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このお話を手に取ってくれてありがとう。


元気ですか。

総じて楽しく過ごせていますか。

夢はありますか。目標はありますか。

誰かを愛することができていますか。

自分のことが好きですか、愛せていますか。


このお話は、お姉ちゃんが生まれる少し前からスタートします。お父さんがうつ病や脳出血の後遺症と共に歩み、ある時は楽しみながら、家庭を築く・生活を軌道に乗せるという夢に向かって、小さな目標を少しずつ達成しながら、懸命に生きた6年間の記録です。

お父さんは、大学卒業後、希望していた業界でない会社に勤めはじめました。転職活動中だった2004年頃、うつ病(非定型うつ病・反復性うつ病性障害)を患いました。転職は叶いましたが、うつ病は悪化するばかりで、2006年にはうつ病治療のため会社を休職し、入院することになりました。うつ病については、2012年の現在も継続治療中ですが、症状は随分安定してきました。

2007年、うつ病治療で入院中に、脳動静脈奇形による小脳出血を発症して倒れました。幸い、命は助かりましたが、1年近く脳神経外科・リハビリテーション科での入院・リハビリを余儀なくされました。発病当初は意識不明の状態で、半月後に受けた手術後も自力では立ち上がれない状態でした。数々の後遺症が残りましたが、リハビリの成果により、自力での歩行が可能になるまで回復し、退院することができました。自宅に戻ってからも継続的にリハビリを続け、2012年の現在では働きに出られるまでに回復しました。

お母さんは2006年頃、大学院に通い勉強や実習に忙しい毎日を送っているなかで、うつ病(大うつ病性障害)を患いました。食事もとれないほど衰弱したため、学校を休学し、治療のために入院しました。

お父さんとお母さんは、同じ頃、同じ病院に入院し、そこで出会いました。

お互い、うつ病を寛解させるため、休み明けの仕事や勉学にプラスにするため、それぞれ努力をしていました。それらを支え合う中で、入院中ではありましたが、お付き合いが始まりました。

お父さんが脳出血で倒れたのは、それからわずか2か月後のことでした。

お父さんは「会社に戻る」、「お母さんともう一度一緒に歩く」、そして「お母さんが大学院に戻れるようにサポートする」ことを目標に、リハビリを続けました。入院から約半年経過した時にお父さんは退院し、ひとり暮らしをしていた自宅に戻りました。

お母さんはお父さんをサポートするために、単身、お父さんの自宅に来てくれました。お母さん自身のうつ病を、落ち着いた環境で寛解に向けて努力する、そんな意味もありました。そして、二人三脚で脳出血後遺症とうつ病に立ち向かっていきました。そんな中、「お母さんが大学院に戻れるようにサポートする」という目標は達成できませんでした。そのかわり、「お父さんが復職したら結婚する」という目標を新たに立てました。


やがてお父さんは復職します。お父さんとお母さんは、「お父さんが復職したら結婚する」という目標に向かって順調に進んでいました。そして、結婚することができました。しかし、数々の後遺症を負い、うつ病が完全に寛解していなかったお父さんには、通勤・仕事・会社という環境はきつすぎました。仕事を休みがちになったお父さんは、退職し、もう一度リハビリテーションをみっちりとやることを決めました。リハビリテーションに専念することになったお父さんを見て、お母さんは家計を守るため、自ら働きに出る決意をしてくれました。その頃、お母さんのおなかの中にはお姉ちゃんがいたにもかかわらず。


お父さんがリハビリテーションに励んでいる中、お姉ちゃんが生まれました。数々のハードルを乗り越えてきたお父さんとお母さん。そんなふたりにとって待望のこども。愛さないわけがありません。だけど、それだけじゃない。他人から愛されるだけでなく、自分から他人を愛することをしてほしい。お姉ちゃんが生まれたとき、お父さんとお母さんは、お姉ちゃんにそう願いました。


「生活を軌道に乗せる」ため、「再就職する」ことを目標にしたお父さんは、リハビリテーションに励みました。お母さんは、仕事と家事、育児に励みました。お父さんは再就職できました。お母さんは順調に仕事、家事、育児をしています。日々の生活に追われている中、気がつけば、お母さんのうつ病はほぼ寛解していました。


家庭が新たな高みに向かおうとしている今、お父さんはこれまでの6年間の軌跡をまとめようとしています。

記憶は徐々に薄れていきます。そのまま忘却の彼方に追いやるにはもったいない。記録に残しておこう。そしてお父さん・お母さんがどのように懸命に生きてきたかをあなたたちに知ってもらいたい。何かあなたたちの役に立つこともあるかもしれないから。そう考えて、お父さんはパソコンに向かっています。


もし読んでくれたら、今一度、最初の質問に立ち返ってほしいです。

このお話を読んでくれている今も、お父さん・お母さんが、そしてあなたたち自身が、あなたたちにとって愛すべき存在であることを願っています。


2012年4月