評価の話を一度お休みにして、一年生の「少年の日の思い出」の授業案について書きます。
この話はエーミールの「そうか、そうか、つまり君はそんなやつなんだな。」で有名な話です。
「蝶好きだった少年時代に、エーミールの貴重な蝶をつぶしてしまい、謝罪(実際には謝っているのか怪しいが)を受け入れてもらえず、最後に自分の蝶をつぶす。」という話を、私のところに来た客が語る。というお話。
昔から教科書に載っているので、読んだことがある人も多いと思います。
ねらい
・読書を通して、様々な価値観に触れ、自分の考えを広げる。
・文章中の描写に着目して読み、内容を理解する。
やりかた
①文章を一読し、初読の感想を書く。
②「なぜ客は私にこの話をしたのか?」を考えるという目標を設定する。
人が話をするときには、必ず意図があるという前提に立って考えます。
客は自分の少年時代の話を「恥ずかしい話だが・・・」と言っています。何が恥ずかしかったのか、そして、何をわかってほしかったのか考えます。
その前に、この物語で、少年がエーミールと会話する場面が2度あります。
一つ目は、「少年が珍しいコムラサキという蝶を見せるとき」、もう一つは「蝶をつぶしたことを謝りに行くとき」です。
客が私に話をした意図を考える前に、少年がエーミールに話しかけた意図について考えさせます。
③少年がコムラサキを見せた意図を考える。
少年は、珍しいコムラサキを捕まえたとき、エーミールに見せに行きます。
エーミールは教師の息子で模範少年です。少年はエーミールに嫉妬していました。
ではなぜ見せたのでしょうか。
・コムラサキのことを自慢したかった。→すごいって言ってほしかった。
・エーミールにぎゃふんと言わせたかった。
・エーミールなら、価値をわかってくれると思った。
などの意見があります。
しかし、エーミールは価値を認めた後、展翅の悪さを指摘します。少年が捕まえたコムラサキは触覚が曲がっていたのです。
指摘をされ、少年は腹を立てます。これは、少年が期待していたことではなかったからです。
なぜ腹を立てたのか、どうしてほしかったのかを考えることで、少年とエーミールの人物像を明確にします。
④「蝶をつぶしたことを謝りに行くとき」の意図を考える。
少年はエーミールの家に行き、ことの顛末を説明します。「ごめんなさい」を言った描写はありません。少年は「説明しようと試みた」だけなんです。
エーミールにわかってもらえないとわかった少年は、自分の蝶をあげようとしますが、断られ、イヤミを言われます。
また腹を立てる少年ですが、立ち向かうことはできず、少年は「悪漢に決まって」しまいます。
この表現から、少年は「自分は悪い奴だと思ってほしくない」「わざとやったわけではない」ことを理解してほしいという意図があります。
しかし、エーミールからすると、蝶をつぶしたくせに言い訳をするやつにしか映りません。
この二人のやりとりを、どんな意図があったのかと考えることで、少年やエーミールの思い、人物像をより明確にします。
⑤客が話をした意図を考える。
さて、客が私に「恥ずかしい」話をしたのはなぜでしょう。
客は何を「恥ずかしい」と思っているのか。
私にどんなことを求めているのか。
ここは生徒に考えさせます。あえて私の考えはここには書きません。
このように、「話の意図を考えよう」という発問で、どんどん読みが深くなります。
私もこの流れで授業をやってみたい。やってみた感想を聞きたいです。