心豊かに年齢を重ねて来た女性にとって、年齢は「信頼」となり、「個性」へと変わっていく――そう確信したのは、イタリアでの旅先でした。
当時、ミラノコレクションの取材でミラノを訪れていた私は、40代に入ったばかり。大人の階段を一段ずつ上って行くことに、少々不安や戸惑いを覚え始めた時期でもありました。
そんな時、年齢を重ねることで、自分流のスタイルを確立している、多くの魅力的なミラネーゼたちと出逢って来ることができたのです。
とにかく、道行く一人一人の背中に、洗練された大人の女性の物語を感じました。カフェやレストランでもそう。すっきりと背筋を伸ばし、ひとり悠然と食事をしている姿は、皆一様に美しく、自信に満ち溢れていました。借り物ではない自分自身を生きている、という自信。大人の女の背中には、その人が積み重ねてきた知性や教養までもが可視化されてしまうものなのでしょうか。人の視線に磨かれるとうことも、美しい大人になるためのレッスンなのかも知れません。

つい最近のこと。病院の待合室で、ある一枚のポスターに目が留まりました。そこには、息を呑むほどに美しい背中の女性が写っていたのです。桃井かおりさんでした。63歳とは思えない、絵画のような美しい背中。まさに、背中に物語のある女性とは、彼女のような人のことを言うのだと思いました。「美は、気合!」と語る桃井さん。何だか、私たちの背筋までピンと伸びそうです。