2010年12月7日(火)の朝が来てしまった。
棺の中のゆいは、冷たいけど、動かないけどやっぱりかわいかった。
朝ごはんは巻き寿司といなりのセット。
誰がこんなの頼んだんだ!・・・・・私だ。(笑)
こんなのしかなかったような・・・昼ごはんが遅くなるから・・・
朝ごはんも食べずに、私たち夫婦はゆいの横で今日読むあいさつを考えていた。
追い詰められないとやる気にならなかった。
99、9%私が考えて、紙に書いた。
あいさつというか、ゆい宛ての手紙になったような気もするけど・・・
昨夜、棺に入れる色紙が用意されてたので、家族はそれにメッセージを書いていた。
朝、それを読んで涙が出た。
ゆいは愛されてたんだなって思った。
旦那と私は、それぞれ便箋に手紙を書いた。
私はゆいに手紙なんて書いたことない。
最初で最後の手紙。
そっと体の下に入れた。
どんなことを書いたのか全く思い出せない。
マクドのポテトとパピコも棺の中に入れた。
リキの写真も!でも家族の写真を入れるのを忘れてた。ってかそういう考えが浮かばなかった。
(あるブロガーさんの家族写真を入れたという記事を見て、ほんと後悔した・・・)
葬儀屋の人に確認しながら、他の物を入れようとしたがほとんどが
できるだけ入れない方がいい!だった。
昨夜もらった白いドレスもいろんな飾りがついていて、難色を示された。
でも着替えとしてどうしても入れたいと言ったら、できるだけ足元の方に入れて下さいと言われた。
棺に入れたのはこのくらいだった・・・
今日も打ち合わせがあった。
会場に降りると、DVD用にと渡してた写真が入り口にかわいく飾られてた。
生れた日から家族旅行までたった20枚だけど、成長が分かった。
でも最後の写真だって、まだまだ赤ちゃんだ・・・
もっともっと増えるはずだったのに・・・
会場には白い大きなピアノが登場していた。
「何、これ?」
伴奏者の方があいさつに来られた。
式の途中、途中に生演奏するらしい。
それで、何の曲がいいか聞きに来られた。
もう、エ~~~!!!だった。(笑)
私、話聞いてたつもりだったけど、こんなの頼んでたんだ。
不必要だ!ピアノの生演奏なんて!って思った。
でも、結構です!とも言えず、アンパンマンの曲がいい・・・と答えてしまった。
(結局これは、葬儀屋さんのサービスだったらしい)
「アンパンマンの悪いはすてきって曲がいんですけど!」って言っても、
?顔だった。
そりゃ知らないよなって思い、定番のアンパンマンマーチやアンパンマンたいそうをお願いした。
(今思い返すと、トトロとかの曲も弾いてたような・・・)
あっという間に時間は立ち、ゆいはふたをされ1階に運ばれていった。
次この控室に戻ってくる時はもっと小さくなってる・・・
ゆいが1階に運ばれたので、私たちも席に座ってその時を待った。
11時、式がはじまった。
始まりのアナウンスとともに、祭壇後ろの幕が開いた。
そこには庭園が広がっていた。(これが、この会場の売りらしい)
まるで、舞台でも見てるような感覚だった。
外は、さっきまで晴れていたのに、雨が降ってるようだった。
あと風がすごく強かった。
やっぱりゆいは雨女だな~って思いながら見てた。
今日もたくさんの方が来てくれた。
ピアノでアンパンマンの曲を弾いてくれてたみたいだけど、あまり記憶に残っていない。
和尚さんがお経を読んでいる。
通夜と一緒で、ずっと遺影を見てたと思う。
なんで?ゆいはこんなとこにいるんだろう・・・
棺の中のゆいはどんな顔してるだろう・・・
何を思ってるだろう・・・
こんなことを考えてたと思う。
お経の合間に、風がピューピューふいてる音が聞こえた。
お経が終わり、和尚さんが退席する時、旦那に「これを胸においてやりなさい」ってお札みたいなのを渡した。天国行きの切符なのかな?
それから突然大きなスクリーンが下りてきた。
ゆいのDVDが流される。
こんな大がかりなものだとは思わなかった。
絢香の「みんな空の下」という曲に合わせて季節の移り変わりとともに写真が構成されていた。
私たちの結婚式を思い出した。
小さい頃からのいろんな写真を流したことを。
こんなとこで、こんなふうに使われるとは思ってもいなかった。
できれば結婚式に使ってほしかった・・・
生れた日から始まって、私は最初は冷静にそれを見ていることができたが、
5か月くらいの時の写真から記憶がない。
声を出して泣いてたと思う・・・
涙が止まらなかった。
長い5分間だったと思う。
このDVD、葬式が終わってから頂いたんだけど、しばらくは見ることができなかった。
でもある日見てみようという気になった。
葬式屋さんがサービスで作ってくれたものだけど、よくできてた。(笑)
あと絢香のこの曲が大好きになった。
DVDが終わり、旦那があいさつをした。
旦那は祭壇の方を向いてあいさつを始めた。
いつもは弱弱しい旦那が、はっきりと大きな声で、涙も一切見せず、
1回もつまることなく・・・ゆいをほめた。自慢した。
最後はみんなの方を向いてお礼を言った。
私は、それを聞きながら泣いていたと思う。
ゆい、あんたの父ちゃんすごいよ!って思った。
家族・親戚が最後のお別れをした。
旦那がゆいの胸に先ほどのお札を持たせた。
棺の中にたくさんの花を入れ始めた。
ゆいに触れることができるのはこれが最後。
私は、花は一切入れず、ずっとゆいの頬を触っていた。
ゆいの顔以外があっという間にたくさんの花で覆われた。
ゆいは何とも言えない表情を浮かべてた。
最後までゆいは冷たかった。
バイバイ・・・
ゆいの棺が車に乗せられた。
霊柩車は大きすぎるということで、少し小さな車に・・・
葬儀屋の方が私に花束を渡してきた。
ゆいの棺の上に置いてくださいと・・・
こんな花置きたくなかった・・・
それから、車に乗り火葬場へ向かった。
車の中でも、私はずっと棺を触っていた。
ゆいを触りたいがそれはもう無理・・・
火葬場までの道のりは結構あるのに、あっという間に到着した。
到着すると、小さな部屋で和尚さんが少しだけお経を読んだ。
それから、最後に顔だけ見れた。
顔を見ながらゆいに向かって最後に言ったのは、
「熱くないよ」だった。
ゆいが、いつものように「うん」って言ったのが聞こえた。
熱くないわけない・・・
でも、なぜかこんな言葉しか出てこなかった。
ゆいの体は氷のように冷たかった。
だから・・・
みんなが顔を見た後はすごくはやかった・・・
台車に置かれた棺が、あっという間にガラス張りの壁の向こうに連れていかれた。
そこにはエレベーターみたいな扉が横にずらっと並んであった。
それから○○家と書かれた扉が開き、ゆいは中へ入れられた。
扉が閉まってランプがついた。
ただ、それをガラス越しに見てることしかできなかった・・・
係りの人が1時間ほどでアナウンスがありますので、待合でお待ち下さいと
案内してくれた。
旦那のお父さんが、最後までガラスから離れなかった。
ゆいが入った場所を泣きながらずっと見てる・・・
その様子を見て、私はただ申し訳ない気持ちでいっぱいだった。
待合室までの道のりに、① ② ③と書かれた採骨室があった。
その前を通った時、ゆいの声が聞こえたような気がした。
「わたし、②から出てくるよ」
旦那に言った。
「ゆいは②から出てくるって言ってる!」って。
最後の返事といい、この言葉といい、私の思い込みかもしれないけど、
本当に聞こえた・・・
待合ではただひたすら待った。
自分の娘が焼かれているという怖さはあったが、はやくゆいに会いたかった。
1時間後、アナウンスがあった。
「○○家様、②番の部屋にお入りください。」と。
やっぱりゆいが教えてくれてたんだ~
私は1番最後に②の部屋に入った。
部屋に向かう途中の廊下から、部屋に入った瞬間のお兄ちゃんの顔が見えた。
お兄ちゃんの表情を見ればゆいがどんな状態か想像できた・・・
ゆいを見た瞬間の気持ちは、正直「葬儀屋さんが、物をあまり入れないようにと言ってたのはこのことだったのか」だった。
旦那には大きな箸が渡された。
私には、小さなほうきとお好み焼きを食べる時に使うヘラみたいなのが渡された。
頭はキレイに残っていた。
係りの人が、「下から(足の方から)順番に入れてあげてください」と言った。
みんなが代わる代わる骨を入れてくれた。
私は、そのほうきとヘラで小さい骨や骨らしき粉末をかき集めてた。
下からとか関係ない!絶対絶対全部とってやるって思った。
時間が決められてるのかもしれないけど、全部拾うまでこの部屋から出ないと思った。
係りの人が骨以外は入れないようにと、何回も言った。
だから1つ1つ係りの人に確認した。
「これはどこの骨ですか?」「これは骨ですか?」って・・・
係りの人はそれにすべて答えてくれた。
「それは手の指です。」「それは膝の下の骨です」って・・・
すごくすごく熱かった。
顔をずっと近づけておくのは無理なくらい。
でも、近づかないと分からない・・・
頭は大泉門がまだ閉じてなかったのがよく分かった。
歯も分かった。
20分以上かかったと思う。
骨らしきものは全部入れた。
それでも、骨箱には半分くらいだった。
旦那がお骨を持った。
「あたたかい」と言った。
車で会館に戻った。
ゆいを囲んでみんなでご飯を食べた。
それからゆいを連れて実家に帰った。
家に入ると、バイキンマンのバルーンが完全に沈んでた。
私の肩も軽く感じた。
ゆいは天国に行ったんだろうな~って思った。
葬儀屋の方が小さな祭壇を用意してくれて、ゆいもそこに並んだ。
悲しい、さみしいより不思議な気持ちだった。
小さな箱に入ってしまったけど、骨だけになってしまったけど、
ゆいには変わりなかった。
でも、もうゆいの感触を忘れてしまった・・・
すごく触りたくてたまらなかった。