週末、末広町の3331で行われた、旅人・エッセイストのたかのてるこ さんの講演会に行って来ました。テーマは「たかのてるこ式 旅の魅力&映像の発信力のヒント」。旅好き、映像好きの私にとっては、まさに夢のような、贅沢なセミナーでした。たかのてるこさんは長年に渡って、私の「会いたい人リスト」の中のお一人だったので、やっと念願叶ってお会いすることができ、感激もひとしお。講演会終了後のサイン会では、熱烈なハグまでしていただき、(嬉しすぎて)失神しそうになりました(笑)。

たかのてるこさんは、東映のTVプロデューサーをされながら、プライベートで旅した映像を自らテレビ局に持ち込み、旅番組「銀座OL世界をゆく!」(フジテレビ)を放送するなど、数々のユニークな武勇伝をお持ちの方。今まで60ヶ国を旅して来られ、自らを「地球の広報」と名乗るだけあって、外交力にも優れた非常にチャーミングな女性です。そんな旅のプロフェッショナルが、旅映像制作の舞台裏をお話して下さるというのですから、面白くないワケがありません。事実、2時間笑いっぱなしでした(笑)。私は昔から講演会ヲタクで、今まで数多くの講演会に足を運んできましたが、こんなに面白い話を聴くのは生まれて初めてです(笑)。今はプロデューサーとして、講演会やトークショーを手掛ける立場ですが、いつか私のトークショーにも、たかのてるこさんをゲストにお迎えさせていただきたいと思っています。

今回の講演会は2時間でしたが、何週間にも渡って世界中を旅して帰って来たような不思議な感覚が残っています。たかのさんの天才的なトークと共に、随所にレアな旅の映像を見せていただいたおかげで、私たちは東京に居ながらにして、インドやモロッコ、チベットやルーマニアを旅することができました。インドのカーペット屋の兄弟。ガンジス河でのバタフライ。モロッコでのラマダン。前世を覚えているというチベットの少女。一切言葉の通じないジプシーたち――全てが台本のない、正真正銘の“ガチの旅”だったからでしょうか。いつしか、これらを自分たちが体験して来たかのような、不思議な既視感に包まれたのを覚えています。そして、これこそが「たかのてるこ式」なのだと合点した時、ますます「旅」と「人間」と「たかのてるこ」というヒトが大好きになりました。

そういえば数年前、私もミラノコレクションに取材に行った時、元テレビ局のディレクターをしていた友人に無理を言って同行してもらい、私の旅の工程すべてを映像に納めてもらったことがあります。自分の行動記録を映像に残し、発信することの醍醐味は、その時知ったのかも知れません。以来、今度は「撮る側」となって、国の内外を問わず、女性の活躍を写真や映像に納める仕事をさせていただています。そう考えると、人生ってやっぱり「ご縁」でできているのかも知れませんね。ちなみに、たかのてるこさんも、ご友人である吉本ばななさんから「動くてるちゃんを映像にすれば、天職になる!」と、カメラマンと二人で旅に出ることを勧められ、あの一人旅を記録した、「銀座OL世界をゆく!」シリーズが誕生したそうです。

「旅に出る」ということについて、たかのさんはこう仰っています。「恐怖心に打ち勝ち、固定観念に支配されている自分から解き放たれること」なのだと。「無理に決まっている」「そんなことできるワケがない」という固定観念からの解放――。彼女の話を聴いていると、「不信」とか「不安」とか「不満」とか、すべてが一切合財吹き飛んでいきます。自分の価値観が全てではないということを、とことん思い知るための旅――それは、日本を出てみて初めて磨かれていくのだそうです。そして最後に、こんな言葉のギフトも贈って下さいました。「(起こってしまった)過去の事実は変えられないけれど、過去の意味は変えられる」と。私も久しぶりに、旅に出たくなりました。