アメンバー様、350名突破記念!! | 空中楼閣

空中楼閣

主にス キ ビ二次ブログです。
原作者様および、出版社様各所には一切関係はありません。
管理人は敦賀蓮至上主義の蓮キョのみの扱いになると思います。

気付かない内に、アメンバー様が350名を遥かに超えていました!!

こんな辺境の地まで、本当にありがとうございます!!


そこで、お礼と言ってはなんですが・・・フリーSSを・・・

需要があるかは不明ですが、もし気に入っていただけましたら、どうぞお持ち帰り下さい!


今、管理人の頭では勝手に嵐祭りが開催されてまして・・・その第2弾です!

ちょっと、切なめ。二宮君のソロ曲です。


では、どうぞ!!









久しぶりに幼い頃の夢を見た。

母親の事で泣いている私に、常日頃から居候している私を快く思わない従業員の一人が言った言葉。


『うっとうしいわね!!そんな事だから、母親に嫌われるのよ!いつまでも、泣いてるじゃないわよっ!邪魔よっ!!』


それは幼い私の胸に深く刻まれる事になった。

泣いていけない。泣けば、また周りの人達に迷惑がかかり、そして嫌われる。あの人の様に、私を置いて・・・そして、また一人にされる。

それは私の中で一番の恐怖だった。


だから、笑っていた。嫌われるのが怖くて、本当は泣きたい時も笑顔でそれを隠して生きてきた。それが私に出来る唯一の事だったから。



Joy



それは本当にたまたまだった。

奏江が同じ局にいると知って、嬉しくて楽屋を訪ねたのいつものことだった。

ちょっと、嫌な事があって奏江に聞いてもらってすっきりしようと思って、キョーコはそれまで暗かった気持ちが少しだけ浮上して奏江の楽屋へと急いだ。


この日、キョーコはまたしてもいわれのない事で同じ年頃の女優達にねちねちと言われた。


『事務所の力の癖に』

『アンタなんて、敦賀さんだって迷惑なのよ!』

『いい加減気付きなさいよ!』


事務所うんぬんは全くの濡れ衣だったが、蓮に関してはキョーコは常々思っていた事だった。


(分かってるわよ、そんなこと!貴女達に言われなくたって!!)


アンタナンテ、ツルガサンニフツリアイ・・・


分かっているはずなのに、面と向かって言われるとずんと気持ちが重たくなった。その気持ちを払拭したくて縋る思いで奏江の楽屋に向かう途中、キョーコの足は聞こえてきた話に止まってしまった。


盗み聞きなど、はしたない。

そう思っていても、キョーコの身体はその場から動く事が出来なかった。まるで氷付いてしまったかのように。


「・・・・だからー、いつもうっとうしいのよ!あの子!!べたべたするし!すぐ泣くし!!」

「くすくす、なーに?アンタ達、親友なんでしょう~?」

「そうだけど~。限度ってものがあるでしょう~?」

「まあ、そうよねー」

「ぐじぐじ言われるこっちの身にもなって欲しいわ!」


どうやら、話している子の親友の話をしているらしいのだが・・・キョーコにはそれは人事ではなかった。

いつも、奏江に会うと嬉しくて飛びついたり、思わず泣き言を言ってしまうのだから。


『そんな事だから、嫌われるのよ!!』


「っ!!」


キョーコの耳に昔よく聞いた悪意のある言葉が蘇る。

それは徐々にキョーコの中で呪縛となり、キョーコはそれに囚われていった。


既に、先ほどの女の子達はいなくなっていたが、キョーコは長い間そこから動く事が出来ずにいた。

ようやく身体が動き始めたのは大分後の事だ。

当初の目的地である奏江の楽屋はすぐそのなのだが、キョーコはその身を翻してきた道を戻った。



その後、キョーコは一人自室に篭りずっと蹲っていた。その手にきつく青い石を握り締めて・・・

そして呪文のようにひたすら、『大丈夫、大丈夫・・・私は大丈夫・・・』と繰り返し呟いていた。


夢を見た。


母親と幼馴染が自分を冷たく見下ろしている夢を・・・。

そして、やがて彼らはキョーコに背を向けてそのまま去っていった。キョーコを一度もかえりみることもなく・・・


『待って!置いていかないで!!お母さん!ショーちゃん!!お願い!!』


追いかけたいのに、キョーコの足は全く動く事がなく、去っていく二人にキョーコの瞳からとめどなく涙が溢れた。


『置いていかないで・・・いい子にしてるから~・・・』


一人涙を流すキョーコの前に奏江と千織が現れた。


『モー子さん!天宮さん!!え・・・?モー子さん?!天宮さん!?』


笑顔だった二人の顔がキョーコを見た途端、その笑顔が消えた。そして、何の感情も浮かべないまま二人の姿は消えていった。

ただ一人、キョーコを置いて・・・


その後も、何人もの人が現れてはキョーコを見た瞬間その表情を変え、キョーコを蔑む様に見た後消えていった。その中にはいつも優しい社や姉の様に慕ってくれるマリアの姿もあった。


そして、絶望するキョーコの前に蓮とコーンが現れた。


『敦賀さん!!コーン!!』


笑顔でキョーコを見詰める蓮とコーンにキョーコは嬉しくて泣き笑った。

だが、差し伸べられる腕を取ろうにもキョーコの身体は微塵も動く事が出来ず・・・そして、蓮とコーンの顔からも笑みが消えた。

『動けないんです!待って!置いていかないで!!コーン!』


先にコーンがキョーコに背を向け・・・消えていった。そして、蓮も・・・冷たい瞳でキョーコを見下ろした。


『・・・いや・・・敦賀さん・・・置いていかなでください・・・私を見捨てないで・・・』


泣きながら懇願するキョーコに蓮は、うっとうしそうに見た後そのまま背を向けて歩き出した。


『いや・・・いや・・・敦賀さん・・・いやーぁぁ!敦賀さーんっ!!』





「敦賀さん!!・・・・・ぁ・・・・」


キョーコは自分の叫び声で眼を覚ました。

最初、キョーコは夢と現の狭間が分からなかった。ただ、心臓がバクバクと激しく息をする事もままならなかった。


「・・・夢か・・・それにしても・・・何て夢なの・・・」


皆、泣いている自分を見た後、鬱陶しそうに顔をしかめていた。

心の支えである、コーンも・・・そして、いつも優しく慰めてくれている蓮ですら・・・泣いている自分を心底鬱陶しそうに見ていたのだ。


「・・・泣いちゃ、駄目・・・泣いたら、皆から・・・嫌われる・・・」


それは一種の恐怖観念だった。

今見た夢がまるで現実の様に感じたキョーコは、それが現実にならない事を祈る事しか出来なかった。

この後、キョーコはまんじりとも出来ずずっとコーンを握り締めていた。




それ以降、キョーコが泣き言を言う事は無くなった。

いつも笑顔で、『大丈夫よ』と言うキョーコに周囲は安心していたのだ。精神的に安定しているのだと誤った解釈をして・・・

キョーコも、笑顔で接してくれる周囲に安心していた。だから、『大丈夫』だと自分を偽っていたのだ。



言霊の本当の恐ろしさに気付く事もなく・・・





中編に続く