前回のこぼれ話②は短時間ですが間違って二重でアップしちゃってました。慌てて削除しましたが、その間にイイねして下さってた皆様、申し訳ございません。そしてありがとうございました!!
何故二重アップになったのかは原因不明ですが、気をつけます!!
さて、王子と愛しの姫のお話はこれで終わり…かな?
お楽しみ頂けたら幸いです。
*****
こぼれ話その③☆メイド・カナエの日常
「クオン様、それに姫様、食事の用意が出来ましたよ。」
「あ、モー子さぁぁん!!おはよう!!」
入ってきたメイドの顔を見てキョーコの顔がぱぁっと輝きました。
もー!という文句の言葉が口癖のカナエをキョーコは親しみを込めてモー子さんとメイド時代から呼んでいたのです。
そう、何を隠そうカナエはキョーコと同じくクオン付きの三人のメイドの内の一人だったのです。
キョーコの半年遅れでカナエが…またその更に一年後には、チオリというメイドが配属され、年齢も近いこともあって三人のメイドは仲良く仕事に勤しんでいたのです。
「おはようございます。さぁ、どうぞこちらへ。」
キョーコがクオンの唯一人の姫君となってからはカナエはずっとこの調子です。
表情を変えず淡々と業務的に話すカナエにキョーコは悲しそうに眉を下げました。
「キョーコ、起きれる?」
「ん…。なんとか…。」
まだキョーコはベッドの中で裸のままクオンに巻きつかれていたので、カナエに見られることは恥ずかしかったのですが、ここ最近はお約束の朝の光景となっておりました。
初めてカナエがクオンのベッドの中にキョーコを見つけた時、驚き過ぎて固まってしまいました。
キョーコが出てこない為、キョーコの代わりにクオンの部屋を訪れたカナエは王子であるクオンの腕の中で気を失うように眠っているキョーコの姿を見つけたのです。
シーツで体は隠されていましたが剥き出しになったキョーコの肩とそれを抱くクオンの姿はどこからどう見ても二人ともシーツの下は裸のままで、愛し合った名残が生々しく大きなベッドを中心に残っております。
愛おしそうにキョーコを愛でていたクオンはカナエが入ってきて固まっていることに気付くと、口元に人差し指を立て、しぃっとジェスチャーをしました。
色っぽいそのクオンの仕草と、キョーコがそんな男の手中に落ちたことを知ったカナエは頭が真っ白になり呆然としてしまいました。
なんとか気を失わずに済んだのは、ここが王子の部屋で今目の前に王子がいるという事実をしっかりと認識していたからでした。
どういう経緯でキョーコがクオンと関係を持ってしまったのかはわかりませんが、これは由々しき事態です。
カナエの心中は複雑でした。
キョーコの運命はこれからどうなってしまうのでしょうか?
そしてこの王子はこれからどうするつもりなのでしょう。
第一、キョーコはあの厨房のドラ息子と婚約成立していたはずです。
親が決めたことだからと言いながらプロポーズを受けたことを本人の口から聞いたのは記憶違いでなければ、昨日のことだったはずです。
訳が分からず言葉も出ないで凝視してくるカナエにクオンは苦笑を漏らし、近寄るように言いました。
呼ばれるまま、カナエはフラフラと近寄ります。
もしかしたら他人の空似かもと近づいて確認してみましたが、クオンの胸に頬を預けて眠っているのはキョーコに間違いがありません。
今すぐ叩き起こして説明させたくてたまりませんでしたが、クオンが守るように肩を抱いている姿を見てグッと耐えます。
「お願いがあるんだ。」
キョーコを起こさないように声を抑えて、クオンが囁きますがその声は掠れ気味で聞き取りにくく、カナエは眉を顰めます。
「父と母をここへ呼んでくれ。」
「……今、ここに…ですか?」
「あぁ。すぐに頼む。」
カナエは気が進みませんでしたが、言われた通りに呼びに行くしかありませんでした。
最後にチラリとキョーコの顔を盗み見ます。
一体キョーコにはどんな刑が下されるでしょうか…一介のメイドがどちらから誘ったにせよ王子に手を出したとなればとんでもない問題になりかねません。国を追われるだけならまだいいかもしれません。ですがもし、処刑なんてことになったら…?そう思うと王様を呼びに行く足が止まりそうになります。
クオンはどういうつもりで王を呼べと言ったのでしょう?
現場を抑えさせてそのまま罪人として突き出す気なのでしょうか?
クオンがキョーコをどうするつもりなのかわからずにカナエは唇を噛み締めたのです。
国王と王妃にクオンが呼んでいることを伝えれば二人は歓び勇んで嵐の勢いでクオンの部屋にすっ飛んで行ってしまいました。
呆然としていたカナエですが、すぐに気を取り直し、慌ててまたクオンの部屋へ戻ります。
案の定開きっぱなしになっている扉をみつけて、少し迷いましたが仕事をしているかのように見せかけてクオンの部屋へ入り、扉をそっと閉めました。
キョーコの処分が気になってとてもとても他の仕事なんて手が付きません。
もしも最悪の事態になったらなんとか隙をみてあの子を逃がさなければとカナエは決意していたのです。
「まぁ!それじゃあこの子が…!」
「まさかキョーコがお前の探していた姫君とはっ…!!」
カナエは耳を疑いました。
ーーー姫君?!クオン様が探していたあの姫君がキョーコだというの?!
「あなた!すぐに歓迎の用意をしましょう!!」
「そうだな!!とりあえず、風呂に入れてやれ!そのままじゃ可哀想だ。」
「そうよ!女の子がそんな状態のままじゃいけないわ!カナエ!」
「は、はい!!」
「今すぐお風呂の準備を!」
「わ、わかりました!」
「あ!ちょっと待って!あとチオリにメイドをできるだけ集めてここの隣の部屋に来るように呼んでちょうだい!!」
「はい!すぐにっ!」
慌てて部屋を飛び出そうとしたカナエの耳に国王の嬉しそうな声が残りました。
「これでようやくクオンの妃探しも終わりだな!」
部屋を出たカナエの足が止まりました。
“妃探しの終わり”それはキョーコが妃に選ばれたということです。
「嘘でしょう…?」
一夜にしてひっくり返った関係。
一体何がどうなってこんな事態になったのか…極刑は免れたようですが事態の大きさについていけません。
カナエはキャパオーバーを訴え頭痛を起こす頭を押さえたのでした。
チオリを呼び王妃の伝言を伝えると、クオン専用のお風呂にお湯を張ります。
チオリも訳が分からぬまま、メイドをかき集めクオンの隣の部屋へいき、指示通りに部屋のメイキングし始めました。
王妃自ら指示を飛ばし、家具を運び込みます。
その間にお湯の準備が出来たというカナエの言葉を受けてクオンは風呂にキョーコを入れるため、お姫様抱っこで抱え上げます。
「ご苦労様、じゃあちょっと入ってくるね。」
「く、クオン様?!あの…」
どうやら王子自らがキョーコを風呂に入れる気満々なようで、カナエは戸惑い声をかけましたが、その言葉はクオンに遮られました。
「あぁ、そうだ。部屋の換気と…あとシーツの取り替えをお願い出来るかな?」
有無を言わさぬ笑顔でニッコリと微笑まれて言われてしまえば、カナエは従うしかありません。
「…はい。かしこまりました。」
カナエは仕方なく恭しく頭を下げて、ウキウキと風呂場に向かうクオンを見送ったのでした。
そんな衝撃的な経験をしたからか、そのあとはカナエもキョーコとどう接していいかわからずにここ数日、気持ちを持て余しておりました。
聞きたいことはいっぱいあるのに、身分が変わってしまい、気軽に口をきける相手ではなくなってしまったのです。
王子に甲斐甲斐しく世話を焼かれるキョーコは見るに耐えられず、バスローブを羽織った姿を見ないように視線を下げます。
二人が食卓に着いたのをみてカナエは退出の挨拶を述べました。
「それでは私はこれで…」
「待って!モー子さん!!」
「…何か、まだ御用でしょうか?」
「あの…あのね!お願い!!今までみたいに話したいの!!この部屋の中だけでもいいから…私にそんなかしこまったりしないで!!」
勇気を絞って言ったのでしょう。キョーコは涙ながらに訴え、声を震わせていました。
キョーコも元メイドとして弁えているはずです。恐らく立場が逆ならばカナエのような態度をとっていたに違いありません。
それはメイドとしての誇りがあるからです。
カナエは一瞬鳩が豆鉄砲食らったような顔になりましたが、ハッと気付いてその顔を引き締め直します。
「姫様、それはーー」
なりません。そう続くはずだった言葉はクオン王子に遮られました。
「カナエ、是非そうしてくれ。俺も二人がどんな風に言葉をかわしてたのか見たいんだ。俺のことは気にしなくていい。」
「っ!!しかし…!」
「カナエ、これは命令だ。キョーコと本音で自由に会話すること。この部屋の中だけはそれを許す。」
クオンの言葉に、カナエは顔をくしゃっとゆがませます。
「あーーーーもーーーーーー!!!!」
カナエの中で抑えていた感情が一気に爆発しました。
突然のカナエの変貌にクオンは驚き目を丸くし、キョーコは嬉しそうに目を輝かせました。
「本当にあんたって子はっ!!」
「モー子さんっ!!」
「私が、どんな気持ちでいたとっ!!」
普段そんな姿を見せないカナエの目には涙が滲んでいました。
キョーコの目にも涙が溢れます。
「ごめんなさい!ごめんなさい!モー子さんっ!!」
「ちゃんと説明しなさいよね!!なんでこんなことになってんのよ!!毎回毎回、素っ裸のあんた達を起こさなきゃいけないこっちの身にもなりなさいっての!!」
口を開けば文句がマシンガンのごとく飛び出すカナエ。
それを見て謝り倒すキョーコ。
「ぷはっ!」
その姿が何だかくすぐったくてクオンは暫らく耐えようとしてたいのですが、とうとう絶えられずに、吹き出していました。
二人がピタッと動きを止めてクオンを見ます。
「ぷっくく…ごめ…ちょっと思ってたより強烈で…」
王子として育ったクオンはこんな風に本音をぶつけ合える友人はいませんでした。
クオンの周りにはいつも静かで壁があるかのように皆が振る舞うのです。
キョーコに向かって今まで溜まっていた思いを一気に吐き出したカナエとキョーコのやり取りは新鮮なものとしてクオンの目に映りました。
中々笑いが止まらないクオンに、カナエは照れてそっぽを向き、キョーコは心配そうに覗き込みます。
「大丈夫ですか?クオン様…」
「ん…ごめっ。くくく。大丈夫。」
「王子が本音をぶつけて良いって言ったんじゃないですか。」
ふてくされてカナエが言うと、クオンも必死に笑いを噛み殺しながら答えます。
「いや…うん。良いものを見せてもらったよ。キョーコの困った顔もやっぱり可愛いいし、新鮮で良かったよ。こんな風に本音をぶつけてもらえるなんて、キョーコは良い友達を持ってるんだね。カナエ、これからもキョーコをよろしく頼むよ。」
クスクスと幸せそうに笑うクオンから言われた言葉に、カナエとキョーコは目を合わせカナエは真っ赤な顔で慌ててソッポを向き、キョーコも照れたように笑います。
「わざわざ頼まれなくても、キョーコは私の親友ですから!ご心配なく。」
「え!!モー子さん!!親友って言った?!今親友って言ったよね?!」
キラキラと目を輝かせてキョーコがカナエに詰め寄ると、カナエは真っ赤な顔で怒ります。
「あーもー!!うるさいわね!!言葉のアヤよ!!うっとおしいわね!離れなさい!!」
「モー子さぁぁん!!やぁん!照れてるの?!」
「う、うるさいったら!!」
「やぁん!もうモー子さん、だぁぁぁいすきよぉ~~!!」
キョーコの言葉に今までニコニコしながら楽しそうに見守っていたクオンがピクリと反応し笑顔のまま固まりました。
そしてキョーコの意識をこちらに取り戻すためクオンはキョーコに呼びかけました。
「キョーコ…?」
カナエとじゃれていたキョーコはクオンの空気が変わったことに気付かず振り返りましたが、振り返って後悔しました。
クオンの笑顔がキラキラとキョーコに突き刺さります。
先ほどまでとの違いに何が彼の逆鱗に触れたのかわからずに、キョーコとカナエは戸惑いました。
「…く、クオン様…な、何か?」
キョーコが恐る恐る尋ねます。
するとクオンがゆっくりとキョーコに近付き、その体を後ろからそっと抱き締めました。
そしてキョーコの耳元で小さく囁きます。
「キョーコの大好き…俺まだもらってない気がするんだけど…?」
囁かれた言葉を聞いてキョーコはボフンと真っ赤になってしまいました。
「へ?なっ?!な…!」
言いながらするりとクオンの手がバスローブの裾から侵入して来ます。
カナエの目の前での行為にキョーコは真っ赤な顔のまま驚いて固まってしまいました。
「え?!ちょっ…クオ…さ、まっ!」
「俺よりもカナエがいいの…?」
大きな手がゆっくりと胸を弄びます。
「や…やめ…んぁっ!」
「キョーコの大好きは俺のだよね?…ね?」
「クオン…さま…や…ぁ」
ーーーな、なんなのよ?!まさか嫉妬?!嫉妬なの?!
カナエはクオンの心の狭さに驚き声も出ません。
快感に火をつけられ、女の顔をしてガクガクと膝を揺らし始めたキョーコの唇をクオンが貪ります。
目の前で突然始まった二人の行為にカナエは真っ赤になってどうしていいかわからずに真っ赤になってしまいました。
「ふぁっ…」
「ね?キョーコが大好きなのは誰なのかな?」
「…っくお…さま…で…」
そんなクオンの言葉とキョーコの返事に、カナエの中で何かがブチっと音を立てて千切れました。
「こんの…バカップル!!!!いい加減にしなさいよ!!くだらないこと言ってないで、さっさと朝食食べなさいよね!!もぉぉー!!!!」
この日を境にカナエがクオンにもガンガンと遠慮なくものを言うようになったとかならなかったとか…。
カナエと同じくクオン付きのメイドであるチオリとキョーコの代わりにクオン付きのメイドとして入ったイツミも部屋の中だけでは本音で話す許可をもらい、交代にキョーコの元を訪れては楽しげな声を響かせて仕事に励むのでした。
夜になればキョーコがベッド中で楽しかった昼間の出来事を体を重ねながらクオンに話して聞かせます。
キョーコの楽しそうな声と言葉に時折嫉妬を滲ませながらも、愛おしそうにクオンはキョーコを愛でるのです。
「もーーーー!!いい加減にキョーコを離しなさいよ!!この色ボケ王子!!」
今日もまた元気なカナエの声がクオンの寝室に響くのでした。
おしまい。
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*****
最期までお付き合い頂きありがとうございました!!
たくさんの拍手と、いいね。に励まされ、そして毎回こまめにコメント下さった皆様、本当に大好きです!!ありがとうございました!!!!
お陰で最期まで楽しく書くことが出来ました♪
クオン様はやっぱりカナエさんにヤキモチやいちゃうようで、毎回見せ付けないと気が済まないようですね(笑)
きっと賑やかな王室なんだろうなーと思います(笑)
何故二重アップになったのかは原因不明ですが、気をつけます!!
さて、王子と愛しの姫のお話はこれで終わり…かな?
お楽しみ頂けたら幸いです。
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こぼれ話その③☆メイド・カナエの日常
「クオン様、それに姫様、食事の用意が出来ましたよ。」
「あ、モー子さぁぁん!!おはよう!!」
入ってきたメイドの顔を見てキョーコの顔がぱぁっと輝きました。
もー!という文句の言葉が口癖のカナエをキョーコは親しみを込めてモー子さんとメイド時代から呼んでいたのです。
そう、何を隠そうカナエはキョーコと同じくクオン付きの三人のメイドの内の一人だったのです。
キョーコの半年遅れでカナエが…またその更に一年後には、チオリというメイドが配属され、年齢も近いこともあって三人のメイドは仲良く仕事に勤しんでいたのです。
「おはようございます。さぁ、どうぞこちらへ。」
キョーコがクオンの唯一人の姫君となってからはカナエはずっとこの調子です。
表情を変えず淡々と業務的に話すカナエにキョーコは悲しそうに眉を下げました。
「キョーコ、起きれる?」
「ん…。なんとか…。」
まだキョーコはベッドの中で裸のままクオンに巻きつかれていたので、カナエに見られることは恥ずかしかったのですが、ここ最近はお約束の朝の光景となっておりました。
初めてカナエがクオンのベッドの中にキョーコを見つけた時、驚き過ぎて固まってしまいました。
キョーコが出てこない為、キョーコの代わりにクオンの部屋を訪れたカナエは王子であるクオンの腕の中で気を失うように眠っているキョーコの姿を見つけたのです。
シーツで体は隠されていましたが剥き出しになったキョーコの肩とそれを抱くクオンの姿はどこからどう見ても二人ともシーツの下は裸のままで、愛し合った名残が生々しく大きなベッドを中心に残っております。
愛おしそうにキョーコを愛でていたクオンはカナエが入ってきて固まっていることに気付くと、口元に人差し指を立て、しぃっとジェスチャーをしました。
色っぽいそのクオンの仕草と、キョーコがそんな男の手中に落ちたことを知ったカナエは頭が真っ白になり呆然としてしまいました。
なんとか気を失わずに済んだのは、ここが王子の部屋で今目の前に王子がいるという事実をしっかりと認識していたからでした。
どういう経緯でキョーコがクオンと関係を持ってしまったのかはわかりませんが、これは由々しき事態です。
カナエの心中は複雑でした。
キョーコの運命はこれからどうなってしまうのでしょうか?
そしてこの王子はこれからどうするつもりなのでしょう。
第一、キョーコはあの厨房のドラ息子と婚約成立していたはずです。
親が決めたことだからと言いながらプロポーズを受けたことを本人の口から聞いたのは記憶違いでなければ、昨日のことだったはずです。
訳が分からず言葉も出ないで凝視してくるカナエにクオンは苦笑を漏らし、近寄るように言いました。
呼ばれるまま、カナエはフラフラと近寄ります。
もしかしたら他人の空似かもと近づいて確認してみましたが、クオンの胸に頬を預けて眠っているのはキョーコに間違いがありません。
今すぐ叩き起こして説明させたくてたまりませんでしたが、クオンが守るように肩を抱いている姿を見てグッと耐えます。
「お願いがあるんだ。」
キョーコを起こさないように声を抑えて、クオンが囁きますがその声は掠れ気味で聞き取りにくく、カナエは眉を顰めます。
「父と母をここへ呼んでくれ。」
「……今、ここに…ですか?」
「あぁ。すぐに頼む。」
カナエは気が進みませんでしたが、言われた通りに呼びに行くしかありませんでした。
最後にチラリとキョーコの顔を盗み見ます。
一体キョーコにはどんな刑が下されるでしょうか…一介のメイドがどちらから誘ったにせよ王子に手を出したとなればとんでもない問題になりかねません。国を追われるだけならまだいいかもしれません。ですがもし、処刑なんてことになったら…?そう思うと王様を呼びに行く足が止まりそうになります。
クオンはどういうつもりで王を呼べと言ったのでしょう?
現場を抑えさせてそのまま罪人として突き出す気なのでしょうか?
クオンがキョーコをどうするつもりなのかわからずにカナエは唇を噛み締めたのです。
国王と王妃にクオンが呼んでいることを伝えれば二人は歓び勇んで嵐の勢いでクオンの部屋にすっ飛んで行ってしまいました。
呆然としていたカナエですが、すぐに気を取り直し、慌ててまたクオンの部屋へ戻ります。
案の定開きっぱなしになっている扉をみつけて、少し迷いましたが仕事をしているかのように見せかけてクオンの部屋へ入り、扉をそっと閉めました。
キョーコの処分が気になってとてもとても他の仕事なんて手が付きません。
もしも最悪の事態になったらなんとか隙をみてあの子を逃がさなければとカナエは決意していたのです。
「まぁ!それじゃあこの子が…!」
「まさかキョーコがお前の探していた姫君とはっ…!!」
カナエは耳を疑いました。
ーーー姫君?!クオン様が探していたあの姫君がキョーコだというの?!
「あなた!すぐに歓迎の用意をしましょう!!」
「そうだな!!とりあえず、風呂に入れてやれ!そのままじゃ可哀想だ。」
「そうよ!女の子がそんな状態のままじゃいけないわ!カナエ!」
「は、はい!!」
「今すぐお風呂の準備を!」
「わ、わかりました!」
「あ!ちょっと待って!あとチオリにメイドをできるだけ集めてここの隣の部屋に来るように呼んでちょうだい!!」
「はい!すぐにっ!」
慌てて部屋を飛び出そうとしたカナエの耳に国王の嬉しそうな声が残りました。
「これでようやくクオンの妃探しも終わりだな!」
部屋を出たカナエの足が止まりました。
“妃探しの終わり”それはキョーコが妃に選ばれたということです。
「嘘でしょう…?」
一夜にしてひっくり返った関係。
一体何がどうなってこんな事態になったのか…極刑は免れたようですが事態の大きさについていけません。
カナエはキャパオーバーを訴え頭痛を起こす頭を押さえたのでした。
チオリを呼び王妃の伝言を伝えると、クオン専用のお風呂にお湯を張ります。
チオリも訳が分からぬまま、メイドをかき集めクオンの隣の部屋へいき、指示通りに部屋のメイキングし始めました。
王妃自ら指示を飛ばし、家具を運び込みます。
その間にお湯の準備が出来たというカナエの言葉を受けてクオンは風呂にキョーコを入れるため、お姫様抱っこで抱え上げます。
「ご苦労様、じゃあちょっと入ってくるね。」
「く、クオン様?!あの…」
どうやら王子自らがキョーコを風呂に入れる気満々なようで、カナエは戸惑い声をかけましたが、その言葉はクオンに遮られました。
「あぁ、そうだ。部屋の換気と…あとシーツの取り替えをお願い出来るかな?」
有無を言わさぬ笑顔でニッコリと微笑まれて言われてしまえば、カナエは従うしかありません。
「…はい。かしこまりました。」
カナエは仕方なく恭しく頭を下げて、ウキウキと風呂場に向かうクオンを見送ったのでした。
そんな衝撃的な経験をしたからか、そのあとはカナエもキョーコとどう接していいかわからずにここ数日、気持ちを持て余しておりました。
聞きたいことはいっぱいあるのに、身分が変わってしまい、気軽に口をきける相手ではなくなってしまったのです。
王子に甲斐甲斐しく世話を焼かれるキョーコは見るに耐えられず、バスローブを羽織った姿を見ないように視線を下げます。
二人が食卓に着いたのをみてカナエは退出の挨拶を述べました。
「それでは私はこれで…」
「待って!モー子さん!!」
「…何か、まだ御用でしょうか?」
「あの…あのね!お願い!!今までみたいに話したいの!!この部屋の中だけでもいいから…私にそんなかしこまったりしないで!!」
勇気を絞って言ったのでしょう。キョーコは涙ながらに訴え、声を震わせていました。
キョーコも元メイドとして弁えているはずです。恐らく立場が逆ならばカナエのような態度をとっていたに違いありません。
それはメイドとしての誇りがあるからです。
カナエは一瞬鳩が豆鉄砲食らったような顔になりましたが、ハッと気付いてその顔を引き締め直します。
「姫様、それはーー」
なりません。そう続くはずだった言葉はクオン王子に遮られました。
「カナエ、是非そうしてくれ。俺も二人がどんな風に言葉をかわしてたのか見たいんだ。俺のことは気にしなくていい。」
「っ!!しかし…!」
「カナエ、これは命令だ。キョーコと本音で自由に会話すること。この部屋の中だけはそれを許す。」
クオンの言葉に、カナエは顔をくしゃっとゆがませます。
「あーーーーもーーーーーー!!!!」
カナエの中で抑えていた感情が一気に爆発しました。
突然のカナエの変貌にクオンは驚き目を丸くし、キョーコは嬉しそうに目を輝かせました。
「本当にあんたって子はっ!!」
「モー子さんっ!!」
「私が、どんな気持ちでいたとっ!!」
普段そんな姿を見せないカナエの目には涙が滲んでいました。
キョーコの目にも涙が溢れます。
「ごめんなさい!ごめんなさい!モー子さんっ!!」
「ちゃんと説明しなさいよね!!なんでこんなことになってんのよ!!毎回毎回、素っ裸のあんた達を起こさなきゃいけないこっちの身にもなりなさいっての!!」
口を開けば文句がマシンガンのごとく飛び出すカナエ。
それを見て謝り倒すキョーコ。
「ぷはっ!」
その姿が何だかくすぐったくてクオンは暫らく耐えようとしてたいのですが、とうとう絶えられずに、吹き出していました。
二人がピタッと動きを止めてクオンを見ます。
「ぷっくく…ごめ…ちょっと思ってたより強烈で…」
王子として育ったクオンはこんな風に本音をぶつけ合える友人はいませんでした。
クオンの周りにはいつも静かで壁があるかのように皆が振る舞うのです。
キョーコに向かって今まで溜まっていた思いを一気に吐き出したカナエとキョーコのやり取りは新鮮なものとしてクオンの目に映りました。
中々笑いが止まらないクオンに、カナエは照れてそっぽを向き、キョーコは心配そうに覗き込みます。
「大丈夫ですか?クオン様…」
「ん…ごめっ。くくく。大丈夫。」
「王子が本音をぶつけて良いって言ったんじゃないですか。」
ふてくされてカナエが言うと、クオンも必死に笑いを噛み殺しながら答えます。
「いや…うん。良いものを見せてもらったよ。キョーコの困った顔もやっぱり可愛いいし、新鮮で良かったよ。こんな風に本音をぶつけてもらえるなんて、キョーコは良い友達を持ってるんだね。カナエ、これからもキョーコをよろしく頼むよ。」
クスクスと幸せそうに笑うクオンから言われた言葉に、カナエとキョーコは目を合わせカナエは真っ赤な顔で慌ててソッポを向き、キョーコも照れたように笑います。
「わざわざ頼まれなくても、キョーコは私の親友ですから!ご心配なく。」
「え!!モー子さん!!親友って言った?!今親友って言ったよね?!」
キラキラと目を輝かせてキョーコがカナエに詰め寄ると、カナエは真っ赤な顔で怒ります。
「あーもー!!うるさいわね!!言葉のアヤよ!!うっとおしいわね!離れなさい!!」
「モー子さぁぁん!!やぁん!照れてるの?!」
「う、うるさいったら!!」
「やぁん!もうモー子さん、だぁぁぁいすきよぉ~~!!」
キョーコの言葉に今までニコニコしながら楽しそうに見守っていたクオンがピクリと反応し笑顔のまま固まりました。
そしてキョーコの意識をこちらに取り戻すためクオンはキョーコに呼びかけました。
「キョーコ…?」
カナエとじゃれていたキョーコはクオンの空気が変わったことに気付かず振り返りましたが、振り返って後悔しました。
クオンの笑顔がキラキラとキョーコに突き刺さります。
先ほどまでとの違いに何が彼の逆鱗に触れたのかわからずに、キョーコとカナエは戸惑いました。
「…く、クオン様…な、何か?」
キョーコが恐る恐る尋ねます。
するとクオンがゆっくりとキョーコに近付き、その体を後ろからそっと抱き締めました。
そしてキョーコの耳元で小さく囁きます。
「キョーコの大好き…俺まだもらってない気がするんだけど…?」
囁かれた言葉を聞いてキョーコはボフンと真っ赤になってしまいました。
「へ?なっ?!な…!」
言いながらするりとクオンの手がバスローブの裾から侵入して来ます。
カナエの目の前での行為にキョーコは真っ赤な顔のまま驚いて固まってしまいました。
「え?!ちょっ…クオ…さ、まっ!」
「俺よりもカナエがいいの…?」
大きな手がゆっくりと胸を弄びます。
「や…やめ…んぁっ!」
「キョーコの大好きは俺のだよね?…ね?」
「クオン…さま…や…ぁ」
ーーーな、なんなのよ?!まさか嫉妬?!嫉妬なの?!
カナエはクオンの心の狭さに驚き声も出ません。
快感に火をつけられ、女の顔をしてガクガクと膝を揺らし始めたキョーコの唇をクオンが貪ります。
目の前で突然始まった二人の行為にカナエは真っ赤になってどうしていいかわからずに真っ赤になってしまいました。
「ふぁっ…」
「ね?キョーコが大好きなのは誰なのかな?」
「…っくお…さま…で…」
そんなクオンの言葉とキョーコの返事に、カナエの中で何かがブチっと音を立てて千切れました。
「こんの…バカップル!!!!いい加減にしなさいよ!!くだらないこと言ってないで、さっさと朝食食べなさいよね!!もぉぉー!!!!」
この日を境にカナエがクオンにもガンガンと遠慮なくものを言うようになったとかならなかったとか…。
カナエと同じくクオン付きのメイドであるチオリとキョーコの代わりにクオン付きのメイドとして入ったイツミも部屋の中だけでは本音で話す許可をもらい、交代にキョーコの元を訪れては楽しげな声を響かせて仕事に励むのでした。
夜になればキョーコがベッド中で楽しかった昼間の出来事を体を重ねながらクオンに話して聞かせます。
キョーコの楽しそうな声と言葉に時折嫉妬を滲ませながらも、愛おしそうにクオンはキョーコを愛でるのです。
「もーーーー!!いい加減にキョーコを離しなさいよ!!この色ボケ王子!!」
今日もまた元気なカナエの声がクオンの寝室に響くのでした。
おしまい。
↑こんなお話も好きよ?という方は拍手お願いします~♪
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最期までお付き合い頂きありがとうございました!!
たくさんの拍手と、いいね。に励まされ、そして毎回こまめにコメント下さった皆様、本当に大好きです!!ありがとうございました!!!!
お陰で最期まで楽しく書くことが出来ました♪
クオン様はやっぱりカナエさんにヤキモチやいちゃうようで、毎回見せ付けないと気が済まないようですね(笑)
きっと賑やかな王室なんだろうなーと思います(笑)