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このブログをご覧くださっていらっしゃる全ての皆様に、良き事が雪崩れのごとく起こる事を、お祈りさせていただきます。

さて、昨年の事で恐縮なんですが、東京は新宿にあります損保ジャパン日本興亜美術館(通称:東郷青児美術館)に行って来ました。
今回の展示は、「東郷青児のコレクションより 青児とパリの美術」と言うものです。

実は今回のこの展示ですが、すでに昨年のうちに終了しています。
もっと早く掲載すれば良かったんですが、タイミングを逸してしまい、今日になってしまいました・・・・・・。ぐぬぬ。
申し訳ありませんが、悪しからずご了承ください。

さて先程、「東郷青児美術館」と言う表現を使いましたが、実はこの美術館、東郷青児の作品を多数所蔵している事から、こう呼ばれる事が多いんです。
さらに言えば、この東郷青児と言う人は、この損保ジャパンのポスターを過去に何枚も手掛けているんですね。
そのようないきさつから、東郷青児とこの美術館の関わりは深いわけなんです。

東郷青児は1916年に二科展に作品を出展し、賞を受賞しています。
その後、1921年から7年間フランスに渡って絵の勉強をし、ピカソなどの影響を受けています。

こんな経歴の青児ですが、今回の展示の中から幾つかの作品をご紹介させていただきます。
まずは、こちら。
東郷青児1 
これは、「古城」と言う作品です。

実際の作品をご覧いただけないので申し訳ないんですが、この作品では絵の具がうねるようにキャンバスに塗られています。
よく油彩で、絵の具が盛り上がったような筆遣いをしている作品を見かけますが、これなどは、ちょうどその典型的な例なんですね。

東郷青児と言うと、綺麗に絵の具を平面的に塗られた作品が多い印象があります。
しかし、これなどはその印象を全く覆すものになります。

こういう絵も描く、と言う意味でこの作品をご紹介させていただきました。

続いての作品は、こちらになります。
東郷青児6 
これは、「巴里の女」と言うタイトルが付けられています。

この作品は1922年に描かれたものになります。
ですので、パリに渡って間もなくの頃、と言うわけですね。

そのせいか、この作品の描き方は、後に描くデフォルメされた多くの作品とは大きく異なります。
何か、とても素朴な感じがしませんか?
まあ、東郷青児の作品の変化を知る上では、貴重な資料になり得るものですね。

そして、次はこちらです。
東郷青児5 
こちらは、「赤いベルト」と言う作品です。

ここに描かれている女性が、東郷青児の描く女性の典型的な例と言っても良いと思います。

特徴を幾つか挙げると
1、ウエストが極端に細い
2、15頭身ぐらいあるのではないか、と思われるスタイルの良さ
3、黒い瞳が描かれる事のない目
4、物凄く細くて長い指
5、洋服のシワの部分を除いては、筆をぺったり綺麗に平面的に塗る事
などになります。

なお、背景が描かれていませんが、これが後にご紹介させていただく作品と大きく異なりますので、注意してご覧ください。

続いての作品は、こちらです。
東郷青児7 
こちらの作品は、「四重奏」と言うタイトルになります。

これも、基本的な作品の特徴としては、前の「赤いベルト」とほぼ同じです。

ただ、これも実物ではなくて申し訳ないんですが、描かれている女性の髪がウエーブがかかっているんですね。
つまり、意図的かどうかは分かりませんが、絵の具が少し盛り上がったような筆遣いで色が塗られている所が、大きな特徴です。

身体の他の部分は平坦に描くのに、髪だけ立体的にするのは、髪と言うのは風になびいたりして形が変化するので、そこを強調したかったのでしょうか?
まあ、これはあくまで想像ですが・・・・・。

そして、次の作品はこれです。
東郷青児3 
こちらは、「アクロポリス」と言う作品になります。
この頃から、青児の描く作品には変化が見られます。

まず、これは天地が逆さなのではありません。
あくまでも、こういう作品として描かれたものなのです。

そして、どう考えても身体の形が不自然ですよね?
左右の足の太さが違っていたり、手の指が極端に太く描かれています。
まるで大仏様の指か、グローブのような指に見えます。
そして、背景の神殿らしき建物も崩壊しています。

何か、大きな変化を象徴的に描きたかったようにも見えます。

そして、次はこちら。
東郷青児2 
これは、「王家の谷」と言う作品になります。

王家と言う言葉で、皆様は何か連想なさいますか?
個人的には、この王家と言う言葉は古代エジプトを支配した一族の事ではないか、と思いました。

そう思って見ると、背景に見える三角形のものは、ピラミッドに見えて来ます。
そして、このモデル自身の頭の部分が、ピラミッドと対をなすスフィンクスのようでもありますよね?

このように、後半の青児は背景のある作品を多く描いています。

そして、次はこちらです。
東郷青児4 
これは、「砂の村」と言う作品です。

青児は、第二次世界大戦で多くの人が死傷し、街が荒廃した事に心を痛めていました。
そして、戦争をモチーフにした作品も多く残しています。

この作品も、言わばそんなモチーフの代表例になります。
砂漠の中で赤ん坊を必死に抱きかかえる女性の姿が、戦争の悲惨さを暗示しているようです。

ここまでご覧いただきまして、皆様いかがだったでしょうか?
青児の作品は、とかく通俗的過ぎると言われがちですが、必ずしもそういう作品ばかりではない、と言う事をご理解いただければ幸いです。

今回も、最後までお読みくださいまして、有難うございました。

今年の冬は暖かいとはいえ、お風邪など引かぬように、皆様お身体ご自愛くださいね。(^◇^)