カンボジアの旅2日目は遠出の日。
サムが一番お気に入りの場所だという滝を見せるために、山へ行くのだそうだ。
いったいどんな場所なのか、シェムリアップを離れて車で片道約2時間。赤土の道をガタゴト走った後は険しい山道になる。
この辺は内戦時代にポルポトがゲリラ活動の拠点にしていた場所だという。途中まだ地雷が撤去されていない場所もあるのだそうだ。ついつい歩く時に前に人が歩いた形跡があるところを選んでしまう。
途中サムにカンボジアの石油事情を聞いてみた。
やはりカンボジアでも最近石油が大幅な値上がりをして、国民は政府に対してとても怒っているそうだ。
値段を聞けば、1リットルあたりの価格が日本と同等もしくはそれより高い。極端に所得が低いこの国で、どうやってガソリン代を捻出するのだろう。
しかし車の窓から見える人々の暮らしは、貧しいはずなのに何だか幸せそう。
常夏の肥沃な土地なら、自給自足できるし、着る物や家で寒さから身を守る必要もないし、あるがままで生きていけるからだろうか。みんなのーんびりとして、ゆったり穏やかな雰囲気。
南国が発展しない理由はそこにもあるのかな。発展する必要がないのかな。
そして今回の旅行でとても印象的だったのが、カンボジアの犬はみんなその辺に転がっていたこと。
実際は「寝そべっている」のだけど、ここでは「転がっている」の方がふさわしい。どの犬もお腹を丸出しで所構わず転がっている。歩いている犬をあまり見なかった気がする。
サムに「これはみんな野良犬なの?」と聞こうとして、なんとなくバカな質問に思えて聞くのをやめた。
きっと飼い犬も野良犬も無いのだろうと思う。人間と犬の共存生活そのものという感じだった。
日本だってつい数年前までそうだったのに、いつの間に首輪をつけた犬しか住めない場所になってしまったのだろう。
カンボジアの犬はみんなのびのびとして、ストレスとは無縁の世界で幸せそうでした。
<プノン・クレーン>
そんなことを考えながら、到着したのはプノン・クレーンという丘陵で、かつてはアンコール遺跡建築のための石切り場だったところ。昔の人はこんな場所から人より大きな石の塊を、どうやって60キロもの道のりを運んだのだろう。古代の技術というのは不思議だらけ。
滝を見る前に、ある仏教寺院へ立ち寄ることになった。
私達も仏教徒だからということで、寺院手前の参道で蓮の花と線香を買い、サムにやり方を教えてもらって一緒に拝んできた。
お参りを済ませて、サムに言われるがまま着いて行き、階段を上って小さな入口を入ると、そこにはなんと全長9メートルもある大きな大きなブッダが横たわっていた。
実はここにこの仏像があるとは予想していなかったので、突然現れたその姿に感動は相当なものだった。
<頭の方から見た感じ> <足元の方から見た感じ>
なんとこの仏像は、高さ数十メートルもある大きな岩のてっぺんに彫られていて、それを囲うように参拝用の足場となる床や屋根が造られている。家の下から竹の子が生えてきて、家ごと持ち上げてしまった様子を思い浮かべてもらえればわかり易いかも。
恐る恐る両手をのばしてブッダが枕にしている左腕に触ってみる。
手のひらから優しくも力強い、ものすごいパワーを感じるようで、思わず涙が込み上げてきてしまった。
その後滝は見に行ったけど、そんなに印象的な場所というわけではないので省略。
<ベンメリア>
ここは地雷撤去作業のため、2001年からやっと外国人に公開されるようになり、道路ができて車で行けるようになったのは2003年とのこと。内戦の混乱ために修復の手がつけられず、まさに「密林に眠る秘境」という言葉がぴったりの場所。
車道沿いの入口から遺跡までは長い道がまっすぐのびている。
入口を管理しているおじさんにガイドがついてるのかと聞かれ、「いないし、いらない」と答えたら「いずれにしても蛇がいるから気をつけてね」と。 そして周りを見渡せば「地雷撤去済み」の立て看板が。 リアルすぎる。
遺跡に到着し、中に入っていくとそこには信じられない光景が。
思わず「ラピュタみたい!」とはしゃいでいたけど、後でここは本当に天空の城ラピュタのモデルになった場所だとういうことがわかった。
崩れた遺跡に這う太い木の根や、かつては繁栄しただろう立派な建造物が今は誰からも忘れられているという物悲しさといい、本当にあの映画の世界が現実になったような、とにかく大興奮だった。
すると後ろからゆっくりゆっくり距離を置きながら着いて来る人がいる。
前にも書いたけど、この時期観光客はほとんどいなくて、この遺跡の中でもほぼ貸切りのような状態。
密林の静けさの中、私達と一人の男性。 不気味すぎる。
すると今度は私達の前に進み、次に行く方向を指差している。
これがウワサの押し売りガイドか!(勝手に着いて来て頼んでもいないのに遺跡の説明をして、後でガイド代を請求するという手口)
その手に乗るかと最初は無視していたのだけど、途中で足場は壊れてるし、崩壊されるがままになっている遺跡の中で、どこをどう進んでいいのかもわからない。
まぁいっか、と諦めて彼に着いて行くことにした。英語が話せないらしい彼は、ただ黙ってニコニコしながら身振り手振りで静かに先導してくれる。
先導してくれるといっても、「ほんとにここ行くの??」というルートばかり。しかもよく見れば彼は革靴???
崩れた瓦礫の山を登ったり下りたり、窓のようなところをくぐっていったり、気分はまさにパズーとシータ。
後でサムに聞いたら、先ほどの男性はこの遺跡のガードマンで、観光客の安全と遺跡が壊されたり盗まれたりしないように管理している人なのだそうだ。疑ってごめんなさい。。。
ひととおり一周して出口まで来たけど、興奮冷めやらぬ私達は「もう一回、今度は自分達だけで行ってきてもいい?」と了解をもらい、また遺跡の中を探検して回った。
カンボジアで一番おすすめの遺跡は?と聞かれたら、迷わず「ベンメリア!」と答えます。
この興奮が伝えきれないのが残念です。
次回の日記がカンボジア旅行記最終号。
カンボジアの今までとは別の一面を目の当たりにする一日となります。