「入院した方がいいでしょう。」


会社の医務室。私と上司と産業医の先生の3人。産業医の先生は私の話を聞いて、そう仰いました。


出勤途中での高血圧、倦怠感、頭の疲れ、さまざまな症状で会社を休みがちになっていました。その出勤状況を産業医の先生は静かに聞いておられました。自ら望んで処方してもらったとは言え、計15種類の薬を服用していると聞いた産業医の先生は驚かれました。そして、まずは薬を減らす治療をすすめるよう助言してくれました。


「減薬治療を行うには、入院するのがいちばんいい。」


産業医の先生は、そう仰いました。

上司は、産業医の先生が仰ったことを聞いて、すぐにでも休職して入院するようにと、手続を進めてくれました。


自ら望んで転職をし、学生時代から就きたかった仕事にようやく就くことができたのもつかの間。やっと自分の思い通りの仕事ができる、やっと自分の思い通りの仕事ができる、学生時代からあこがれていた職業に就けた、転職がかなった当時はそんな喜びでいっぱいだったのに、うつ病(と高血圧症)という思いもかけない病気たちによって、その喜びは打ち砕かれてしまいました。


その一方で、


「ようやく、通勤時の重苦しい気分から解放される。」


そうした思いも頭をめぐりました。会社を休みがちになってからというもの、平日は毎朝毎朝、「会社に行かなきゃ。」「今日は休もう。」「いや、今日は行かなきゃダメだ。」という葛藤が続いていました。産業医の先生から正式に「休んでもいい。」とお墨付きをいただき、そうした毎朝の煩わしさから解放される。なぜか、晴れやかな気分になりました。


「実家から通える、喫煙コーナーがある総合病院にしよう。」

院内全面禁煙の病院が多い中、入院の申込をしようと考えた病院は、知人が勤務していたということもあり、何度か訪れたことがありました。そのため、喫煙コーナーが完備されていることを知っていました。それぞれの病院の治療方針も、病院決定のための大事な要素ではありましたが、それ以上に入院生活を送る上で煙草が吸えるということが、そのときの私にとっては重要なことでした。昔から、こう、と思ったら、次の行動が早かった私。さっさと休職の手続を取り、すぐに実家へ戻りました。そして入院の為の診察を受けるべく、当時かかっていたクリニックの先生に紹介状を書いてもらい、喫煙コーナーのある総合病院の診察の予約を取ったのです。