東洋経済オンライン より
短期間のダイエットと長期間のダイエットはノウハウが違います。
この春、東京都内で短期的にダイエットジムに通っていた40代男性のAさんは言います。
「3カ月で30キログラム痩せましたが、今はそのうち20キログラム分が戻ってしまいました。結果として10キログラムのダイエットに成功したのですが、もっとも痩せた状態は維持できていません」
テレビCMや電車の中吊り、インターネット広告や新聞の折り込みチラシなど、短期ダイエットジムの広告を目にすることが増えました。ダイエット専門のトレーナーが二人三脚でサポートしてくれること、完全個室のプライベート空間でトレーニングができること、徹底した食事指導によって成果が出やすいことなど、さまざまなメリットがあります。
一方、運動指導者として13年の活動歴、延べ1万5000回以上のダイエット指導を行ってきた筆者からは、短期間で大幅な減量をした人ほど、反動が大きく、リバウンドしやすい傾向にあると感じています。
埼玉県内で短期ダイエットジムに通った経験のある50代男性のBさんもこう話します。
「担当トレーナーから目標達成後も通い続けるように、また、サプリメントなども買うように勧められ、半年間で150万円支払いました。しかし、これ以上は金銭的に続けられません」
月会費1万円程度の一般的なフィットネスクラブと比較すると、短期ダイエットジムは高額なため、経済的な理由で続けられない人もいます。半年間で150万円というのは、一般的なビジネスパーソンの収入を考えると、継続するのはかなり難しい金額です。
「週2回の運動とはいえ、きついトレーニングで体がクタクタになるので、仕事や生活のことを考えると長くは続けられません。食事内容も3カ月だから我慢できましたが、この食事が一生続くと考えると嫌になります」
都内在住の30代男性Cさんが経験したように、短期ダイエットジムに通うと痩せるというのは間違いないようですが、利用者にとってはそのスタイルを維持することが1つの課題となります。
短期間で痩せるためのダイエットノウハウと、長期間で痩せるためのノウハウは異なります。これは同じ陸上選手でも、100m走の選手とマラソン選手では練習方法や走るフォームが違うのと同じように、ダイエットでも短期間と長期間ではノウハウが異なるのです。
リバウンドを防ぐのには大きく3つのポイントがあります。
(1)リバウンドする原因を知る
ダイエットで成果が出やすい人には共通点があります。それは明確な目標と期限が決まっていることです。たとえば結婚式を控えた花嫁さんが、ダイエットに成功しやすい人の代表です。結婚式の日程(ダイエットの期限)が決まっていることや、ウエディングドレスを着たいという具体的な目標が決まっていることが、成功しやすい理由として挙げられます。
一方で、ダイエット後にリバウンドしやすいのも花嫁さんです。新婚旅行で食べすぎたり、挙式準備のストレスから解放されてハメを外してしまったりなど、「燃え尽き症候群(バーンアウト)」になりがちです。この燃え尽き症候群になってしまうのが、まさに短期ダイエットでリバウンドしやすい人と同じなのです。
燃え尽き症候群になり、ダイエットを突然やめてしまうことが、リバウンドの原因となります。ダイエット中の停滞期と同じで大幅な減量をすると、体は急激な変化を嫌がり、元の状態に戻ろうとします。これをホメオスタシス(生体恒常性)といいます。
現状維持の本能であるホメオスタシスの機能は、1カ月で体重の5%以上落とすようなダイエットをしたときに働きます。1カ月で体重の5%というのは、体重80gの人であれば4キログラム、体重60キログラムの人であれば3キログラムということです。短期ダイエットでリバウンドする人の多くは「2カ月で15キログラム」というような大幅な減量のため、ホメオスタシスの機能が働きやすくなるのです。
生活習慣を正す
(2)消費エネルギーを増やす
燃え尽き症候群にならず、痩せた体を維持する方法があります。それは日常生活の中で消費されるエネルギーを増やすことです。スポーツジムに通って筋トレをするなど特別な運動をしなくても、日常生活の中でこまめに動くことでメタボや糖尿病を防げるということが、厚生労働省が公表しているデータからわかっています。
短期間でダイエットをしている人は、コンテストに出場するような鍛え上げられた肉体ではなく、スリムな体を目指す人が多いです。コンテストに出場するような体を作るには、長期計画による高強度のウエイトトレーニングや徹底した食事管理が必要になりますが、スリムな体を維持するには、生活習慣を正すことで可能となります。
実際に、ダイエット後に痩せた体型を維持している人は、日頃からの活動量が多い傾向にあります。車よりも自転車や歩行による移動が多かったり、エレベーターではなく階段を使います。用事があるときは自分から出向いたり、職場のコピーやファックスは自分から積極的に行ったりなど、活動量が豊富です。
逆に、リバウンドしやすい人は活動量が少ないです。徒歩5分圏内でも車を使ったり、掃除・洗濯などの家事をまとめて行います。できるだけ外出をせずに、用事は最小限に抑えます。自炊や外食よりも出前を取ったり、1週間分の食材をまとめ買いするなど、日頃からあまり動こうとしません。
一時的にダイエットジムに通って痩せたとしても、日常生活の活動量が少ないとリバウンドしやすくなってしまいます。短期ダイエット後のリバウンドが不安な方は、日常生活の中でのカロリー消費を増やしていけば、体型を維持できます。
(3)痩せ体質を作る
短期ダイエットでは主にウエイトトレーニングと食事制限を行います。筋肉をつけながら摂取カロリーを減らすので短期間でも体が変わります。しかし体質が改善されたわけではなく、あくまでも一時的なダイエットとなります。リバウンドを防ぐには表面的な体作りではなく、体の中から変えていきます。
ダイエットを成功させるには、腸内環境を整えたり、姿勢の改善、骨盤の歪み解消、基礎代謝向上など、多方面からのアプローチが必要となります。体質が変わっていなければダイエットをやめた途端にリバウンドをしてしまうからです。
たとえば腹筋運動を行ってお腹が引き締まっても、肋骨と骨盤の位置関係が正しく整っていないと、再びお腹のまわりに脂肪が付きやすくなります。スクワットなど脚のトレーニングによって下半身が引き締まっても、立ち姿勢の重心が悪いと、太ももの筋肉に必要以上に負担がかかり、ボリュームのある太い脚に戻ってしまいます。
デトックスに目を向ける
ウエイトトレーニングと食事制限以外からのアプローチとして、ダイエット後のリバウンドを防ぐには、まずデトックスに目を向けたほうがいいでしょう。なぜなら、代謝の良い体を作ることができれば、つらい筋トレや極端な食事制限をしなくても、日常生活の中で消費するエネルギーを増やすだけで体型を維持できるからです。栄養を吸収しやすい体を作り、体内のゴミを排出できるように代謝を上げていきます。
スポーツジム経験者の中には、インストラクターから「筋肉をつけて基礎代謝を上げましょう」という指導を受けたことがある人もいるでしょう。筋肉をつけることも間違いではありませんが、基礎代謝が占める割合は筋肉よりも内臓のほうが多いのです。特に女性の場合、基礎代謝の8割は内臓といわれています。短期ダイエットを行う場合は、ウエイトトレーニングや食事制限と並行して、内臓の働きにも目を向けます。
たとえば、毎日お通じが出ているかどうかを確認します。「快便はダイエット成功の証」というように、ダイエットとデトックスの関係性は高いです。人の体は、食べ物や酸素を体内に取り入れ、毒素や二酸化炭素を体外に出します。この循環を作ること(代謝を良くすること)こそ、ダイエットの成功といえます。
短期ダイエットでは高タンパク低脂質の食事を勧められます。タンパク質中心の食事になると腸内の悪玉菌が増えます。オナラの臭いが強くなったり、便秘になっていたら腸内環境が悪くなっていたりする証拠です。
腸内環境を整えるために摂りたいのが水溶性食物繊維です。昆布やわかめなどの海藻類や、キウイやバナナなどの果物に多く含まれています。水溶性食物繊維を摂ると大腸内で発酵されるビフィズス菌が増え、整腸作用があります。短期ダイエットジムでは果物は糖質とみなされ、控えるように言われる食材です。水溶性食物繊維は糖分の吸収速度をゆるやかにするので、食後の血糖値の急激な上昇を抑えてくれます。
「結婚式に向けて痩せたい」「夏に向けて腹筋を割りたい」「健康診断で良い数値を出したい」など短期ダイエットを行うときは、痩せるノウハウと太るメカニズムを学びつつ、痩せた体をキープすることも意識するとリバウンドを防げますね💓
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