何かもう

希望しかないような気がするぜ

 

先月「昨日、君が死んだ。1」をレビューして

この「キラキラセブン」のことも

ほんの少し触れたら、

読み返したくなって

ちゃんとレビューしなくっちゃ!って

思ったのでした。

さすがのストーリーテラーっぷりです!

タイトルどおり

7つのキラキラしたお話が詰まっていて、

BLではないけれど、

すごく楽しみめると思う。

どれもショートとは思えない奥深さと余韻を含ませてくれる。

 

ARUKU著コミック「キラキラセブン」

一度読んだらクセになる唯一無二の世界。 周囲に馬鹿にされながらもツチノコ探しをやめない同級生とのひと夏の体験「アンダースタンド」。再会した初恋の人が、月が満ちてゆくにつれ人間ではなくなってゆく「フィッシュスケール」。世間から隔離され汚染地を監視する守り人が、孤独の中で得た歪で純粋な恋人「マイガール」ほか、稀代のストーリーテラーが贈る、煌めく7つの作品集。魂に爪跡を残すような濃密な感動をお届けします!

 

やっぱりARUKUさんは稀代のストーリーテラー!

7話の短編だけどどれも心をつかまれてしまう。

数話はネットで既読だったけどまさにタイトルどおりのキラキラセブンストーリー!

話は短いのにキャラの背景や心情がいつも強烈に伝わってくるんだよね。

それがちょっと物悲しいものがあったりで。

ARUKUさんの作品は現代であってもファンタジー色が強くて、

でもリアルに気持ちがわかるので

キャラへの気持ちに寄り添うことが出来るんですよね。

つちのこ可愛かったな〜w
でもやっぱり『マイガール』と『レインキャット』がお気に入りかな。

 

『アンダースタンド』

主人公は女子高生。

回りの友人達と話を合わせなんとなくを

毎日やり過ごしていたまなみ。

そんな彼女はある日道ばたで一匹のつちのこを見つけてしまう。

そこから世界が一変するのだ。

いや、世界は変わらない。

変わったのはきっとまなみだよね。

まなみはつちのこを探していると噂されてバカにされているクラスメイトのハリー(針井くん)と

ひょんなことから一緒につちのこを探すことに。

まなみは無意味な日々から脱却し、

つちのこ探しで俄然毎日が楽しく充実感に満ちあふれた日々に変わるのだ。

ハリーが実は美少年であったことを気付いたまなみが

クラスの連中は知らない事だが、何だかムカつくような得したような変な気分

と言っていたのが、すごく乙女心というか恋する気持ちが表れてて好きだな〜。

そしてぴ〜と鳴くつちのこが可愛かったっす!

 

『リバース』

「世にも奇妙な〜」なドラマにもなりそうなお話。

しかも寝ている間に男女が入れ替わっているという、

あの人気アニメ映画のような設定だけど内容は全然違いますw

麗はここ最近ずっと見ている夢がある。

自分が男となって殺し屋をしているのだ。

ただその夢の世界は現実の世界とは全然違う様相なので

前世とかパラレルワールドとか

なんかそんなことを思っていたら、

夢の中のレイともメモを通じて会話が出来ることを知る。

そして母親の法事で帰省した麗は古くから知るお寺から

衝撃の真実を知らされるのだった。

果たしてレイと麗の繋がりとは。

ミステリーではないのに、はらはらどきどきの展開は

さすがと思ってしまう。

 

『フィッシュスケール』

高校時代に片思いをしていた七海と再会したOLの景山。

ふらふらしている彼を助けた景山は

彼の秘密を知ってしまう。

それは彼が人魚の末裔であるということ。

もうすぐ完全に人魚になる七海は景山のバスルームで

完全体になるまで過ごす事に。

そしてとうとうその日はやってきた。

海に帰る七海を見送ることしかできない景山。

だけど彼女は確実に以前の彼女より心が強くなっていた。

これも女性が主人公だけど

会社の嫌な先輩への対応とか強くなった彼女を見ることができて

この片思いが彼女を変えたことがよくわかるストーリー。

 

『マイガール』

ほんと、これ大好き!

この話が起点となっていろんな作品に波及しているんじゃないの?

と思わせてくれる。

毒霧が吹き出すケガレチと呼ばれる土地。

ケガレチでは地の底からドグサレモノ(肉が腐れ落ちた骸骨のようなもの)がわき出し

生きた人間を食べようとするのだ。

ドグサレモノが町に出ないよう柵で囲っているのだが、

その柵を守っているのがイミベモリと呼ばれる役割の者なのだ。

イミベモリは家族を持つことも娯楽も許されず

一生を柵の監視に費やされるのだ。

ところがそのケガレチにはたまに空から人体の一部が落ちてくる。

若いイミベモリはその人体を繋ぎ合わせ

理想の女性(新聞の広告で見た)を作るのだったが‥‥。

これがイミベモリと彼が作ったソラの生活の始まり。

美少女となったソラは天真爛漫で純粋にイミベモリを慕ってくれる。

ところがソラの存在が町の警官に知られることになり

ソラは彼らに襲われそうになるのだけれど。

このコミックスのカラー口絵は1Pのカラー漫画になっているのだけど、

まさにこの続きだったとは!

短いページ数とは思えないこの世界観の作りかたが凄いよ!

 

『ブリード』

「マイガール」の何百年後の世界?

地獄のフタが開いてそこから湧き出てきたものを

監視するため柵で穴を囲ったとあるんだよね。

そして柵が壊れ悪いものが出てきてしまったと。

その悪いものと竜に乗って闘う騎士たち、

竜を育てる飼育員の話。

それぞれの立場に立てばその立場によって

正義というものが異なってくる。

竜はペットじゃないし、

戦地へと赴くのはわかっていても

やっぱり育てる側は情が湧く。

また愛情がなければ竜を育てることはできない。

だけど愛情だけでは厳しい戦地で闘う竜を

育てることはできないのも事実。

やるせなさと切なさもあるけれど

色んなことを考えさせられた。

 

『レインキャット』

これも「マイガール」と匹敵するくらい好き!

やっぱりBLチックなものが好きなんだなw

ある日伊香流は猫を拾う。

猫といっても猫のような男であって本物の猫ではない。

頭に手術痕のある猫は言葉も怪しく生活自体も危なげだ。

でも彼には唯一にして最大の特技があった。

それは物を修復する能力が長けているということ。

滑りの悪い引き戸から始まりパソコンやドライヤー、冷蔵庫といった家電のみならず

蝶の片羽や人の身体の痛みまで整体で治してしてしまう。

それでもやっぱり元の猫を知っている伊香流は

自分自身を治せと思わず叫んでしまうのだった。

人って純粋なものを前にすると

己を恥じてしまうものだ。

この二人の関係性は?と問われると

友情でもないし、愛情でもないし、

なんだろう?

伊香流は決して以前の猫を好きではなかったことだけは確か。

でも猫は彼を無条件で慕っているところを見ると

もともと伊香流のことを信用していたのかも知れないね。

 

『インソムニア』

魔界?のパン屋さんが主人公。

舞台が魔界?ということ以外は

普通の人間の生活の営みと変わらない。

そしてパン屋さんはゾンビなのだ。

超絶美味しいパンだけどなんせ作っているのがゾンビなので

魔界の住人たちも敬遠気味。

ゾンビのフーさんには憧れている存在がいる。

戦場の大天使?ガブ様だ。

真っ白の軍服に真っ白な羽。

彼は自分が汚れるのを気にもとめず

皆が敬遠していた倒れているフーさんを助け起こしてくれたのだ。

以来彼に焦がれている。

フーさんは優しくて真面目なのに

ゾンビということで仲間な魔物たちからも忌み嫌われて、

これを読むとちょっともの哀しさもあるのだ。

なんだろう。ARUKUさんは決して直接ではないんだけど、

人として大切にしなくてはいけないものや

本当の美しさとは、っていうのを

いつも訴えてくるような気がするよね。

 

どの話もショートというのを

忘れてしまう。

そして不思議な世界観なのに

なぜか説得力もある。

是非ともこのキラキラセブンストーリーズで

不思議な世界の扉を開けてみませんか?

 

H度なし(BLじゃないので)

ストーリー度満月満月満月満月満月