あれ?今回は、無糖、かも…?甘くしたつもりだったけどなんか物足りない??


*****


My HOME-3-


ーーコテン

「っ?!っつっ…!!」

キョーコは突然右肩に掛かった重みに驚いた。
思わず叫び出しそうになってしまった口を慌てて塞ぐ。

重みの方へ目を向ければ、そこには神の寵児かと思うほどの美貌を称えた男がスヤスヤと気持ち良さそうに眠っていたのだ。

食事も終わり、蓮が社に借りてきてもらったという映画のDVDを一緒に見ている最中のことだった。

後半に差し掛かったところでどうやら蓮は眠ってしまったらしい。
DVDの映画の内容は、キョーコが好きそうな妖精のお姫様が出てくるお話だったのだ。
キョーコは画面に噛り付くように魅入っていた為、蓮がウトウトしていたことにも気付かなかった。

ーードクンドクン

キョーコの心臓がうるさい程主張を始める。
心臓の音を聞いて蓮が起きてしまうのではないかと思い何とか宥めようとするものの、上手くいかない。

「ん…」

もぞっと首を動かし寝心地のいい場所を無意識に探す蓮の髪が頬をくすぐりカァッと顔が赤く染まった。

映画どころではなくなってしまったキョーコは、ドギマギしつつ、耐えられず声を掛けた。

「あ、あのっ…つ、敦賀さん…?」

それでもやはり、起こしたら悪いという思いも邪魔をしてこっそりとした囁きになってしまう。

「ん…も、み…さん…」

名前を呼ばれてドキリとまた鼓動が跳ねる。
自分の夢を見てるのだろうかと思うだけで、益々顔に血が集まる。

「だから…すき…だって、言ってる…」

「へ?!」

キョーコは蓮の口から急に飛び出したあり得ない単語に素っ頓狂な声をあげてしまった。
パチンとそんな口を両手で塞いで、全身が沸騰したように体温が上がるのを感じながら慌てて今聞いた言葉を訂正した。

ーーーいいいいいい今のは!!好きって言ったわけじゃないわっ!!!!!そそそそそそそうよ!すき…やきっ!!すき焼きの夢を見てるのよ!!今夜はすき焼きだったもの!!きっとそれで…それで…!!

そう思いながらも好きという蓮の声が頭の中をグルグル回ってキョーコはプチパニックに陥った。

ーーー違う違う違うわ!!違うわよ!おバカキョーコ!!敦賀さんともあろうお方が私みたいな家政婦紛いの庶民に好きだなんてそんな大それたこと言うはずないじゃないのよぉ~!!

その間にも脳内は勝手に蓮の色々な表情を作り出しては好きだと口にする妄想が繰り広げられる。

にこやかに、真剣に、さみしそうに、怒ったように、爽やかに、甘やかに、拗ねたように…
神々スマイルでーーー


ーーーだーかーらー!!私に向かって愛してるなんて敦賀さんが言うはずないんだからぁぁぁ!!!!

行き過ぎた妄想はどうやらキョーコの中でヒートアップしていたようだ。
自分の脳内が作り出してしまった妄想に勝手に一人、必死でアップアップしながら目を回していると、蓮の頭が更に下がり、膝を枕にしてしまった。

ーーー~~~っ?!?!

何処まで体温は上昇することが出来るのだろうかとチャレンジしていると言っても過言ではないと思える程、またもや体温が急激に上がる。

「ん…最上さ…い…してる…」

むにゃむにゃと意味不明な寝言を言いながら、蓮の左手がスルリとキョーコの足の下に入り込み、抱き締めるかのように右手も太ももの上を撫でるように滑った。

ーーーっにゃぁぁぁぁ~!!!!

身体がびくりと跳ねるも、起こすわけにはいかないと必死で口を両手で塞いで叫び声を押し込める。
ショートパンツを履いていた為、太腿は剥き出しになっており、そこに蓮の顔と手が添えられたので、大混乱に陥ってしまったのだ。


しかし、暫くして混乱が収まってくると今度は、自分の足を抱き枕にしてスヤスヤと気持ち良さそうに眠る蓮に胸がキュンキュンとなるのも事実で、そうこうしている間に、いつの間にか映画は終わってしまっていた。

エンディングロールが流れ始めて、漸くその事に気付いたキョーコは後半全く見れなかったとがっくりしながら、蓮に向かって恨み言を吐き出す。

「敦賀さんったら…もうっ、人の気も知らないで…」

赤く染まった頬のまま、今の恋人の様な時間がくすぐったくてクスリと笑う。

「このまま、時間が止まってくれたらな…」

そっと、蓮の触り心地の良い髪に触れる。

ーーーそしたら、ずっと一緒にいられるのに…。

「ぅ…ん。」

蓮が返事を返すようにむにゃむにゃと言うので、キョーコは一瞬驚いて目を見張ったが、すぐにクスクスと笑う。

「ふふ。敦賀さんもそう思ってくれるんですか?」

「うぅ…ん…。」

モゾモゾと動く蓮はどうやら頭の位置を探っているようだ。起きないようにと気をつけながらも手を離し、つんつんと軽く頬っぺたをつついてみた。

「うぅーん?」

「ふふ。ふふふ。可愛い…」

自分とは違う感触が何だか不思議だと思いながら、頬を突かれて眉を顰める蓮にキョーコは笑った。
そうしてふと呟く。

「知ってますか?私は貴方の事が好きなんですよ?」

「ん…れも…き…」

キョーコはドキンと心臓を跳ねさせた後、寝言だと気付いてキューンと切ない気分になった。
面と向かって言う勇気があったらどんなにいいかと思ってしまう。

「もし、私が貴方に告白したとしても貴方は、今までと変わらず私と接してくれますか?」

「ん…」

肯定とも否定とも取れる蓮からの返答に寂しげに微笑んで、キョーコは今と言う時間を噛みしめるかのように、そっと蓮の髪を撫でながら目を閉じたのだった。


*****


「んん…」

蓮はギュッと一度目をつぶると、ぼんやりと目覚めた。

「あ…しまった…」

映画を見ている途中に寝てしまったことを思い出して、少し罰の悪さを感じる。どうやら映画は終わってしまっているようで、画面は黒くなっていた。

キョーコの喜ぶ顔が見たくて社にお願いして借りてきてもらったDVD。
案の定、映画を食い入るように見つめるキョーコは可愛かったが、話し掛ける隙もなくて、蓮はキョーコと一緒に見る振りをしながらキョーコの横顔を盗み見ていたのだが、いつの間に寝てしまったようだ。

テレビの斜め上にある掛け時計に目をやれば、深夜の2時を過ぎたところだった。
つまり映画が終わって一時間ほど経っているようだ。

そんなに寝ていたのかと自分自身に呆れながら、流石にキョーコも寝ただろうと残念に思って、起き上がろうとすれば、妙に気持ちのいいものを抱きしめていることに気付いた。
サワサワと撫でてみると、思いのほかサラサラでスベスベしていて心地よい弾力があり手離し難さを感じてしまう。
このままもう少し抱き締めて寝ていようかと考えて、軽く目を瞑りながら頭を預けて、こんな肌色のクッション持っていたかな?…と考えていたら、段々と頭がハッキリしてきた。
蓮はまさかとある可能性に思い当たり、恐る恐る顔を離してその全体像を見た。
それがキョーコの太ももだと言うことに漸く気付けた蓮は、思わず耳を真っ赤にしてしまう。
慌てて口元を手で覆おうとして、左手が太ももの下に入り込んでいることにも気づいてしまい、更に驚いた。

ーーーはっ!!もっ、最上さんは?!

軽蔑した顔で見られているんじゃないかとか、真っ赤な顔をして涙目で破廉恥です!!と言って暫く口を聞いてくれなくなるんじゃないかという想像が一瞬にして頭を駆け巡り、キョーコが今どんな顔して自分を見ているのかと言い訳を考えることを忘れるほど慌てて、顔をグルンと回しキョーコの方へ向けた。
すると、驚く程近くにキョーコの顔があり驚いた。

振り仰いだ蓮は、思わず目をまん丸に見開き暫し固まってしまった。目を閉じているキョーコを見て一瞬、自分にキスしようとしていたのかと錯覚してしまったのだ。
暫くしてキョーコもスヤスヤと気持ち良さそうに眠っていることに気付いた。
自分があともう少し伸び上がればキス出来るであろう距離だと気付いて流される前に慌てて離れた。

「はぁぁぁ~。無防備過ぎるだろう…。」

キョーコに背を向けてガックリとうな垂れる。

「ぅぅ~ん…」

蓮が急に離れたことで温もりを失って不満に思ったのだろう、キョーコが眉を顰めて唸り出したので、蓮はビックリして振り返った。
キョーコの下を向いていた頭がグルンと回り、今度は後ろを降り仰ぐように背もたれに頭を預けた。

「全く…人の気もしならないで…。」

蓮は思わず無表情で呟いた。
上を向いた時に僅かに空いた唇は誘っているようでセクシーだが、流石に心のままに行動するわけにはいかない。

一緒に生活を始めることになった今、理性を試される覚悟は出来ているはずだ。こんなことで信用を失って今後避けられると言うことだけは避けなければいけないのだ。

「全く君って子は…俺を試してるのか?」

「ん…」

もぞもぞと身体の向きを変えようとするキョーコが、不満そうにしているので、試しにそっと膝の上に抱き上げてみた。
するとキョーコは蓮の温もりを求める様に蓮の胸元に擦り寄り、胸元をキュッと小さく握り締めると、身体を丸め、安心した様にふにゃりと微笑んだ。
自身の腕の中に満足そうな寝顔で収まる可愛い天使に、蓮は思いっきり抱き締めたい衝動に駆られるがそれで起こしてしまったらいけないと思い、拳を力一杯ギュッと握りしめるだけに留める。


「はぁぁ~、可愛過ぎるだろう…。」

しかし、気持ちは耐えられず、蓮は無表情で天を仰いで思わずといったように本音をだだ漏れさせてしまった。

「ん…がさん…」

「うん?」

寝言で呼ばれ、思わず返事を返す。

「す……き……」

「え?」

ドクンと蓮の鼓動が一気に跳ね上がった。

ーーー今、好きって?!…イヤイヤイヤイヤ、あり得ないだろう?!彼女が俺のことを好きだなんて…!!第一、彼女はラブミー部員だぞ?!恋や愛を完全に否定してるんだ!!そんな都合のいい話…いやいや、待て!!違うっ!!違うから!!

脳内ではキョーコの様々な顔が浮かび上がり、その顔で好きと言われることを想像してしまう。

満面の笑顔で、恥ずかしそうに、照れながら、困った様に、ブラウスのボタンを外しながら、生まれたままの姿で迫りながらーーーー。

そのまま事に及びそうになる妄想が止まらず、身体の中心の熱が高まる。

反応し始めた己自身に気付いて、このままじゃ危険だ!!と思い至った蓮は、急ぎつつもそっとキョーコを抱き上げ、無心になるように努めて慎重に今はキョーコの部屋になっている元ゲストルームへと運んだ。

ふわりとベッドへキョーコを下ろすと、キョーコが蓮の胸元を握り締めていて離れられないことに気付いた。
グッと握られていてバランスを崩しそうになった。

「おっと…。」

慎重に外そうと試みるが、キョーコはうぅ~っと眉を顰める。

「良い子だから、手を離して?じゃないと…襲っちゃうよ?」

ナチュラルに本音を織り交ぜながら顔をキョーコへ近付けると、不満そうにしながらも、渋々キョーコが手を離したので、蓮は若干の淋しさを感じながらもほっと安堵して、キョーコの額にそっと口付けた。

ーーちゅっ。

僅かなリップ音を残して離れると、キョーコの顔が心持ち緩んだように見えて、蓮はくすりと笑って、起こさない様に布団を掛ける。

「おやすみ…」

そう呟いて、キョーコの頬を撫でると、今ならキスしても気付かれないかも…と思わずそんなことを考えて、思考がうまく働かないうちに引き寄せられるように顔を近づけようとしたのだが、キョーコは蓮に背を向けるようにころんと寝返りを打った。

そのことで漸く我に返った蓮は苦笑を漏らして、キョーコの頬を撫でていた手をグッと握り締めると、もう一度おやすみ。と呟いて、音を立てないようにキョーコの部屋のドアを閉めたのだった。


(続く…)


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うぅー!焦れったいっ!!(笑)