渡辺君の限界。 | 明け行く空に…。  ~ひねもすひとり?~

渡辺君の限界。

仕事帰りのお楽しみと言ったら、言うまでもなく今日も食べるよ月見そば!でありまして、本日もいつもの店に馳せ参じるのであります。


場末の立ち食いそば屋だけに、集う輩といったらオレみたいなくたびれたサラリーマンやその日暮らしの低賃金労働者など、まぁピラミッドの底辺をせっせと支え生きているような連中がほとんどで、でもこの場所はそんなオレたちにとって聖地のような場所だったりして…。


ところがね、そんな我等のネバーランドに今日は場違い感満載の糞みてーな女がやって来て、ガシガシプレッシャーをかけてきやがる。
その女の風貌はと言うと、正にひとり叶姉妹と呼ぶにふさわしいもので、これでもか!これでもか!と溢れんばかりに爆裂な乳を強調し、どっからどう見てもひとつでオレの年収に匹敵するほどの貴金属を、これまたこれでもか!と身に着けている。
ついでに言っとくと、どうやらお付きの者みてーな男を2人引き連れておりまして、ソイツらが律儀に店の外で待機してやがるんです。
その風貌たるや、今や昔のトラジ・ハイジを彷彿させるいでたちだったりして。


まぁね、いいんですよ。
そりゃたまにはセレブな輩も、庶民の生活を覗き見するのは良い勉強になるでしょうから。
そして社会的弱者の生活ってのがどんなに辛いものなのか、少しでも理解できるだろうから。


でもね、どうしても許せないことがひとつ。


程なくして注文の品を手にひとり叶姉妹が振り返る。
さて、どこにスタンディングでイーティングしようかしらと、無駄にギラついた眼でサーチングなひとり叶姉妹は、あろうことかこのオレ様の隣をロックオン!
まぁでもこれまた別に問題ではないんですよ。
隣に来ようが、どうしてこの店には椅子が無いんだ!とパルプンテ的な呪文を唱えようがオレの知ったこっちゃない。


たた、どうしても許せないのはその匂い、いや臭いというべきか。
とにかくね、およそ飲食店に出入りしてよいレベルを超える香水の散布率でオレの鼻を刺激してくれて、そりゃもう不快以外の何物でもない。きっとひと嗅ぎでオレの1ヶ月分の小遣いに匹敵する価格と想像できるが、不快なもんは不快だ。せっかくの月見そばが、何だかうんこみてーな味にしか感じられない状況に追い込まれているし。


糞が!


もうね、とにかく早急にどっか行って欲しい感満載です。チクショー!一言物申したい!
でも内気な僕には到底言える筈もない。


しかし今日は違う。
今日はひとり叶姉妹の反対隣にヤツがいる。
頼れる男ナンバー1の渡辺のヤツが。
オレはさっそく渡辺君に指示を出す。ただし、言葉にすればひとり叶姉妹に聞こえてしまう可能性があり、下手するとお付きのトラジ・ハイジが飛び込んでくるかもしれないので、もちろんアイコンタクトによる伝達だ。



ん?あぁ、そういうことですか。任せてください!



さすが頼れる男の称号はダテじゃない。
口元まで運んだエビ天を悲しそうに器に戻し、箸を置いて渡辺のヤツは年齢不詳の妙な女の所へと向かい、開口一番そのラヴリィな思いの丈をぶちまける。



姉さん!ちょっといいですか?余計なお世話かもしれませんが、せっかくの純白のコートにカレーうどんの汁が跳ねちゃってますよ!




これが渡辺君の、いや、オレの限界だったのかと深く反省するのであった。
頭ん中ファンタスティポだったのは、どうやらオレたち2人の方だったようだ。




以上。




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