皆さんの希望に添えてるかわかりませんが、頑張って更新中ー!!
*****
サンタガール*中編
「最上さん、コレあっちに運んでくれる?…最上さん?ちょっと、最上さん?!」
「え?!あ、は、はい!!こ、これですね!!わかりました!!」
「どうしたの?今日はずっと反応悪いけど…もしかして体調悪い?」
「い、いえ!!絶好調です!!」
年上のバイト仲間にそう問われて、キョーコは慌てて否定した。
「だって顔赤いよ?心ここにあらずって感じだし…熱でもあるんじゃないの?」
「大丈夫です!!ちょっと考え事してしまっただけで、至って健康体ですから!!これ、運んで決ますねっ!!」
キョーコは大袈裟に腕を振り回しながら、元気なところをアピールすると、他に何か聞かれる前に慌てて言いつけられた仕事に取り掛かった。
ーーーあ、危なかった!!またフリーズしちゃったわ!!
キョーコは先ほどまで反芻していたことを思い出すと、真っ赤になってしまった。
ーーー危険危険!!危険極まりないわ!!敦賀セラピー!!
蓮と初めて食事に行ったその帰りに、幼馴染のショーと会って…その後、部屋で抱き締められたのだ。
出会ったばかりの男性を部屋に上げてしまった自分もどうかと思うが、うっかりこのまま時が止まって欲しいなんて思ってしまっ…ーー
ーーーいやいやいや!!そんなこと思ってない!!おもってないったら!!
まるで頭の中に二人の自分がいるみたいに、ボケとツッコミをしてしまったなんて思いながら、一生懸命頭上で手を振り思考を打ち消した。
その間にもまたグルグルと蓮の言動を思い出しては真っ赤になったり真っ青になったり忙しい。
可愛いなんて言われ慣れてない言葉をさらりと使う彼はきっと遊び人なのだと思う。
そもそもただの食事の約束に三ツ星レストランの一番いい席を予約してスマートに案内してしまうのが、手慣れた感じがプンプンするのだ。
うっかり三つ星の美味しさにやられてレシピを頭に浮かべながら食事を楽しんでしまったのも、目の前の人に心を奪われない為だった。
信じていた幼馴染にあんな仕打ちをされてから、もう二度と恋なんてしないと固く誓ったはずのその心が、また新たにときめくことを許せないのだ。
それなのに、出会ったばかりのその人は、遊び人の空気を振りまきながらもこちらが勘違いしてしまいそうな蕩けんばかりの笑顔を見せてくれる。
カッコイイ…とは思う。あの美貌、鍛え抜かれたと服の上からでもわかるしっかりとバランスの取れた筋肉の付き方。ツヤツヤの髪に切れ長の目、そしてあの身長。
誰もが羨む甘いマスクと甘い美声。
非の打ち所がないとは彼の固有名詞ではないかなんて考える。
初めて見たときは大天使様?とうっかり思ったほどだ。
そんな彼に抱きしめられた時の…その安心感と言ったらもう…ーー
ーーーっってぇ!!だーかーらぁー!!違うんだってばぁぁぁぁぁぁ!!
頭を抱えて悶絶していて、注目を浴びてることにも気付けない始末だ。
「最上さん…本当にどうしたの?」
「さぁ?大天使様がどうとかって…大丈夫かしら…?」
バイト仲間がそんな風に引いている中、一人の男がキョーコに近付いていた。
「ねぇ、サンタさん。」
話しかけてもサンタガールキョーコは思考の渦の中。
「ねぇってば、可愛い可愛いサンタさん?」
「ふへ?!」
何だか聞いたことあるフレーズだと思わず反応して固まってしまった。
今まさに考えていたその人が目の前にいたのだ。
「だっ!てっ!つ、敦賀さん?!」
一瞬、混乱して大天使様や天使様と呼ぼうとして慌てて名前を言い直す。
「うん。こんにちは。」
「こ、こんにちは!!」
バイト仲間の女の子達がキャーキャー言ってる。それもそうだろう。レストランに入った時も彼は注目の的だったのだから。
顔が段々と赤くなるのがわかる。
恥ずかしくて仕方が無い。
ーーーちょ!ちょっと!!可愛いサンタさんって言われて反応しちゃう私ってどうなのよ?!
「きょ、今日はどうされたんですか?」
「うん。…ケーキでも買おうかなって。」
「へ?!ケーキですか?」
「うん。オススメは?」
「あの…ここはホールケーキしか販売してないですけど…。」
この間の食事でも蓮はデザートを頼まなかった。
食事の量も成人男性の平均以下だと知ったし、甘いものも殆ど口にしないと聞いていた。
「…………。」
ーーーあれ?笑顔のまま固まった??
「最上さんこの仕事いつまで入ってるの?」
ーーーえ?あれ??ケーキの話じゃなかったの?なんで私の仕事のはなし??
「えっと…24日の20時までですが…。」
「そっか。じゃあ24日の20時に取りに来たいんだけど予約できる?」
「え?あ…はい!わかりました!!お受付致します!!じゃあこちらの用紙に…」
キョーコが予約用紙とペンを差し出し、説明を始めようとしたところで、蓮が手を重ねるようにして、キョーコのペンを持った手を包み込み、そっとキョーコの耳元に囁いた。
「ちなみに、その後の君の時間と身体も予約したいんだけど、空いてるかな?」
「っ?!」
吐息が耳に掛かり、ボッと顔に火が付いたみたいに赤くなってしまったキョーコは言葉の意味が理解できるまで暫し時間を要した。
「ダメ…かな?」
キョーコは慌てて手を離しながら必死で答えた。
「かっ、からかわないでください!!敦賀さんほどの方がイブの夜にフリーだなんてあるわけ…」
「からかってないよ。俺は本気。ちなみに25日の予定は?」
「に、25日は、特に…予定は…ない…です、けど…。」
蓮はキョーコの答えに満足そうににっこりと微笑んで、「じゃっ、決まりだね!約束だ。」と言って、さらさらと予約表に名前と連絡先を記入した。
「え?!あ、あのっ、ケーキはどれに…?!」
勝手に色々話を纏め、その場をそのまま去ろうとした蓮にキョーコがメニューのPOPを広げながら慌てて問いかけると、蓮はニッコリと微笑んで振り返った。
「最上さんが選んで。それが一番食べたいから。」
キョーコの顔がサンタの帽子に負けないくらい真っ赤に染まった。
ーーーやっぱり大天使様…
手に持っていたPOPを思わずポトリと取り落とし、惚けてしまった。
そうして蕩けるような笑顔を残した蓮はあっという間に姿を眩ませてしまったのだった。
ーーー本当に…来てくれるのかな?
キョーコは24日の夕方くらいから落ち着かない気分になり、そわそわしてしまった。
あの予約の日、蓮が去ってからバイト仲間からは質問攻めに合ってしまったが、もういっぱいいっぱいだったキョーコは何も答えられず、そのままふらーっと気を失ってしまった。
6種類のクリスマス仕様のホールケーキが並ぶ中で、蓮の予約したケーキとして、キョーコは一番小ぶりの可愛らしい飾りのあるケーキを選んだ。
蓮に似合いそうな大人っぽいケーキもあったのだが、それはキョーコが選んだケーキよりも1000円ほど高くて、蓮なら気にせず払えるのだろうと思えるのだが、キョーコにはそれを勝手に選ぶ勇気がなかったのだ。
「すみませんー!ケーキ下さいー!!」
「あ、はい!かしこまりました!!種類はどちらになさいますか?」
24日は流石にクリスマスケーキの販売はピークで何時もより多めに入荷していたのにも関わらずどんどん売れて20時の20分前には蓮が予約し、キョーコが選んだケーキを残して、完売となってしまった。
「あと、このお客様だけねぇ~。後はやっとくから皆上がっていいよ~。」
「「「はーい!やったぁ!!」」」
一番年上のこの販売チームのリーダーを任されてる女性がそう声をかけると他のサンタガールが予定より早く帰れることに喜び笑顔で返事をする。そんな中、キョーコは一人狼狽えていた。
皆がキャイキャイと更衣室に引き上げるのを見届けて、キョーコは一人残ってその女性に声をかけた。
「あ、あの!!このご予約のお客様、私の知り合いなんですけど…」
「あらそうなの?」
「はい…なので良ければ、あの…私が購入して後で渡すというのは…。」
「最上さん、悪いけどそれは出来ないわ。お客様のご予約のものだし…。」
「そ、そうですよね…。」
蓮はもしかしたら自分に会いに来るための口実でケーキを予約したのではないかと思ったが、この時点になってそれは自惚れじゃないかと思い始めた。
この後の時間も欲しいと言われたし、本気だと言われたが、どうしてもからかわれているとしか思えないのだ。
「その格好寒いでしょ?早く着替えてらっしゃい!」
「はい…。あの、では、お先に失礼します!お疲れ様でした!!」
キョーコは頭を下げてその場から逃げるように更衣室へと向かった。
ーーーよく考えたら、あり得ない話よ!!それに、顔のいい男ほど信用できないってつい最近学習したばかりじゃないのっ!!おバカキョーコ!!
あの彼が本気で自分に興味を持ってるなんてことがあるはずはないのだ。
ーーー反応が面白くってからかってるだけなんだわ!!
そうとでも思わないと、心臓が壊れてしまいそうだ。
ーーー次またあんな風に…抱きしめられたら……私…………。キャー!!だからないないない!!ないってば!!期待は禁物よ!!期待したらダメなんだから!!
キョーコは顔を青くしたり赤くしたりしながらいつもの倍以上の時間をかけて漸く着替えを済ませた。
「あれ…?」
蓮はキョーコの勤務場所についてキョロキョロと辺りを見回してしまった。
サンタガールの格好をしてる人物は探しても探しても一人だけなのだが、どう見てもキョーコとは別人だった。
蓮は暫く辺りを探してみたが見つからないのでとりあえず、一人だけ残っているサンタガールに声を掛けた。
「すみません、あの、ここでサンタの格好をしてた最上さんはどちらでしょうか?」
「え?あ、もしかして…最上さんのお知り合いだというケーキのご予約の方ですか?」
蓮が声を掛けたことで、女性は頬を染め、慌てて髪を撫でつけた。
「あ、はい。彼女に予約をしてたんですけど…。」
「お待ちしておりました!!お名前お伺いしてよろしいでしょうか?」
「あ、敦賀…です。」
「はい。かしこまりました!ではこちらです!!1600円でございます。」
「あ、はい。ありがとうございます。それで…彼女は…?」
支払いをして、商品を受け取りながら彼女の所在を問う。
「もうこちらのケーキが最後でしたので、他のバイトの子達は皆帰らせたので…最上さんも一緒に…。」
「そ…うなんですか…。じゃあ彼女は…もう?」
「そうですね。あれからもう20分も経ってるので恐らくは…あ!でももしかしたらまだ更衣室にいるかもしれません!中には入れませんがよろしければ入口まででしたらご案内しますがご一緒にどうですか…?」
「あ、じゃあすみません、よろしくお願いします。」
蓮は軽く頭を下げた。
女性はウキウキと頬を染めて片付け始める。
「すぐ、片付けますので…待っていただいても…」
「あ、重いでしょう。俺も手伝いますよ。」
「えぇ?!そ、そんな!!い、いいんですか?!」
「ええ。何から手をつけたらいいですか?」
女性は遠慮しながらも蓮の優しさにメロメロになり、あわよくばという想いが湧いたらしい。
わざと手間取ったり、重いものを持とうとしてか弱い姿を見せたりしながら蓮に甘え、会話を繋いであれこれと蓮の情報を聞き出そうとしていた。蓮にはわざと時間を遅らせてるようにしか思えなくて、笑顔の奥にこの間にもキョーコが帰ったらどうするんだ!!とイライラとした気持ちを必死で押し込めていた。
「あ、敦賀…さん?」
そんな中で、漸く片付け終えた時、タイミング良く遠慮気味なキョーコの声が背後から聞こえ、蓮は反射的に振り返った。
「あぁ!最上さん!!良かった!まだ居てくれたんだ!!」
蓮はその姿を瞳に映すと先程までのイライラが一気に分散し、心からの喜びを笑顔で表した。
慌てて駆け寄り、思わずぎゅうっとキョーコの存在を確かめるように抱きしめる。
「帰っちゃってたらどうしようかと思ってたよ。来てみたら君はいないし…。あぁ!でも会えて良かった!!嬉しいよ。」
「あわっ!!つ、敦賀さん!!ちょっと…あの…」
突然のハグに驚いたのかキョーコの身体は強張り、顔が真っ赤になった。それが本当に可愛らしくて我慢して手伝っててよかったと心から思った。
「それに…ちゃんと俺が来るの待っててくれたんだ?」
「それは…その…一応、約束も…しておりましたので…。」
「うん。そうだよね。約束したもんね。」
蓮はニコニコと上機嫌だ。
「あ、あの…敦賀さん…?」
「うん?」
「これは…流石に、あの、は、恥ずかしいんですけど…」
「え…?あ、あぁ!ごめん!!つい…」
キョーコに指摘されるまで抱き締めてしまっていたことに気付かなくて蓮は慌てて離れた。
思わず顔が赤くなり口元を手で覆い隠し、罰が悪くて少しだけ顔をそらした。
「い、いえ…」
キョーコはキョーコで耳まで真っ赤にして下を向いてしまった。
モジモジしている姿がなんともいじらしい。
離れて漸く彼女の全体像を見ることが出来た蓮は気を取り直して満足そうな笑みを浮かべた。
「あぁ、今日の格好も凄く可愛いね。似合ってるよ。」
神々笑顔でそう言われてまたもやキョーコの顔が赤くなる。
キョーコの姿は白のニット帽にクリーム色のファーの付いた白いコート、そして白のロングブーツを合わせていて雪の妖精のように蓮の目には映った。
「あ、ありがとう、ございます…」
蓮にこの後の時間を予約したいと言われていたので、うっかり期待して精一杯のオシャレをして来たキョーコは嬉しさのあまりに胸を震わせた。
この時点でもう期待するまいと思うのは手遅れだったようだ。
「なーんだ…最上さんの彼氏なんだ…」
最後の片付けで蓮にアピールしまくっていたサンタガールが至極残念そうにそう言った。
それを聞いてキョーコの顔がまたもや真っ赤になる。
「かっ彼氏?!ち、ちが…」
否定しようとしたキョーコの腰を引き寄せて、蓮は満面の笑みを浮かべ、そのサンタガールに向き合った。
「ありがとうございました。無事、彼女に会うことが出来ました。では俺たちはこれで。これから予定がありますので…」
残されたサンタガールは苦笑するしかなく、蓮とキョーコを見送る。
「えぇ、片付け手伝ってくださってありがとうございました。最上さんもまたね?お疲れ様。」
「は、はい!お疲れ様でした!!」
キョーコも礼儀正しくぺこりとお辞儀をして別れを告げ、蓮に促されるまま、歩き始めたのだった。
(続く)
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ご要望にお応えして続けてみたもののなんだかダラダラと長くなってしまって申し訳ありませんー!!
なぜ中編?!そしてこの後どう持って行くか全く決まってないという…!!
キョコ誕は明日なのに!!
皆さんはこの後どんなデートがお好みですか??
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サンタガール*中編
「最上さん、コレあっちに運んでくれる?…最上さん?ちょっと、最上さん?!」
「え?!あ、は、はい!!こ、これですね!!わかりました!!」
「どうしたの?今日はずっと反応悪いけど…もしかして体調悪い?」
「い、いえ!!絶好調です!!」
年上のバイト仲間にそう問われて、キョーコは慌てて否定した。
「だって顔赤いよ?心ここにあらずって感じだし…熱でもあるんじゃないの?」
「大丈夫です!!ちょっと考え事してしまっただけで、至って健康体ですから!!これ、運んで決ますねっ!!」
キョーコは大袈裟に腕を振り回しながら、元気なところをアピールすると、他に何か聞かれる前に慌てて言いつけられた仕事に取り掛かった。
ーーーあ、危なかった!!またフリーズしちゃったわ!!
キョーコは先ほどまで反芻していたことを思い出すと、真っ赤になってしまった。
ーーー危険危険!!危険極まりないわ!!敦賀セラピー!!
蓮と初めて食事に行ったその帰りに、幼馴染のショーと会って…その後、部屋で抱き締められたのだ。
出会ったばかりの男性を部屋に上げてしまった自分もどうかと思うが、うっかりこのまま時が止まって欲しいなんて思ってしまっ…ーー
ーーーいやいやいや!!そんなこと思ってない!!おもってないったら!!
まるで頭の中に二人の自分がいるみたいに、ボケとツッコミをしてしまったなんて思いながら、一生懸命頭上で手を振り思考を打ち消した。
その間にもまたグルグルと蓮の言動を思い出しては真っ赤になったり真っ青になったり忙しい。
可愛いなんて言われ慣れてない言葉をさらりと使う彼はきっと遊び人なのだと思う。
そもそもただの食事の約束に三ツ星レストランの一番いい席を予約してスマートに案内してしまうのが、手慣れた感じがプンプンするのだ。
うっかり三つ星の美味しさにやられてレシピを頭に浮かべながら食事を楽しんでしまったのも、目の前の人に心を奪われない為だった。
信じていた幼馴染にあんな仕打ちをされてから、もう二度と恋なんてしないと固く誓ったはずのその心が、また新たにときめくことを許せないのだ。
それなのに、出会ったばかりのその人は、遊び人の空気を振りまきながらもこちらが勘違いしてしまいそうな蕩けんばかりの笑顔を見せてくれる。
カッコイイ…とは思う。あの美貌、鍛え抜かれたと服の上からでもわかるしっかりとバランスの取れた筋肉の付き方。ツヤツヤの髪に切れ長の目、そしてあの身長。
誰もが羨む甘いマスクと甘い美声。
非の打ち所がないとは彼の固有名詞ではないかなんて考える。
初めて見たときは大天使様?とうっかり思ったほどだ。
そんな彼に抱きしめられた時の…その安心感と言ったらもう…ーー
ーーーっってぇ!!だーかーらぁー!!違うんだってばぁぁぁぁぁぁ!!
頭を抱えて悶絶していて、注目を浴びてることにも気付けない始末だ。
「最上さん…本当にどうしたの?」
「さぁ?大天使様がどうとかって…大丈夫かしら…?」
バイト仲間がそんな風に引いている中、一人の男がキョーコに近付いていた。
「ねぇ、サンタさん。」
話しかけてもサンタガールキョーコは思考の渦の中。
「ねぇってば、可愛い可愛いサンタさん?」
「ふへ?!」
何だか聞いたことあるフレーズだと思わず反応して固まってしまった。
今まさに考えていたその人が目の前にいたのだ。
「だっ!てっ!つ、敦賀さん?!」
一瞬、混乱して大天使様や天使様と呼ぼうとして慌てて名前を言い直す。
「うん。こんにちは。」
「こ、こんにちは!!」
バイト仲間の女の子達がキャーキャー言ってる。それもそうだろう。レストランに入った時も彼は注目の的だったのだから。
顔が段々と赤くなるのがわかる。
恥ずかしくて仕方が無い。
ーーーちょ!ちょっと!!可愛いサンタさんって言われて反応しちゃう私ってどうなのよ?!
「きょ、今日はどうされたんですか?」
「うん。…ケーキでも買おうかなって。」
「へ?!ケーキですか?」
「うん。オススメは?」
「あの…ここはホールケーキしか販売してないですけど…。」
この間の食事でも蓮はデザートを頼まなかった。
食事の量も成人男性の平均以下だと知ったし、甘いものも殆ど口にしないと聞いていた。
「…………。」
ーーーあれ?笑顔のまま固まった??
「最上さんこの仕事いつまで入ってるの?」
ーーーえ?あれ??ケーキの話じゃなかったの?なんで私の仕事のはなし??
「えっと…24日の20時までですが…。」
「そっか。じゃあ24日の20時に取りに来たいんだけど予約できる?」
「え?あ…はい!わかりました!!お受付致します!!じゃあこちらの用紙に…」
キョーコが予約用紙とペンを差し出し、説明を始めようとしたところで、蓮が手を重ねるようにして、キョーコのペンを持った手を包み込み、そっとキョーコの耳元に囁いた。
「ちなみに、その後の君の時間と身体も予約したいんだけど、空いてるかな?」
「っ?!」
吐息が耳に掛かり、ボッと顔に火が付いたみたいに赤くなってしまったキョーコは言葉の意味が理解できるまで暫し時間を要した。
「ダメ…かな?」
キョーコは慌てて手を離しながら必死で答えた。
「かっ、からかわないでください!!敦賀さんほどの方がイブの夜にフリーだなんてあるわけ…」
「からかってないよ。俺は本気。ちなみに25日の予定は?」
「に、25日は、特に…予定は…ない…です、けど…。」
蓮はキョーコの答えに満足そうににっこりと微笑んで、「じゃっ、決まりだね!約束だ。」と言って、さらさらと予約表に名前と連絡先を記入した。
「え?!あ、あのっ、ケーキはどれに…?!」
勝手に色々話を纏め、その場をそのまま去ろうとした蓮にキョーコがメニューのPOPを広げながら慌てて問いかけると、蓮はニッコリと微笑んで振り返った。
「最上さんが選んで。それが一番食べたいから。」
キョーコの顔がサンタの帽子に負けないくらい真っ赤に染まった。
ーーーやっぱり大天使様…
手に持っていたPOPを思わずポトリと取り落とし、惚けてしまった。
そうして蕩けるような笑顔を残した蓮はあっという間に姿を眩ませてしまったのだった。
ーーー本当に…来てくれるのかな?
キョーコは24日の夕方くらいから落ち着かない気分になり、そわそわしてしまった。
あの予約の日、蓮が去ってからバイト仲間からは質問攻めに合ってしまったが、もういっぱいいっぱいだったキョーコは何も答えられず、そのままふらーっと気を失ってしまった。
6種類のクリスマス仕様のホールケーキが並ぶ中で、蓮の予約したケーキとして、キョーコは一番小ぶりの可愛らしい飾りのあるケーキを選んだ。
蓮に似合いそうな大人っぽいケーキもあったのだが、それはキョーコが選んだケーキよりも1000円ほど高くて、蓮なら気にせず払えるのだろうと思えるのだが、キョーコにはそれを勝手に選ぶ勇気がなかったのだ。
「すみませんー!ケーキ下さいー!!」
「あ、はい!かしこまりました!!種類はどちらになさいますか?」
24日は流石にクリスマスケーキの販売はピークで何時もより多めに入荷していたのにも関わらずどんどん売れて20時の20分前には蓮が予約し、キョーコが選んだケーキを残して、完売となってしまった。
「あと、このお客様だけねぇ~。後はやっとくから皆上がっていいよ~。」
「「「はーい!やったぁ!!」」」
一番年上のこの販売チームのリーダーを任されてる女性がそう声をかけると他のサンタガールが予定より早く帰れることに喜び笑顔で返事をする。そんな中、キョーコは一人狼狽えていた。
皆がキャイキャイと更衣室に引き上げるのを見届けて、キョーコは一人残ってその女性に声をかけた。
「あ、あの!!このご予約のお客様、私の知り合いなんですけど…」
「あらそうなの?」
「はい…なので良ければ、あの…私が購入して後で渡すというのは…。」
「最上さん、悪いけどそれは出来ないわ。お客様のご予約のものだし…。」
「そ、そうですよね…。」
蓮はもしかしたら自分に会いに来るための口実でケーキを予約したのではないかと思ったが、この時点になってそれは自惚れじゃないかと思い始めた。
この後の時間も欲しいと言われたし、本気だと言われたが、どうしてもからかわれているとしか思えないのだ。
「その格好寒いでしょ?早く着替えてらっしゃい!」
「はい…。あの、では、お先に失礼します!お疲れ様でした!!」
キョーコは頭を下げてその場から逃げるように更衣室へと向かった。
ーーーよく考えたら、あり得ない話よ!!それに、顔のいい男ほど信用できないってつい最近学習したばかりじゃないのっ!!おバカキョーコ!!
あの彼が本気で自分に興味を持ってるなんてことがあるはずはないのだ。
ーーー反応が面白くってからかってるだけなんだわ!!
そうとでも思わないと、心臓が壊れてしまいそうだ。
ーーー次またあんな風に…抱きしめられたら……私…………。キャー!!だからないないない!!ないってば!!期待は禁物よ!!期待したらダメなんだから!!
キョーコは顔を青くしたり赤くしたりしながらいつもの倍以上の時間をかけて漸く着替えを済ませた。
「あれ…?」
蓮はキョーコの勤務場所についてキョロキョロと辺りを見回してしまった。
サンタガールの格好をしてる人物は探しても探しても一人だけなのだが、どう見てもキョーコとは別人だった。
蓮は暫く辺りを探してみたが見つからないのでとりあえず、一人だけ残っているサンタガールに声を掛けた。
「すみません、あの、ここでサンタの格好をしてた最上さんはどちらでしょうか?」
「え?あ、もしかして…最上さんのお知り合いだというケーキのご予約の方ですか?」
蓮が声を掛けたことで、女性は頬を染め、慌てて髪を撫でつけた。
「あ、はい。彼女に予約をしてたんですけど…。」
「お待ちしておりました!!お名前お伺いしてよろしいでしょうか?」
「あ、敦賀…です。」
「はい。かしこまりました!ではこちらです!!1600円でございます。」
「あ、はい。ありがとうございます。それで…彼女は…?」
支払いをして、商品を受け取りながら彼女の所在を問う。
「もうこちらのケーキが最後でしたので、他のバイトの子達は皆帰らせたので…最上さんも一緒に…。」
「そ…うなんですか…。じゃあ彼女は…もう?」
「そうですね。あれからもう20分も経ってるので恐らくは…あ!でももしかしたらまだ更衣室にいるかもしれません!中には入れませんがよろしければ入口まででしたらご案内しますがご一緒にどうですか…?」
「あ、じゃあすみません、よろしくお願いします。」
蓮は軽く頭を下げた。
女性はウキウキと頬を染めて片付け始める。
「すぐ、片付けますので…待っていただいても…」
「あ、重いでしょう。俺も手伝いますよ。」
「えぇ?!そ、そんな!!い、いいんですか?!」
「ええ。何から手をつけたらいいですか?」
女性は遠慮しながらも蓮の優しさにメロメロになり、あわよくばという想いが湧いたらしい。
わざと手間取ったり、重いものを持とうとしてか弱い姿を見せたりしながら蓮に甘え、会話を繋いであれこれと蓮の情報を聞き出そうとしていた。蓮にはわざと時間を遅らせてるようにしか思えなくて、笑顔の奥にこの間にもキョーコが帰ったらどうするんだ!!とイライラとした気持ちを必死で押し込めていた。
「あ、敦賀…さん?」
そんな中で、漸く片付け終えた時、タイミング良く遠慮気味なキョーコの声が背後から聞こえ、蓮は反射的に振り返った。
「あぁ!最上さん!!良かった!まだ居てくれたんだ!!」
蓮はその姿を瞳に映すと先程までのイライラが一気に分散し、心からの喜びを笑顔で表した。
慌てて駆け寄り、思わずぎゅうっとキョーコの存在を確かめるように抱きしめる。
「帰っちゃってたらどうしようかと思ってたよ。来てみたら君はいないし…。あぁ!でも会えて良かった!!嬉しいよ。」
「あわっ!!つ、敦賀さん!!ちょっと…あの…」
突然のハグに驚いたのかキョーコの身体は強張り、顔が真っ赤になった。それが本当に可愛らしくて我慢して手伝っててよかったと心から思った。
「それに…ちゃんと俺が来るの待っててくれたんだ?」
「それは…その…一応、約束も…しておりましたので…。」
「うん。そうだよね。約束したもんね。」
蓮はニコニコと上機嫌だ。
「あ、あの…敦賀さん…?」
「うん?」
「これは…流石に、あの、は、恥ずかしいんですけど…」
「え…?あ、あぁ!ごめん!!つい…」
キョーコに指摘されるまで抱き締めてしまっていたことに気付かなくて蓮は慌てて離れた。
思わず顔が赤くなり口元を手で覆い隠し、罰が悪くて少しだけ顔をそらした。
「い、いえ…」
キョーコはキョーコで耳まで真っ赤にして下を向いてしまった。
モジモジしている姿がなんともいじらしい。
離れて漸く彼女の全体像を見ることが出来た蓮は気を取り直して満足そうな笑みを浮かべた。
「あぁ、今日の格好も凄く可愛いね。似合ってるよ。」
神々笑顔でそう言われてまたもやキョーコの顔が赤くなる。
キョーコの姿は白のニット帽にクリーム色のファーの付いた白いコート、そして白のロングブーツを合わせていて雪の妖精のように蓮の目には映った。
「あ、ありがとう、ございます…」
蓮にこの後の時間を予約したいと言われていたので、うっかり期待して精一杯のオシャレをして来たキョーコは嬉しさのあまりに胸を震わせた。
この時点でもう期待するまいと思うのは手遅れだったようだ。
「なーんだ…最上さんの彼氏なんだ…」
最後の片付けで蓮にアピールしまくっていたサンタガールが至極残念そうにそう言った。
それを聞いてキョーコの顔がまたもや真っ赤になる。
「かっ彼氏?!ち、ちが…」
否定しようとしたキョーコの腰を引き寄せて、蓮は満面の笑みを浮かべ、そのサンタガールに向き合った。
「ありがとうございました。無事、彼女に会うことが出来ました。では俺たちはこれで。これから予定がありますので…」
残されたサンタガールは苦笑するしかなく、蓮とキョーコを見送る。
「えぇ、片付け手伝ってくださってありがとうございました。最上さんもまたね?お疲れ様。」
「は、はい!お疲れ様でした!!」
キョーコも礼儀正しくぺこりとお辞儀をして別れを告げ、蓮に促されるまま、歩き始めたのだった。
(続く)
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なぜ中編?!そしてこの後どう持って行くか全く決まってないという…!!
キョコ誕は明日なのに!!
皆さんはこの後どんなデートがお好みですか??