他人に腹が立つのは、その人に期待をしているから。

期待をしてしまうのは、その人に叶えて欲しい望みがあるから。


満たされない想いを相手に託してしまうから。


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私は長くオンラインゲームをしていて、ゲーム内で仲良くなった友人がいる。



聞けば小さい頃クラスメイトからあからさまな仲間はずれに遭い、その事が大きなトラウマとなっているようだった。

人間不信でちょっとしたことがきっかけで自分が嫌われていないかすぐに怖くなってしまうという。

だからゲーム内フレンドを作るのにもとても慎重で、相手との相性が分かるまでは警戒を怠らないタイプだった。




過去のトラウマのせいでこれまで希薄な関係性しか経験して来なかっただけに、

ここで出会えた気の合う友人関係をとても大事に思い、またその分だけ執着や依存も大きかった。

自分が面倒なことを言っていると自覚していながらも、他の友人たちにわがままや無茶を言う場面がこれまでにも多くあった。




私はその人の理想に違わぬやり取りをしていたからか、比較的困らせられることは少なかったものの

先日ついに「この人とはフレンドにならないで欲しい」という理不尽な要求を浴びせられてしまった。






実をいうとこれを言われるのは2回目である。

友人同士が仲良くなることで自分から離れていってしまう不安があり、
別コミュニティーとして自分の拠り所を確保しておきたいというお願いであった。

(※互いに友達登録することでより密なコミュニケーションができる)


わがままであると自覚しているがそうしてもらえたらありがたい、という申し出に
「今の彼女にとって必要なことなのだろう」と思い、少しもやっとしながらも承諾した。



しかし今回はその頃から随分と時間が経ってからのこと。


一進一退を繰り返しながらも、客観的に見れば安定的にフレンド同士の交流が続けられている状況の中でのことだったが

実際のところは、かつて満たされなかった孤独を埋めたいという欲求が彼女の目を曇らせ

友人からの好意を疑心によって受け取れず、少し嫌がられても相手の都合に配慮せず、
わがままを押し付けるようになっていた。



"私を自分の理想通りにさせようとする高圧的な父にずっと悩まされて来た"と先日打ち明けたつもりだったのだが

彼女も自分の私利私欲のために相手の自由な選択を束縛する発言をするのかと

正直私はひどく腑が煮えくりかえり、深い失望に襲われた。



自分を認めて欲しい、期待に応えて欲しいという気持ちは誰しもあるものだと思うが

それで相手を尊重しないのは大きな間違いだし、人間というのは自分を尊重しない相手を大切にできるほどお人好しにはできていないのである。


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しかしこのように憤るということは、裏を返せば私も彼女に多く期待を寄せていたということだ。

私の理解されない孤独に寄り添ってくれると、
ネット上で繋がれた新たな信頼関係であると感じて、優しく労ってもらえることを期待していたのだ。


自分の言葉に何か気づきを得て、彼女も成長していくに違いない。
そうして私のことを深く理解してくれるようになるだろうという、相手の変化への期待。

そして、自分には相手を変化させる力があるという期待を無意識に向けていたことが分かってしまい
それがより一層自分の心を打ちのめした。





相手を変えようなんて、なんて烏滸がましいんだろう。

相手が変化を自ら望んでいるわけではないのに、自分の勝手で様々なうんちくや助言を押しつけて

なんて思い上がった奴なんだ。



結局自分の見たいところだけ見て傷を舐め合い、現実から逃げていた自分が恥ずかしい。

相手の懐に入って自分にとって安心出来る地位を確立しようとしていた、浅ましい自分が悔しい。



「他人は自分の鏡」



自分が自分を肯定し、自分という存在を全身全霊で認めて愛して、
そこから自分の心の土台は培われていくのだ。

自らと向き合い、自分の心の育つ畑を耕すことから目を背けてはならない。
相手に合わせて、その中でだけ見出される幸福は本当の幸福ではないのだ。