今日は母の日。
ふと、幼い頃から言われ続けて来た母の言葉を思い出しました。「大きくなって外国に行けるようになったら、堂々と『竹取物語=かぐや姫』の話ができるような女性になるのよ」――そう言いながら、たくさんの絵本を読み聞かせ、美しいレコードを聴かせながら私を育ててくれた母。
そんな母はいま、難病と闘っています。介護が必要な状況なので、私も不規則な仕事の合間ではありますが、母をお風呂に入れたり、病院に連れて行ったり、食事を届けたりしています。どんなに具合が悪い時でもうっすらとお化粧をし、こぎれいに身支度を整えている美しい人。身体は不自由でも、心までは決して不自由にはならないと、底抜けに明るい気丈な母からは「勝つことよりも、負けない人生」を教えられて来ました。今思えば母の口からは、人の悪口や愚痴などを終ぞ一度も聞いたことがありません。

実家に帰ると、いつもパリッとアイロンのかかった清潔なテーブルクロスと、庭から摘みたての花が飾られてあるのも印象的です。たとえどんなに忙しくても、自分の生活に四季折々の句読点を打っていくということを教えてくれたのも母でした。暮らしの中に歳時記を持つということ。母は、こうした「季節感」を大事にする心を、いつも私たち姉弟に教えてくれていたように思います。そんな無冠の母の頭上には、世界中の花を集めて冠を作っても足りないくらいです。今日はカーネーションの変わりに、とびっきりの笑顔をデリバリーして来ようと思います。