け合っていると、太ももにある重みがとても邪魔に感じた。
もっと蓮に近付きたくてもっともっと抱きしめられたくて、足が自然と動く。
すると足から重みが消え、ふっと軽くなったので、キョーコはますます蓮とのキスに夢中になった。
キョーコの太腿を撫でる蓮の手に熱さを感じる。
蓮がキョーコの身体を膝に載せてくれたことで、キョーコは臨んだ通りになったことに幸せな気持ちでいっぱいになった。
夢じゃないと思いたくて、幸せであることを伝えたくて、キスの合間に夢中で蓮の名前を呼ぶ。
優しいキス。噛み付かれる様なキス。呑み込まれる様なキス。甘やかすようなキス。
その全てが蓮から与えられるもので、キョーコも返したくて一生懸命応える。
長すぎるキスが終わる頃には、もう幸せ過ぎてどうなってもいいという気分になっていた。
ぽうっと蓮を見つめると顔中にキスの雨が降ってきて、愛しさがムクムクと膨れ上がる。
「帰ろうか?」
蓮の言葉に寂しく感じつつも、こくんと頷くだけで答えた。
社と話す蓮を見ながらジンジンと熱を持つ唇の感覚からぽうっと先程のキスの余韻に浸っていると、蓮が戻ってきた。
「じゃあ行こうか…キョーコ。」
蓮が手を延ばすと、キョーコもそれに手を合わせて立とうとしたのだが…。
「……あの、敦賀さん…立てません…」
腰が砕けたのか足に全く力が入らないキョーコは恥ずかしくて目を伏せた。
「じゃあ俺が運んであげるよ。」
言うが早いかそのまま蓮に抱き上げられ、キョーコは嬉しくてキュウっと蓮の首に抱きついた。
「それじゃあ、社さん、光さんも、俺たちはこれで…。おやすみなさい。あ、お金はここにおいて置きますから。」
蓮の言葉に漸くキョーコも光が起きていたことに気づいた。
ーーーキス…みられてないよね?!大丈夫よね?!そう思いながら慌てて声をかける。
「あ、ひ、光さんもお目覚めだったんですね!あの、こんな格好でご挨拶になってしまって…えっと…また…。さようなら。おやすみなさい。あ、社さんも…」
「うん。おやすみ~蓮、キョーコちゃん!蓮、嬉し過ぎるからって暴走するなよ!」
「わかってますよ。」
社の言葉に苦笑を漏らした蓮。
ーーー暴走…?って??
そう思って蓮を見つめると、神々しいまでの笑顔を返されまたキスがしたくなったが流石に光や社の前では恥ずかしく慌てて顔を伏せた。
「それじゃあ、さようなら。」
二人と別れて蓮とともにタクシーに乗り込む。
乗り込んだ先で蓮が告げた行き先が、キョーコの家ではなく蓮のマンションだったことに、キョーコは目を見開いた。
「もう一回…ね?」
そう言っておねだりした蓮にキョーコは、そっと嬉しそうに頬を染めてコクンと頷くと目を閉じた。
「お客さん、着きましたよ?お客さん!!」
どの位キスしていたのか、タクシーの運転手から声を掛けられて、キョーコは憤死しそうなほど真っ赤になってしまった。
そんなキョーコを抱え上げて、蓮は部屋を目指す。
「このまま寝室で…いい?」
蓮の言葉に意味を理解しないまま、コクンと頷いたキョーコは夢見心地で蓮を見つめた。
そっとベッドに降ろされると蓮の香りに包まれる。一緒に布団に潜り込む蓮の温もりに安心感を覚えて、そのままベッドで口付けられたときには、キョーコは幸せいっぱいの気持ちで急速な眠気を感じてすぅっと夢の世界に呑み込まれた。
「嘘…だろ?」
呟いた蓮の声を頭の隅に聞きながら、キョーコは天使の様な微笑みをその顔に浮かべ気持ち良さそうに寝息を立てていた。
翌朝…
「ん…。」
目覚めたキョーコは見慣れない部屋の様子に首をかしげた。
「ここは…」
身を起こそうとしたところで、自分の足が動かないことに気付いてそっと布団を捲ると、そこにはキョーコの足に抱き付いてすよすよと眠る蓮の姿があり、キョーコは驚きに目を見開いた。
その後、寝室にはキョーコの大絶叫が響いたのはお約束だろう。
END
☆気に入ったら拍手をお願いします。
*****
続きを請われたので少しだけ頑張ってみました♪
蓮がなぜ足に抱き付いてたのかは書かなくてもわかりますよね?*:ஐ(●˘͈ ᵕ˘͈)人(˘͈ᵕ ˘͈●)ஐ:*
タイトル「貴方の隣」にするか迷ったけど、「君の隣 2」にしてしまいました☆
まぁ一緒の方がセットとしてわかりやすいですからね♪
こんな感じからスタートの二人はほのぼのとした可愛らしい日々をすごしていきそうですね( *´艸`)
こちらもアメンバー様500人感謝作品でフリーにいたします♪
最後に少しオマケが付け加えられたくらいです~( ´ ▽ ` )ノ
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君の隣 2
「京子ちゃん!デュエットしようよ!!デュエット!!」
「あの、あまり私歌を知りませんので…」
「まぁまぁ、あ、これなんかどう?」
「あの…だから…」
「あーこれもいいな。京子ちゃんはどれがいい?」
「………。」
新しいドラマの話を頂いた時、キョーコは嬉しくてクルクル回りながら台本を抱き締めて戯れた。
ーーーまた敦賀さんと共演出来る!!
尊敬する先輩の演技を真近で見れること。そして何より食生活が心配な蓮の様子をみることが出来るし、必要とあればお弁当だって作っていける。
その事にルンルン気分になりながら撮影に臨んだのだが、実際は主演の女優が蓮にピッタリとくっ付いていて、近づく事が許されなかった。
唯一主演女優の深澤がいない間に食事のことを話題に出し話かける。
話かける口実はそれくらいしか思い浮かばなかった。
蓮と会話を楽しんでいると不意に他から声がかかった。
「あ!京子ちゃん!今日もよろしくね!」
ーーー残念。タイムリミット…だわ…。
同じ現場にいても話せる機会は少ない。
漸く話せても最近は良く以前マスコットキャラの坊の時にお世話になったブリッジロックのメンバーに懐かしいのか囲まれてしまうのだ。
「おはようございます。光さん。」
残念な気持ちを綺麗に隠して笑顔で答えた。
「カーーーーット!!お疲れ様!!」
「「「「お疲れ様でしたぁ!!」」」」
監督の声を合図に撮影が終了すると、みんなの目の前で主演の二人に花束がスタッフから贈られ、エキストラも含めその場にいた全員が拍手を送る。
並んで立つその二人の姿が酷くお似合いに見え、キョーコは拍手をしながらも表情は優れなかった。
嬉しそうに笑いながら頭を下げる深澤とそれより控え目に頭を下げる蓮の姿。
そっと深澤の手が蓮の腕に掛かる。
深澤が蓮に何かを囁きかけると、蓮は笑って答えていた。
しかし、その際にキョーコは見逃さなかった。蓮の腕にさり気なく押し付けられた胸。
それに気付いているのかいないのか、蓮は笑ってるのでその真意はわからない。
ーーー嫌だな。
キョーコの中でポツリポツリと浮かび上がる想い。
ーーーそんなに近付かないで欲しい…。
彼女でもないのに、気付いたらそんなことばかりを考えてる自分に、キョーコはハッと気付いて首を振る。
小さく息を吐いて、キョーコはそっと人差し指で服を引っ張り自分の胸を覗き込んだ。
他の人に比べるとほとんどないのと同じくらいの自分の胸に今度は大きなため息を零す。
「京子ちゃん、お疲れ。」
「お疲れ様です。光さん。」
スタッフが片付けに入っても沢山の人に囲まれて挨拶を交わしている蓮をただ眺めていたキョーコに光から声がかかった。
打ち上げの会場に一緒に行こうと誘われて、特に何も考えず付いて行った。
盛り上がる宴会場で、沢山の大御所やスタッフに囲まれる蓮と深澤を見て、胸が苦しくなった。
何度も出てしまう溜息に、キョーコは他の人に聞かれていないか慌ててしまう。
本当はこの距離こそが正解なのかもしれない。
ーーー馬鹿ね…キョーコ。敦賀さんにとって私は沢山いる後輩の内のただ一人に過ぎないのに…。
少し話しかけてくれるからって何か勘違いしてるんじゃない?と自分に自嘲すら漏れた。
蓮の事ばかり考えてると、何時の間にか二次会にも参加する事が決まっていた。
帰るとも言い出せず光に掴まれた腕にこんな事しなくても帰らないのに…と苦笑を漏らす。
俳優としてのレベルの違う蓮との距離を見せ付けられた気がしたキョーコは、蓮とはここでお別れだと思っていた。
ーーーせめて最後に挨拶だけでもして行きたいな。
少しでも少しでも会話を交わしたいと思ってしまう浅ましい自分を後輩だからという言い訳で慌てて染める。
ーーー先輩に挨拶するのは当然だもの!!
考え込んでいたキョーコは突然側で聞こえた聞き覚えのある声に弾かれた様に現実に引き戻された。
「君たちはどこに行くの?」
ーーー敦賀さんだ!!
声が聞けただけで嬉しくなったキョーコがにっこりと微笑んで答える。
「カラオケですよ?」
「俺も一緒にいいかな?」
ーーー敦賀さんも一緒に行けるの?!
嬉しくなったキョーコが答えようと口を開く。
「ぜ…」
「「「「是非!!!!」」」」
しかし、蓮の言葉に反応したのはキョーコだけではない。
キョーコに言ったわけではないのだろう。その場にいた皆に投げ掛けられた言葉には参加する予定だった女優たちがキョーコの返事を遮って代わりに答えて蓮を取り囲む。
その手際の良さに呆気に取られながらも見つめていると、光から声がかかった。
「京子ちゃん?」
「ハッ!!な、何でしょうか?光さん。」
「いや…楽しみだね?カラオケ。」
「はいっ!!」
ここでお別れだと思っていた蓮と一緒に行く事が出来る。
その事が嬉しくて自然と笑顔が零れた。
「ちょっとー!蓮が行くなら私たちも行くー!!」
蓮が参加をすることで一気に増えたメンバー達。
それだけでも蓮の人気の高さが伺えた。
目の前では蓮と深澤がいちゃいちゃしており、キョーコは内心面白くなかった。
早く帰りたい様な、帰りたくない様なそんな気分だ。
帰ったらきっと今のこの気分は楽になっても、後で蓮と深澤がどうなったのか気になって気になって仕方がなくなるだろう。
時折光からの言葉に答えながら、頭は蓮の事ばかり考えており、そんな自分に『重傷だわ。』と、周りに気付かれないようにそっと溜息をつくのだった。
溜息をつく事になるとわかっていても、その目はやっぱり蓮を映したくなるのか、自然と目が行く。
ふと見上げた先で蓮の視線が重なって、キョーコの心臓がドキリと大きく跳ねた。
重なった視線に一瞬時が止まった。
ーーー好きです。貴方が…好き…。
きっと一生伝えることの出来ないはずのその想いをただ視線に乗せる。
しかし、その蓮の横には深澤がいるのを見て、それ以上見つめ続ける事は出来なかった。
無理矢理逸らした視線を下に落とす。意識を無理矢理他へむけた。
半数ぐらいの人が気付いたら帰っていて、何時の間にか残ったメンバーでオールをすることになっていた。
時計の針が3時を指す頃には元気だった人たちが一人二人と夢の中へ落ちて行く。
蓮の隣に座る女性達が蓮の太ももに手を置き、蓮の肩にもたれかかる様にして眠るのを見て、キョーコはムカムカと込み上げる想いと戦ってた。
すると、視界の端でコクッコクッと動く頭を見つけて声を掛けた。
「光さん?眠いんですか?」
「ん?…らいじょうぶらよ?」
半分夢うつつで呂律の回らない言葉を返した光が段々とキョーコの方へと傾いてきた。
「ひ、光さん?!」
とうとう眠りについてしまった光の頭がキョーコの肩に乗ったので、キョーコは慌てた。
蓮の前でこんな姿を見られたくないというのが本音だった。
「あ、あの、お休みになられるなら横になられた方が…」
言いながら、体を引き少しだけ距離を取ろうとするとそのまま光が膝の上に倒れこんできた。
「きゃっ!!ちょ、ちょっと光さん?!」
スリスリっと太ももに頬ずりされて真っ赤になったキョーコは、どうしていいかわからずに狼狽えるしかなかった。
蓮とキョーコ以外の殆どが眠りについており、辺りはシンと夜の静けさが訪れていた。
その時突然蓮が立ち上がる気配を感じて、キョーコはビクリと肩を揺らし、頬を染め潤んだ瞳で蓮を見上げた。
狭い座席を人の足を踏まぬ様に気をつけているのか、蓮がそろそろとこちらに向かってくる。
「つ、るがさん…。お疲れ…様です。」
「お疲れ…。」
言えなかった言葉を漸く口にすると、冷たい蓮の声が返ってきた。
しかもその目はキョーコを映していない。
「な、何か…怒ってます?わ、わたしくめは何か粗相を致しましたでしょうか?!」
「粗相…ね。これを粗相というのなら粗相なのかな…。知らなかったよ。最上さんは誰にでもその膝を貸し出すんだ?」
「…へ?!」
一瞬言われた言葉の意味が理解出来なかったキョーコだが、光の頭が膝の上にあることと、前に蓮に膝枕をしたことを思い出し、みるみる内に顔を赤くして抗議の声を上げた。
「こ、これは…光さんが勝手に…!!そ、それに…敦賀さんだって…っ!!」
「…?俺が…何?」
蓮に問われ一瞬言葉に詰まったが、キョーコは涙を貯めた目でキッと蓮を睨みつけた。
「深澤さん達に肩を貸してたじゃないですか!!…沢山の女の子に囲まれてさぞ楽しかったでしょうね!!」
最後の方は怒った様にプイッと顔を背けてしまった。
ーーーなにそれ…馬鹿じゃないの?
これじゃあ、自分が蓮を思っていることがバレバレだと思い、慌てて言い訳を探した。
「え…だってそれは…深澤さん達が勝手に…」
「私だって、望んでこうなったわけじゃ…」
ーーありません。といおうとした言葉は蓮の次の言葉が重なったことで言えなくなった。
「最上さん。…それって、俺が都合良く解釈したら、ヤキモチ妬いてくれたのかな?って思ったんだけど…違う?」
そう聞かれたキョーコは一瞬怪訝そうな顔をした後、ハッと自分の口許を手で抑えて、一気に耳まで真っ赤に染めた。
「ち、違いますっ!!そうじゃなくって!!わ、忘れてくださいっ!!今のは、違うんです!!」
キョーコが言うと、隣で突然ドサリという音を立てて蓮がソファの背に凭れていた。
片手で顔を覆って、ふぅーーーっと大きく息を吐いている姿を不思議に思って見つめる。
「あぁ…参った…」
「敦賀さん…?」
呼び掛けられた蓮は、片手で顔を覆った小指と薬指の間から、キョーコをジッと見つめた。
「な、なん…でしょうか?」
少しだけ夜の帝王の気配を感じて知らずに背筋を伸ばした。
この顔は苦手だ…何かを期待をしてしまう自分がいるから…。
「最上さん…その反応は、反則だよ。期待してしまう。そんな慌てた反応したら肯定してるようなもんだよ?」
「へ?!そ、それは…」
ーーーその反応ってどんな反応?!反則とか期待ってどういうこと?!だって本当のことですなんて言えないし…どう返事したらいいのぉ!!
蓮はまた顔を両手で覆って今度は膝に肘をついて、前傾の姿勢になると、両手で髪を書き上げたので、腕で顔が見えなくなってしまった。
「もし…君が妬いてくれたのなら…どうしよう…本気で嬉しい…。」
「へ?!」
蓮がぽつりと零した言葉にキョーコは目を見開く。
「つ…るが…さん?」
もう一度蓮は深く深く息を吐き出すと、自身を落ち着けるように大きく息を吸い込んで、蓮は真剣な顔でキョーコを見つめた。
キョーコも困惑した顔のまま、蓮を見つめる。
暫くの沈黙の後、漸く蓮が口を開いた。
「君が…どうしようもなく好きだ…。」
キョーコの目がこれでもかと言うほど見開いた。
「う…そ…」
「嘘じゃないよ。ずっとずっと好きだ。いや、好きなんて言葉じゃ足りない。愛してるんだ…ただ君だけを。」
ーーー嘘!!うそうそうそよ!!絶対からかってるんだわっ!!
「だって…だって私なんて、胸ないし、色気も何も…」
「最上さん、そんなことは関係ないんだ。俺は君といると幸せな気分になるし、君の笑顔をみると、辛い時でも頑張れる気がするんだ。君のそばに男がいるだけで嫉妬するし、君の笑顔を俺だけに向けて欲しいと望んでしまう。君の料理じゃなきゃ美味しく感じないし、君の温もりを感じて眠りたい。俺の心は最近じゃ君のことでいっぱいなんだ。何かを見つけるたびに、君を思い出す。もう…限界なんだ…。君のことが好き過ぎてどうしようもない…。だから…答えて…。」
「敦、賀…さん」
ーーー本当に…?本当、なの?
「最上キョーコさん、俺が君を好きだと自覚したのはダークムーンの演技で行き詰まった時だ。でも、社さんはそれ以前から俺の心が最上さんに向いてることに、気付いてた。ずっと『お前、キョーコちゃんが好きだろう?』ってからかわれてたんだ。大切な人は作らないって自分で決めてたから気付かなかった。この想いはもう、気付いた時には止められないくらい大きくなってたんだよ。」
「う…そ…」
ーーーあの時のって…
「最上さん、信じて…俺は君が好きなんだ…。」
ーーー私のこと…だったの?!
じっと、蓮とキョーコはしばらくの間言葉もなく見つめあった。
不安気に揺れていたキョーコの目から涙が零れる。
「本当…なんですか?私、私、信じていいんですか?もう、馬鹿になりたくないんです。想いを伝えて返って来たことがないから…怖いの…怖いんです。」
「うん。うん。わかるよ。でも皆そうなんだ。俺も怖いんだよ。」
キョーコの素直な気持ちを口にすると、蓮の優しい声と温もりがキョーコを包み込んだ。
「敦賀さんも…ですか?」
「うん。俺も…。一緒だね?」
恐る恐る見上げた先に、蓮の嬉しそうな笑顔があり、キョーコにも自然と笑顔が映った。
「はい。嬉しい…です。」
恥ずかしくて顔を蓮の胸に埋めそう答えたキョーコの頭に何か柔らかいものが当たった。
ドキドキドキドキと心臓が早鐘を打ち始める。
そっと添えられた顎を上に向けられ、蓮の視線がキョーコを射止める。
「君から…まだ答え貰ってないんだけど?」
嘘じゃないという確かな証拠が欲しくて、キョーコは考える前に言葉を返していた。
「……その前に、証明して下さい。」
「証明?」
「私のこと…好きだってことが嘘じゃないって…」
どうやって証明してもらえばいいかなんてわからない。方法を聞かれてもわからないが、蓮なら証明してくれるんじゃないか…そう思っていた。
「証明…ね。いいよ。じゃあ目を閉じて…」
請われるまま、キョーコは緊張しつつもキュッと目を閉じた。
するとフワッと柔らかい感触がキョーコの唇に触れた。
ーーー柔らかくって暖かい…マシュマロ?みたいな…。
そう考えていたキョーコだったが、不意に上唇と下唇をそれぞれ優しく吸い取って最後にもう一度唇を合わせられ、キョーコは蓮にキスされていることに漸く気づいた。
「…ふぁ…」
ちゅっと音を立てて離れた唇。
余韻に浸りながら目を開くと間近に蓮の顔があり、キョーコはカァッと顔を赤くして恥ずかしさを紛らわす様にパフっと蓮の胸に顔を埋めて抱き付いた。
それを蓮が破顔して抱きしめると、キョーコは漸く告白の返事を返した。
「私もっ、わたしも敦賀さんが好きですっ!!どうしようもないくらい大好きっ!!」
「最上さんっ…」
キスをされて素直になった心で言葉を告げる。
抱きしめ返してくれる蓮の腕の力強さに安心して身を任せた。
「好きだよ。好きだっ。キョーコ…キョーコ…。愛してる。」
苦しいくらいに抱き締められて、頭に何度もキスを送られた。
名前を呼ばれたことが嬉しくて、優しい蓮の言葉がキスが胸の中にじわりじわりと暖かい気持ちを生み出す。
「敦賀さん…敦賀さん…」
今の幸せを確かめるように名前を呼ぶキョーコの顎を持ち上げる。
「君のファーストキスを俺に頂戴?」
そういった蓮にキョーコは恥ずかし気に目を伏せて嬉しそうに頷くとそっと目を閉じた。
キスをされることが嬉しくて、もっともっとキスして欲しくて、キョーコはおずおずと蓮の首に抱き付いた。
夢中で貪り合う感覚に二人で溶け合っていると、太ももにある重みがとても邪魔に感じた。
もっと蓮に近付きたくてもっともっと抱きしめられたくて、足が自然と動く。
すると足から重みが消え、ふっと軽くなったので、キョーコはますます蓮とのキスに夢中になった。
キョーコの太腿を撫でる蓮の手に熱さを感じる。
蓮がキョーコの身体を膝に載せてくれたことで、キョーコは臨んだ通りになったことに幸せな気持ちでいっぱいになった。
夢じゃないと思いたくて、幸せであることを伝えたくて、キスの合間に夢中で蓮の名前を呼ぶ。
優しいキス。噛み付かれる様なキス。呑み込まれる様なキス。甘やかすようなキス。
その全てが蓮から与えられるもので、キョーコも返したくて一生懸命応える。
長すぎるキスが終わる頃には、もう幸せ過ぎてどうなってもいいという気分になっていた。
ぽうっと蓮を見つめると顔中にキスの雨が降ってきて、愛しさがムクムクと膨れ上がる。
「帰ろうか?」
蓮の言葉に寂しく感じつつも、こくんと頷くだけで答えた。
社と話す蓮を見ながらジンジンと熱を持つ唇の感覚からぽうっと先程のキスの余韻に浸っていると、蓮が戻ってきた。
「じゃあ行こうか…キョーコ。」
蓮が手を延ばすと、キョーコもそれに手を合わせて立とうとしたのだが…。
「……あの、敦賀さん…立てません…」
腰が砕けたのか足に全く力が入らないキョーコは恥ずかしくて目を伏せた。
「じゃあ俺が運んであげるよ。」
言うが早いかそのまま蓮に抱き上げられ、キョーコは嬉しくてキュウっと蓮の首に抱きついた。
「それじゃあ、社さん、光さんも、俺たちはこれで…。おやすみなさい。あ、お金はここにおいて置きますから。」
蓮の言葉に漸くキョーコも光が起きていたことに気づいた。
ーーーキス…みられてないよね?!大丈夫よね?!そう思いながら慌てて声をかける。
「あ、ひ、光さんもお目覚めだったんですね!あの、こんな格好でご挨拶になってしまって…えっと…また…。さようなら。おやすみなさい。あ、社さんも…」
「うん。おやすみ~蓮、キョーコちゃん!蓮、嬉し過ぎるからって暴走するなよ!」
「わかってますよ。」
社の言葉に苦笑を漏らした蓮。
ーーー暴走…?って??
そう思って蓮を見つめると、神々しいまでの笑顔を返されまたキスがしたくなったが流石に光や社の前では恥ずかしく慌てて顔を伏せた。
「それじゃあ、さようなら。」
二人と別れて蓮とともにタクシーに乗り込む。
乗り込んだ先で蓮が告げた行き先が、キョーコの家ではなく蓮のマンションだったことに、キョーコは目を見開いた。
「もう一回…ね?」
そう言っておねだりした蓮にキョーコは、そっと嬉しそうに頬を染めてコクンと頷くと目を閉じた。
「お客さん、着きましたよ?お客さん!!」
どの位キスしていたのか、タクシーの運転手から声を掛けられて、キョーコは憤死しそうなほど真っ赤になってしまった。
そんなキョーコを抱え上げて、蓮は部屋を目指す。
「このまま寝室で…いい?」
蓮の言葉に意味を理解しないまま、コクンと頷いたキョーコは夢見心地で蓮を見つめた。
そっとベッドに降ろされると蓮の香りに包まれる。一緒に布団に潜り込む蓮の温もりに安心感を覚えて、そのままベッドで口付けられたときには、キョーコは幸せいっぱいの気持ちで急速な眠気を感じてすぅっと夢の世界に呑み込まれた。
「嘘…だろ?」
呟いた蓮の声を頭の隅に聞きながら、キョーコは天使の様な微笑みをその顔に浮かべ気持ち良さそうに寝息を立てていた。
翌朝…
「ん…。」
目覚めたキョーコは見慣れない部屋の様子に首をかしげた。
「ここは…」
身を起こそうとしたところで、自分の足が動かないことに気付いてそっと布団を捲ると、そこにはキョーコの足に抱き付いてすよすよと眠る蓮の姿があり、キョーコは驚きに目を見開いた。
その後、寝室にはキョーコの大絶叫が響いたのはお約束だろう。
END
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続きを請われたので少しだけ頑張ってみました♪
蓮がなぜ足に抱き付いてたのかは書かなくてもわかりますよね?*:ஐ(●˘͈ ᵕ˘͈)人(˘͈ᵕ ˘͈●)ஐ:*
タイトル「貴方の隣」にするか迷ったけど、「君の隣 2」にしてしまいました☆
まぁ一緒の方がセットとしてわかりやすいですからね♪
こんな感じからスタートの二人はほのぼのとした可愛らしい日々をすごしていきそうですね( *´艸`)
こちらもアメンバー様500人感謝作品でフリーにいたします♪