My HOME-11-
「や…だ…おいて…かない…で…お、かぁさ…。ショー…ちゃん…コォー…ン…。」
辛そうな顔でうなされてるキョーコの顔を覗き込み、蓮は布団を強く握りしめるキョーコの右手を優しく包み込んだ。
「大丈夫。俺がいるよ、最上さん。俺が誰よりも君のそばにいる。絶対に置いて行ったりしないから…安心して…。」
そうやって言い聞かせると、キョーコは安心したように手の力を弱め、ほわんと顔を嬉しそうに綻ばせた。
「つる…ぁ、さん…」
その安心し切った絶対的な信頼の顔に、蓮は固まり、ゆっくりとキョーコの顔に己の顔を寄せた。
「…んっ。」
もう少しで唇が重なりそうになった時、キョーコが不意に顔を逸らしたので、蓮はハッと我に返った。
「俺…今、何を…っ!!」
ーードクドクドクドク
気がついた時にはキョーコの顔が目と鼻の先にあり、心臓が飛び出そうなくらい驚いた。
キョーコが顔を逸らさなかったら恐らく唇を重ねてしまっていただろう。
どうもキョーコの身体を目にしてからというもの、自身の思考が暴走気味な気がしてならない。
キョーコに触れたい…欲しくて欲しくてたまらないという気持ちが格段とアップしているのだ。
風邪を引いて苦しんでいる彼女を目の前にしておきながら不埒な想いを抱いている自分自身に溜息しか出てこない。
「はぁー。しっかりしろ!俺!!」
ーーー最上さんが早く良くなることだけを考えろ!!
自分自身に必死に言い聞かせて、蓮は病人でも食べれるものを作ろうと、キッチンへ行くのだった。
「ん…」
ボーーー…。
キョーコが目を覚ましたときには部屋には誰の気配もなかった。
しかし、ベッドの肌触りや柔らかさは最近慣れ親しんだ場所のもので、キョーコは蓮に会ったのが夢じゃなかったんだとホッと安堵の息を吐いた。
右手を翳して、ぽうっと見つめる。
夢で追いかけても追いかけても誰も掴んでくれなかった手を暖かい手が包んでくれたように感じたのだ。
顔は見えなかったが、酷く安心出来るその温もりはあの人のものだと直感が伝えてくれた。
ーーー夢でも、私を見つけてくれたのは敦賀さん…だったわ。
今日も尚に絡まれているところを助けられた。
いつだって蓮は自分にとってヒーローのような王子様のようなそんな錯覚をしてしまう。
そうやって考えているとある重要なことを思い出した。
ーーー私、ここまでどうやって帰ってきたの?!
テレビ局で蓮が現れた後、少し経ってからの記憶がない。
ーーーバカショーは?!え?!まさか…っ!!
もしかして尚のいる前で気を失って、蓮に抱えられてここまで帰ってきてしまったのだろうか?
ーーーいいいやぁぁぁ!!私は何って罪深いことをぉぉぉぉ!!!!!
崇拝して尊敬崇め奉る大先輩の蓮を、文字通り足に使ってしまうとはなんたることか!!
少し休んだおかげで少しだけ体調が回復したキョーコはふらつきながらも蓮に謝罪しようとベッドを抜け出したのだった。
「………………。敦賀、、さん…?」
「あ、最上さん!もう起きて大丈夫なの?体調は?」
「あの…何を…なさってるんですか?」
キョーコは蓮の質問に答えるよりも何よりも、顔を引きつらせて尋ねていた。
「ん?あぁ、お粥をね。作ろうと思って…」
「フライパンで…ですか?」
「あ、いや、これは…ちょっと失敗したんだけど、ソース…かな?」
「お粥に……ソース…ですか?」
「いや、そうじゃなくて、米だけじゃ味気ないかな?って思って君の好きなハンバーグを作ろうとしたんだけど…」
「どうやったら、そんな鮮やかな紫色のでろんでろんの物体が出来上がったんですか?」
「いや…これは俺にも謎で…。」
本当に自分でもどうしてこんな色になったのか心底わからないんだという顔で首を傾げる蓮に、キョーコは頭を押さえてよろりとよろめいた。
「あ!最上さんっ!!大丈夫?!無理しないで…」
「…いえ、すみません。違います。これは具合の悪さとは別問題と言いますか…。いえ…なんでもないです…。」
はぁーーっと息を吐き出した所で、もう一つのフライパンからもくもくとした煙の気配が立ち上ったのに気づいて、キョーコは思わず叫んでいた。
「敦賀さん!!火っ!!火がっ!!」
「え?!あ…!……ふぅ…危なかった…。」
フライパンの周りからぷすぷすと謎の煙が燻っている。
キョーコは恐る恐るフライパンに近寄りチラリと蓮に視線を送った。
「念のため、中身を確認してもいいでしょうか?」
蓮の了承を得てキョーコがフライパンの蓋を取ると、一体何kgの肉を入れたのか?と思わず思ってしまうほどフライパン一面にドドンとお肉が乗っかっていた。ちゃんと挽肉は用意したらしいのだが、恐らくパッケージから出したままそのまま投入していたらしく、表面の中央当たりにはまだ赤い部分も残っている。
キョーコの頬が引きつった。
「これは…一体何でしょう?」
「あぁ、えっと、一応、ハンバーグ…のつもり…だけど…」
「………………。」
「…………ごめん。」
キョーコが言葉をなくしているのをいたたまれなく感じて、蓮は尻尾を垂らして謝った。
「おとなしく出前でも取れば良かったよね…。」
申し訳なさそうに言っているが、体調の悪い自分のために何か出来る事はないかと一生懸命料理をしてくれていたのだろうということはキョーコにも伝わっていた。
キョーコは一つ大きく息を吐き出して、自分自身を落ち着ける。
「いえ、敦賀さんのそのお気持ちはとても嬉しいんです。ありがとうございます。」
キョーコの言葉に、蓮はパッと顔を上げた。
「怒ってないの?」
「怒りはしませんよ。だって、私のため…ですよね?」
「うん…まぁ…。」
蓮が視線を逸らしながら返事を濁す。キョーコの為につくったのだが、とても病人に食べさせられるものじゃなかったからだ。
「ふふ…ふふふ。」
キョーコが突然笑い出した。
蓮が捨てられた仔犬の様な顔でしゅーんと沈んでいたのを可愛いと思ってしまったのだ。
それと同時に、自分の為に作ってくれたという蓮の優しさが堪らなく嬉しくなって気が付いたら、涙が滲むほどの幸せを感じていた。
「最上さん?」
「ふふ…くふっ…ふぅ…」
怪訝な目で見つめてくる蓮に、キョーコは返事も返せないほど、笑いながら嬉し涙を流していた。
ポロリポロリと頬を伝い流れ落ちる綺麗な涙。
幸せそうなキョーコの笑顔と涙に、蓮はキョトンとした目で不思議そうに見つめていたのだった。
キョーコが一通り笑って落ち着くと、キョーコは食材の使えそうな部分をアレンジしてあっという間に創作料理を作り上げた。
「美味しい…!」
「ふふ。良かったです。」
「本当…ごめんね。余計な負担増やしちゃって…」
「いえ、嬉しかったですから。」
体調の悪いキョーコに料理をさせる訳にはいかないと渋っていた蓮を無理はしないからと言いくるめて、キョーコはキッチンに立った。
蓮に指示を出しながら二人で作る料理は初めてで二人ともとても新鮮な気分になった。
片付けは自分がするからと、熱が上がって顔が赤くなってきたキョーコからエプロンをとりあげて、蓮はキョーコをゲストルームへと促した。
ベッドで休んでいると、暫くして片付けを終えたらしい蓮が水と替えの氷嚢を持ってやってきた。優しく甲斐甲斐しく看病をされるのはキョーコにとって初めてのことだった。
「大丈夫?何か欲しいものがあったらなんでも言っていいからね?」
そんな蓮の存在が暖かくて嬉しくて、キョーコは頷きながらそっと幸せそうに目を閉じたのだった。
(続く)
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辛そうな顔でうなされてるキョーコの顔を覗き込み、蓮は布団を強く握りしめるキョーコの右手を優しく包み込んだ。
「大丈夫。俺がいるよ、最上さん。俺が誰よりも君のそばにいる。絶対に置いて行ったりしないから…安心して…。」
そうやって言い聞かせると、キョーコは安心したように手の力を弱め、ほわんと顔を嬉しそうに綻ばせた。
「つる…ぁ、さん…」
その安心し切った絶対的な信頼の顔に、蓮は固まり、ゆっくりとキョーコの顔に己の顔を寄せた。
「…んっ。」
もう少しで唇が重なりそうになった時、キョーコが不意に顔を逸らしたので、蓮はハッと我に返った。
「俺…今、何を…っ!!」
ーードクドクドクドク
気がついた時にはキョーコの顔が目と鼻の先にあり、心臓が飛び出そうなくらい驚いた。
キョーコが顔を逸らさなかったら恐らく唇を重ねてしまっていただろう。
どうもキョーコの身体を目にしてからというもの、自身の思考が暴走気味な気がしてならない。
キョーコに触れたい…欲しくて欲しくてたまらないという気持ちが格段とアップしているのだ。
風邪を引いて苦しんでいる彼女を目の前にしておきながら不埒な想いを抱いている自分自身に溜息しか出てこない。
「はぁー。しっかりしろ!俺!!」
ーーー最上さんが早く良くなることだけを考えろ!!
自分自身に必死に言い聞かせて、蓮は病人でも食べれるものを作ろうと、キッチンへ行くのだった。
「ん…」
ボーーー…。
キョーコが目を覚ましたときには部屋には誰の気配もなかった。
しかし、ベッドの肌触りや柔らかさは最近慣れ親しんだ場所のもので、キョーコは蓮に会ったのが夢じゃなかったんだとホッと安堵の息を吐いた。
右手を翳して、ぽうっと見つめる。
夢で追いかけても追いかけても誰も掴んでくれなかった手を暖かい手が包んでくれたように感じたのだ。
顔は見えなかったが、酷く安心出来るその温もりはあの人のものだと直感が伝えてくれた。
ーーー夢でも、私を見つけてくれたのは敦賀さん…だったわ。
今日も尚に絡まれているところを助けられた。
いつだって蓮は自分にとってヒーローのような王子様のようなそんな錯覚をしてしまう。
そうやって考えているとある重要なことを思い出した。
ーーー私、ここまでどうやって帰ってきたの?!
テレビ局で蓮が現れた後、少し経ってからの記憶がない。
ーーーバカショーは?!え?!まさか…っ!!
もしかして尚のいる前で気を失って、蓮に抱えられてここまで帰ってきてしまったのだろうか?
ーーーいいいやぁぁぁ!!私は何って罪深いことをぉぉぉぉ!!!!!
崇拝して尊敬崇め奉る大先輩の蓮を、文字通り足に使ってしまうとはなんたることか!!
少し休んだおかげで少しだけ体調が回復したキョーコはふらつきながらも蓮に謝罪しようとベッドを抜け出したのだった。
「………………。敦賀、、さん…?」
「あ、最上さん!もう起きて大丈夫なの?体調は?」
「あの…何を…なさってるんですか?」
キョーコは蓮の質問に答えるよりも何よりも、顔を引きつらせて尋ねていた。
「ん?あぁ、お粥をね。作ろうと思って…」
「フライパンで…ですか?」
「あ、いや、これは…ちょっと失敗したんだけど、ソース…かな?」
「お粥に……ソース…ですか?」
「いや、そうじゃなくて、米だけじゃ味気ないかな?って思って君の好きなハンバーグを作ろうとしたんだけど…」
「どうやったら、そんな鮮やかな紫色のでろんでろんの物体が出来上がったんですか?」
「いや…これは俺にも謎で…。」
本当に自分でもどうしてこんな色になったのか心底わからないんだという顔で首を傾げる蓮に、キョーコは頭を押さえてよろりとよろめいた。
「あ!最上さんっ!!大丈夫?!無理しないで…」
「…いえ、すみません。違います。これは具合の悪さとは別問題と言いますか…。いえ…なんでもないです…。」
はぁーーっと息を吐き出した所で、もう一つのフライパンからもくもくとした煙の気配が立ち上ったのに気づいて、キョーコは思わず叫んでいた。
「敦賀さん!!火っ!!火がっ!!」
「え?!あ…!……ふぅ…危なかった…。」
フライパンの周りからぷすぷすと謎の煙が燻っている。
キョーコは恐る恐るフライパンに近寄りチラリと蓮に視線を送った。
「念のため、中身を確認してもいいでしょうか?」
蓮の了承を得てキョーコがフライパンの蓋を取ると、一体何kgの肉を入れたのか?と思わず思ってしまうほどフライパン一面にドドンとお肉が乗っかっていた。ちゃんと挽肉は用意したらしいのだが、恐らくパッケージから出したままそのまま投入していたらしく、表面の中央当たりにはまだ赤い部分も残っている。
キョーコの頬が引きつった。
「これは…一体何でしょう?」
「あぁ、えっと、一応、ハンバーグ…のつもり…だけど…」
「………………。」
「…………ごめん。」
キョーコが言葉をなくしているのをいたたまれなく感じて、蓮は尻尾を垂らして謝った。
「おとなしく出前でも取れば良かったよね…。」
申し訳なさそうに言っているが、体調の悪い自分のために何か出来る事はないかと一生懸命料理をしてくれていたのだろうということはキョーコにも伝わっていた。
キョーコは一つ大きく息を吐き出して、自分自身を落ち着ける。
「いえ、敦賀さんのそのお気持ちはとても嬉しいんです。ありがとうございます。」
キョーコの言葉に、蓮はパッと顔を上げた。
「怒ってないの?」
「怒りはしませんよ。だって、私のため…ですよね?」
「うん…まぁ…。」
蓮が視線を逸らしながら返事を濁す。キョーコの為につくったのだが、とても病人に食べさせられるものじゃなかったからだ。
「ふふ…ふふふ。」
キョーコが突然笑い出した。
蓮が捨てられた仔犬の様な顔でしゅーんと沈んでいたのを可愛いと思ってしまったのだ。
それと同時に、自分の為に作ってくれたという蓮の優しさが堪らなく嬉しくなって気が付いたら、涙が滲むほどの幸せを感じていた。
「最上さん?」
「ふふ…くふっ…ふぅ…」
怪訝な目で見つめてくる蓮に、キョーコは返事も返せないほど、笑いながら嬉し涙を流していた。
ポロリポロリと頬を伝い流れ落ちる綺麗な涙。
幸せそうなキョーコの笑顔と涙に、蓮はキョトンとした目で不思議そうに見つめていたのだった。
キョーコが一通り笑って落ち着くと、キョーコは食材の使えそうな部分をアレンジしてあっという間に創作料理を作り上げた。
「美味しい…!」
「ふふ。良かったです。」
「本当…ごめんね。余計な負担増やしちゃって…」
「いえ、嬉しかったですから。」
体調の悪いキョーコに料理をさせる訳にはいかないと渋っていた蓮を無理はしないからと言いくるめて、キョーコはキッチンに立った。
蓮に指示を出しながら二人で作る料理は初めてで二人ともとても新鮮な気分になった。
片付けは自分がするからと、熱が上がって顔が赤くなってきたキョーコからエプロンをとりあげて、蓮はキョーコをゲストルームへと促した。
ベッドで休んでいると、暫くして片付けを終えたらしい蓮が水と替えの氷嚢を持ってやってきた。優しく甲斐甲斐しく看病をされるのはキョーコにとって初めてのことだった。
「大丈夫?何か欲しいものがあったらなんでも言っていいからね?」
そんな蓮の存在が暖かくて嬉しくて、キョーコは頷きながらそっと幸せそうに目を閉じたのだった。
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