「愛と正義の星!輝く月に誓ってお仕置きよ!」

額に付けてある三日月型のカッターを相手に投げつける。

「ギャー」

三つ目で触角も三つある緑色した星人の顔と胴が別れを告げ、その後爆発した。

ふぅ。

一丁あがり。

今日のはザコだったわ。

クリスマスネオン輝く街中に堂々と出現した宇宙人を一瞬でやっつけ、私は専用のコンパクトを取り出した。

周りを見ると数多くのカップルが手をつなぎ、腕を組んで歩いている。

…ふん。気楽なもんね。

さっきの宇宙人みたいに爆発しちゃえばいいのに。

私は少し人気のないところへ行き、コンパクトのボタンを押すとコスチュームがデジタル変換され、普段着に変わった。
どういう原理かは聞かないでね。
私もわからないのよ。

さて、と。

バッグからタバコを取り出す。

いつも決まってセーラムライトメンソール。

一仕事終えた後の一服。

メンソールの冷えた感覚が鼻腔を突き抜ける。

まあ、悪くないひとときね。

灰をさっきのコンパクトに落とす。

え?これは何かって?

これはセーラムコンパクト。

セーコンと呼んでるわ。

コンパクト兼、携帯灰皿兼、変身道具兼で、通信機能も兼ねてるのよ。他に何かあったかは忘れたわ。
便利なアップデート機能付き。
ちなみにジャパネットでも売ってないわ。

まあ、テクマクマヤコン的なアレと思ってもらって大丈夫。



あら私ったら例えが昭和!!



…ふぅ。


え?私?

ああ、自己紹介がまだだったわね。

私は…

ジリリリ

セーコンが鳴る。

この昭和の黒電話みたいな着信音なんとかならないのかしら。

GLAYの着うたにできないのかしら。

コンパクトの鏡の部分に「call」と出ている。

その上には「虎マネージャー」の文字。

ハァ…。

私は一つため息をついて画面をタッチ。

いけないなぁ。気がついたらため息ばっかりついてるじゃない。

「はい?」

「あ、月影ちゃん?お疲れ~」

コンパクトに男の顔が映る。

あーあ、私が言う前に名前ばらしちゃって…。

仕方ないなぁ…。

私の名前は月影(つきかげ)うさぎ。

このコンパクトに映ってる中年のおじさんは虎之介マネージャー。

私たちの宇宙人退治の仕事を受注したり、取材やその他スケジュールを取り仕切るマネージャー。

丸顔の童顔だけどもう40なのよね。
完全にとっつぁん坊やだわ。

でも、もう彼との付き合いも20年を越えるのかしら…。

あの頃はまだ若かったなぁ…。



ちょ!?

20年!?




いやいや、ちょっと私、相対性理論無視してる!?

光速超えた!?

私が宇宙人退治を始めた時に生まれた子が今や成人式で袴着て市民会館の壇上でひと暴れしてるってこと!?

はあ…。あ、またため息。

「おーい月影ちゃーん!聞いてる?」

私がアインシュタインを殴りたくなる衝動を抑えている間、ずっと虎マネージャーが呼んでいた。

「聞いてるわよ。っていうか、何よ今日の宇宙人」

「『宇宙幻獣』な。ここ大事。え?もう倒したの?」

「何が宇宙幻獣よ。ピッコロの出来損ないじゃないの。ソッコーでやっつけたわよ。つーかさぁ。あんなザコのために私を呼ばないでよね!これでもリーダーなのよ!私!」

「ああ、ごめんね~。今日みたいな日は君しかいなくて…」

「チッ…!どうせ私はクリスマスイブでも暇人よ!」

私はチラッと周りを見た。

周りは人通りが少なくなったとはいえ、チラホラカップルの姿が見える。

イブの夜に1人でコンパクトに話しかけてるなんて職質レベルだし、それ以前に私がかわいそ過ぎる。

ちょっと路地裏に入ろう。

「それと虎さん。私の新しいコスチュームの件、考えてくれた?」

「え?あ、ああ、考えてるよ。」

コンパクトに映る虎マネージャーのつぶらな目が泳ぎまくって水しぶきを上げてバタ足してる。

ハァ…。

「…絶対に考えてないわね」

「いや、その、最近忙しくてさ…」

ハァ…。あぁ、ダメ。ため息が止まらない。

「前にも言ったように、もうあのコスチュームは限界なの!膝上何十センチって話よ。超ミニじゃん」

「だからスカート風の短パンに変えたところじゃないか」

「そんなことは問題じゃないの!足を出すのがもう限界ってこと!」

「え~まだまだ若いしかわいいじゃない。長くて黄色い髪、スタイルにしてもあの頃のまま。僕としてはもう一度ツインテに戻してほしいんだけど」


「ちょっと、虎さんはいつも若い若いというけどさ、それはあんたから見たらってだけで、私はもう36よ!」

「それはそれで需要があるんだよ」

「需要って何よ!」

全く…女を何だと思ってるの。

信じられないわ。

「とにかく!パンツ型のコスチュームにしない限り私はもう出勤しないから!」

「え?パンツで出てくれるの!?ハァハァ」

「そのパンツじゃないわ!おやじにもわかるように言うと…ズボン型よ!」

「却下」

「はや!却下はや!なんで!?」

「だってズボンなんて需要ないし」

「だから需要って何よ!!」

全く…らちがあかないわ。

「とにかく、もう今のコスチュームでは出ないから。」

「あ、ああ!一つあったよ!新しいコスチューム!ちょっと待って、セーコンに送るから」

私のセーコンにメールが届く。

添付されたコスチュームを開く。

私の服がデジタルからアナログにきらめきながら変換されている。

ん?赤いわね。

赤に白のふわふわ…。

…!!

「ちょっと!何よこれ!サンタコスじゃないの!」

「いいよ~月影ちゃん。超似合ってるよ~」

「イブの日にひとりでサンタコスとか!私泣くわよ!はばからないで泣くわよ!しかも超ミニだし!」

「それはそれで需要があるんだよ」

「死ね!!!」



セーラムムーンは今日も行く。


美女戦士セーラムムーンR①

女の人と携帯灰皿を見ていきなり思いついたトラノベですw

あの少女が今⁉︎と考えたら面白くなってつい…。

誰得ですが、好評なら連載しますw


購読は月額300円(*`Д´)=○)Д ) ゚ ゚

絵師募集((o(-゛-;)オイ…