もうお金なんかいらない。

優しい父が欲しい。






「結婚する気があるのか」

「そんな状態で結婚出来るのか」

「生活出来るのか」

「やって行けるのか」

「奥様業は出来るのか」






もううんざりだ。

この人は本当に目の前にいる私を

1ミリも理解してはくれないのだ。




ちょっとの努力や期待は全て徒労に終わり

長い時間をかけた歩み寄りは水泡に帰す。

私の努力や成長など

彼には全く分かりはしないのだ。







「いつも朝起きれなくてこれから大丈夫なのか」

「字が汚いからペン習字を習った方がいい」

「考えが浅い」






怒った顔

不機嫌な声

威圧的な態度

差別的な思考

偏見に満ちた目

拗ねて全てを拒絶する幼稚さ






相手にプレッシャーを与えて急かし

自分の利益の為に人を動かし

さも当たり前のように命じて

自責の念を持たず

己の権威ばかりひけらかす






卑怯な人が許せない、と言っていた。

自分は卑怯以上に卑しい人間だというのに。







「お父さんのせいでうつになった」と言ったあの日から

自分を省みる事など、ほぼ無いに等しかったのだと

悲しいことに理解してしまった。





微々たる変化は

積もらせていた塵は

たったあの一瞬で崩れ去った。






期待をするだけ無駄なのだと

受け入れてしまえばいい。


そういう人なのだと。

そういう巡り合わせだったのだと。





この人は私に

人を想う優しさや

相手の気持ちを感じとる心を養わせる為に

父という役をやっているのだと。






幼い私の幻影を

いつか感謝してくれる未来の私を

夢に見ながら、朽ちていくのだ。