答えの行方 | ひなたぼっこ

ひなたぼっこ

虐待体験、家出、DV、妊娠、、手術、、、
日のあたる縁側に座って
のんびりと話して聞かせるような
思い出話じゃないから、、、ここに。

母の話を片耳に聞きながら

私は、実父に最後にあったあの日を思い出していた。

 

一度だけ、墓参りの帰りに後妻に見つかり

敷居をまたいだあの日が最後

 

もう十何年も昔

 

あの時にアダムが息子のケンタを実父に抱かせたのが

母に対して後ろめたくて黙っていたが

後年、話のついでに

偶然の再会を果たしたことを話したことがある。

 

それを思い出したのか

母は電話口でその時の状況を聞き直してきて

私は、覚えてる限りの様子をもう一度話す。

 

     自分の血を分けた孫を

      抱かせてあげることができて良かった

 

母の声が揺れていた。

 

晃兄さんも、後妻との間に生まれた息子も未婚

後妻の連れ子の子供達は時々子守を頼まれていたらしいが

母は「血縁」にこだわって、そう言った。

 

そうかなぁ

そもそも既に覚えてなんかいなかったんじゃないかしら

 

私が、何度あっても彼の顔が思い浮かばなかったように

実父も私達の事など心の隅にもなかったのではないか

 

それはどことなく確信めいた気持ちだった。

心にあれば会いたがっただろうし

連絡を取ろうと思えば

近所は母の親戚で囲まれてるのだからなんとでもなったはず

 

そんな冷めたことを考えてたから

今更ながら「情」を持ち出したような

母の涙声にますますシラけてくる。

 

私て薄情なんだなと自己嫌悪もかげり出した頃

電話の締めで母が言った

 

     

    遺産相続は絶対放棄するなよ。

    あの家と土地は母さんが買ったものなんだから

    晃兄ちゃんに残さなきゃ。

 

 

って。

 

ものすごく現実に引き戻された。

 

さすが、我が母。

 

ここでもやはり

私は「身内」じゃないんだなと思う。

血は繋がっていても、その土地について言う権利などない

 

母が心配している晃兄さんの

助けになるのなら、いいよ。

 

 

電話を終えて

数年ぶりに晃兄さんの番号を探しかけてみた。

 

今頃、葬儀に参列してるのだろうか?

出ない通話ラインを一旦切る。

 

数時間後、もう一度掛け直した。

 

きっと忙しいのだろう、と気を使い

無機質な呼び出し音から耳を離した。

 

兄さんは、今何を考えてるんだろう