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さて先日、東京・六本木にあります六本木ヒルズ森ビル内の、森アーツセンターギャラリーに行って来ました。
「フェルメールとレンブラント:17世紀オランダ黄金時代の巨匠たち展」を見るためです。

今回は内容が多いので、早速行きたいと思います。
まず始めは、こちらです。
オランダ1 
これは、ヤン・ファン・ベイレルトの「マタイの召命」と言う作品です。

この作品は、当時この地域で盛んに読まれていた聖書の物語に題材を取っています。

オランダでは、スペインの支配から独立して以降はプロテスタントの信仰が盛んになりますが、それ以前は主にカトリックが信仰されていました。
そのため、このようにキリスト教をモチーフにした作品が描かれています。

続いては、こちらになります。
オランダ2 
これは、サロモン・ファン・ライスダールの「水飲み場」と言う作品です。

当時のオランダは身分の格差があまりなく、さらに貿易等によって裕福な生活をしている一般市民も結構いたようです。

こちらに描かれているのも、馬車を仕立てて旅に出られる、いわゆる「小金持ち階級」の人々の様子です。

また、このような風景画は、一般的に広く好まれていたようです。
ですから、生計を立てるために当時の画家達は、風景画を多く描いています。

次は、こちらです。
オランダ3 
これは、ヤン・バプティスト・ウェーニクスの「地中海の港」と言う作品です。

当時の、絵画を始めとするヨーロッパの芸術は、何と言ってもイタリアが中心でした。
実際に、オランダからも多くの画家達がイタリアを訪れ、カラバッジョ等の影響を受けたと見られています。
カラバッジョは、光と影に注目して作品を描いた画家として有名ですが、これは今回の本展に出品された作品にも、多く見られます。

なおこの作品は、そんな中でイタリアに対する憧れの気持ちから描かれた作品のようです。
つまり、実際のイタリアの風景ではありませんが、イタリアを思い出して描かれたと言われているようです。

そして、続いてはこちら。
オランダ4 
これは、ピーテル・サーンレダムの「聖ラウレンス教会礼拝堂」と言う作品です。

先程も申し上げました通り、当時のオランダはプロテスタントが広く信仰されていました。
これは、当時のプロテスタント教会の様子を知る上で、とても貴重な資料になります。

と言うのも、この教会にはカトリックにありがちな宗教画や、キリストやマリアの像など一切ありません。
そもそも、プロテスタントの教会と言うのは、現在でもこのようにシンプルな印象のようですが、この当時から変わっていないと言う事が分かりますよね。

そして、次はこちらになります。
オランダ5 
こちらは、コルネリス・クラースゾーン・ファン・ウィーリンゲンの「港町の近くにて」と言う物です。
 
先程もお話させていただきました通り、オランダはイギリスの助けを借りて、スペインから独立を勝ち取ります。
とは言え、当時のスペインの海軍は、「無敵艦隊」と言われる程強大な力を誇っていました。

この作品は、そんなスペインの大型艦隊に対して戦うオランダ船の様子が描かれています。
よく見ると、中央の船のマストには、「負け」を意思表示する白い旗がかかげられています。

そして、次はこちらです。
オランダ6 
この作品は、フローリス・ファン・スホーテンの「果物のある静物」です。

以前にもお話させていただきましたが、こう言ったいわゆる「静物」はあまり描かれていませんでした。
と言うのも、このような作品はあまり売れる事がなく、従って画家サイドとしても自分の生計を考えると、このようなテーマはどうしても敬遠してしまいがちです。

しかし、この時代のオランダは貿易で莫大な富を得て、またその事によってヨーロッパではお目にかかれない多くの珍しい物がアジアなどから入って来るようになりました。
つまり、これらは富を象徴する品々だったんですね。

続きましては、こちらです。

オランダ7
これは、フランス・ハルスの「ひだ襟をつけた男の肖像」と言う作品です。

この当時は勿論、まだ写真の技術と言う物は、ありませんでした。
つまり、自分の姿形を残すには、画家に頼んで絵を描いてもらうより他にありませんでした。

しかし、このような事が出来るのは、本当にごく一部のお金のある人達だけです。
オランダが他の国と違うのは、それが出来たのが貿易で設けた一般市民だった、と言う事です。

これが他では、王侯貴族に限られていましたからね。
オランダの大きな特徴の一つです。

そして、次はこちらになります。
オランダ8 
こちらは、ヤン・ステーンの「恋の病」になります。

中央の女性は何やら頭をかかえて、体調が悪そうです。
そして、その周りにいる男性2人が、心配そうに様子を伺っています。

実はこれ、女性は身体の調子が悪いのではなく、いわゆる「恋の病」と言う物なんですね。
古今東西、人の気持ちと言うのは変わらないようです。

このようなテーマ性のある作品は、前回のラファエル前派展でもご紹介させていただきましたが、この頃からすでにあったようです。

そして、いよいよこちらです。
オランダ9 
こちらが、今回の展示の最大の目玉であるヨハンス・フェルメールの「水差しを持つ女」になります。

フェルメールと言う画家は、光と影を扱う画家として非常に評価が高い人です。
他の作品も拝見させていただいた印象ですが、左端に窓があってそこから光が差し込んでいる作品が結構多いですね。

そして頭にかぶり物をしていますが、よく見ると中が透けていて、髪の毛の様子が窺えるんですね。
こう言った所の描き方が、非常に細かいです。
また、テーブルクロスの色や柄が、その上に置かれた食器に写っていますよね。

なお、この作品を会場で拝見させていただいた時、ちょっとした違和感を感じました。
と言うのも、窓の端の枠の部分と、壁と壁の境い目の黒い線がズレているんですね。
さらに、もう一つ言うと、女性の右手が窓に触っていますが、指が窓の外側に「はみ出して」いるんです。

この事に気が付いてから、ずっと気になっていたんですが、どうやらこの窓と言うのは、ビルの入り口などにある「回転ドア」と同じ構造をしているようなんですね。
こう考えると、不自然な点も納得が行きます。

変な話はこれくらいにして、次ももう一つの目玉です。
オランダ10 
こちらが、レンブラント・ファン・レインの「ベローナ」になります。

レンブラントも光と影については、非常に細かく描いた人でした。
本作品では、甲冑の光沢が見事ですよね。
そして、一つ一つの装飾も精密に描かれています。

レンブラントは、主に今で言うところの「集合写真」を絵にして生計を立て、存命中からその作品は評価され、多くの弟子を抱えていました。
しかし、金遣いが荒く、裕福な家庭の生まれである妻サスキアの持参金を食いつぶしていました。
そしてサスキアの死後、ついに破産してしまいます。

この破産が、作品に少なからず影響を与えていますが、今回のレンブラントは出展がこれ一つのみですので、この辺りは窺い知る事は出来ません。
 
一方のフェルメールですが、残念ながらその存命中には絵は全く評価されませんでした。
そのため、彼の作品の多くは散逸してしまい、現在フェルメールの作品と分かっているのは30点あまりしかありません。
同じように存命中は評価されなくても、その死後親族が絵を売り込んだゴッホのような場合には、作品が多く残されているんですけどね。

またまた、長くなってしまいました。

今回も、最後までお読みくださいまして、有難うございました。(^◇^)

<おま毛>
なお会場へは、渋谷から出ている「六本木ヒルズ」行きのバスに乗ると、森ビルの地下に直行しますので、便利ですよ。
そして、2台に1台くらいの割合で、途中全く止まらないノンストップのバスもあります。