『運の良さを呼び込むのはプラス思考』坂本花織が爆笑トークショーで明かした女王の哲学《中野園子コーチの「怖~っ」な予知力とは?》

  フィギュアスケート世界選手権2024で日本人初の3連覇を達成した坂本花織選手を迎え、スペシャルトークショー『氷上の女王  頂点からの景色』が開催された

  3歳でスケートに出合って約20年。滑っても転んでも楽しかったお教室時代から世界選手権3連覇のこと、そして2026年のオリンピックを含めた今後のことを、スポーツライター野口美恵さんが聞き手となり、氷上のイメージとは違う終始明るい表情で、次から次に繰り出すエピソードに会場は笑いに包まれっぱなし。その一部を紹介する

 

『花織がいきますからね。ちゃんと見ていてくださいね』

 

  坂本選手は2017年、平昌五輪シーズンにシニアデビューを飾った。しかし、メディアで代表候補の名前、顔写真あがっている中に彼女の名前と写真はなく、『やさしいところ(媒体)に名前がある程度だったのがめっちゃ悔しくて……絶対頑張ろう』と奮起した

 

  とはいえ、シーズンはじめは調子がまだあがらなかった。この時期、MCでもあるライターの野口さんは中野園子コーチから思いもかけないことを聞いたという。それが冒頭の『花織がいきますからね』だった。野口さんは当時、かなり驚いたという

 

  その年、坂本がフリーに選んだ『アメリ』はパントマイムを盛り込んだ攻めのプログラムで、完成度を上げるのに苦戦していた。さらに、ショートも1回滑っただけで作り直すことになり、3本のジャンプすべてを後半に組み込むことになった。なんとかフリーは形になったものの、ショートは難航。後半に固められたジャンプをひたすら練習し、ようやくノーミスで滑れたのは10月に開催されたグランプリシリーズ第1戦、ロステレコム杯だった。その後、数々の試合で感覚を磨き、11月のスケートアメリカで2位になった

 

『フリーがノーミスでできて、210点超え。奇跡が起きた!』

 

  このスケートアメリカで坂本にもう一段ギアが入ったという。その後、全日本選手権へと邁進し、見事に平昌五輪出場を掴み取る。急成長をとげて結果を出す坂本の姿を見るたびに、野口さんの脳裏には中野コーチの言葉がよみがえっていた

 

  野口さんが『中野コーチの目には素直な練習態度と量から伸びしろが見えていたんでしょうね』と、トークショーで初めて明かすと、坂本選手は目を丸くし、『先生、すごい』『怖~っ』とうれしそうに顔をくしゃっとさせた

 

『運の良さを呼び込むのはプラス思考』

  かつての坂本選手へのインタビューで野口さんが忘れられない言葉がもうひとつ

 

『運の良さを呼び込むのはプラス思考』

 

  なんでもポジティブに捉えていく考え方が、最終的には自分の運を変えていくのだと。迷いのない言葉に、野口さんは取材ノートが新しくなるたびに最初のページに書き写してきた

 

  3月、モントリオールで開催された世界選手権でも、そのポジティブ思考は発揮された。ショートでまさかの4位となった。それでも、坂本はマイペースを貫いた

 

『天才的だと思うぐらい、寝たら忘れられるんですよ。朝、起きたらすっきり。ショートは不安があったけど、フリーだけとなって気持ちが楽になって、めっちゃ前向きになれて、そこからはノリノリになれた』

 

  フリーまでの2日間、坂本はくたくたになるまで練習した。それが『自分のやり方』なんだと笑顔で平然と話す。モントリオールのリンクでくたくたになのに楽しそうな坂本の姿を見て、『これならフリーでいけるな』と、野口さんは心の中で思ったという。そして見事、日本人としては初の、世界選手権3連覇が達成されたが、その舞台裏を隠すことなく明かしてくれた

 

  2026年ミラノ/コルティナ五輪に向けての心意気を問うと、『まずは25シーズンを五輪に繋がる年にしたい。若い選手の台頭も自分の力に変えて、エンジンガンガンで頑張ります!!』と力強い言葉が返ってきた

 

  その他にも、トークショーでは様々なテーマに触れた

 

  • スケート選手として『やっていける』と思えたノービス時代
  • 練習の大切さを思い知らされたある選手の存在
  • 救急搬送されてからの体力回復のために食べまくった平昌五輪
  • あるプログラムでのジャッジとの『爆笑』の駆け引き
  • 『悩んでいる人をほっておけない』とある選手にもアドバイスもした北京五輪
  • 3連覇をしている世界選手権、それぞれの大会の振り返り

 

  終盤の質問コーナーでは、一番好きなプログラムや『これは、すごい!』と思う選手、中野コーチにかけられて一番うれしかった言葉なども明かされた