引越しの挨拶をしないまま3日が経ち

もはや、このままで良いか?   
…という気持ちにすらなっていた。


あの…行為の際の嬌声が
いまだ 耳から 離れず、顔を合わせるのが 気まずかった。

……いや、気まずいのは ワタシだけであって

向こうは ワタシが 聴いていたことに
気づいてないけど。


まあ、そもそも  このご時世…
隣近所の付き合いなんていうのも
希薄なものですから。

別に  いいんじゃない?

などと自分で理由を付けて…
お隣さんとは、今後とも 
極力関わらない方向で行こうと決めた。


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あれ…食いもんがねえや…」

基本  出不精なワタシ。

マメに買い物などするワケもなく
気付けば冷蔵庫はカラッポで。

仕方なく、コンビニへ向かおうと
建て付けの悪い  ドアを開けた。


「わっ!!
…ビックリした~?!」


ワタシが勢い良く開けた 
ドアの先には

顔立ちの整った…
細身の 美青年?が立っている。

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あ……お隣さん、だ。


初めて見た顔なのに 直感する。


歳はワタシと同じ位?だけれど
全体的にお疲れモードのワタシとは違い

リア充…っていうの?

雰囲気というか…
彼を取り巻く空気が暖かい。

溢れるような笑顔で話かけてきた。


「あ、やっぱり!  お隣…新しい人が入ってたんだね!   
オレ、相葉です。隣、ずっと空いてたのに…どうも、物音がするなって思った!(クスっ)  笑
…あ、チョット待ってて。
翔ちゃん!来てよー!!」


しょう ちゃん?
あ…昨日の彼女?
(Hのお相手ね?)


見ると
表札代わりに貼られた紙には

「櫻井・相葉」

と書かれている。

新婚さん…ではなく 
同棲してんのかな?


お隣のドアが開き
顔を出したのは…

これまたワタシと同じ位の年齢の




…美青年だった。



あれ?

一瞬…変な 考えが 頭をよぎる。

いやいや、別に この二人が…
なんて ことではないよね。

どっちかが、彼女を連れ込んでたって事かな?


…などと、ワタシの頭がフル回転してる間に


しょうちゃん   と呼ばれた
頭の切れそうな 美青年は

ワタシの思考を読み取ったように

クスリ、と笑った。


「櫻井です。よろしくお願いします」


深々と頭を下げる。

ワタシは…慌てて引越しの挨拶に用意したタオルを取りに行く。


「あの、挨拶が遅れて…すみません。
二宮です…よろしくお願いします」


おずおずとタオルを差し出すと
柔らかな物腰でそれを受け取る。


「…ご丁寧に ありがとうございます。
あれ?二宮さん、お出かけですか?」

「あー、ええ。
飯を買いに、コンビニへ行こうと…」

「?!  
 なら、家でご飯 食べていきなよ!
すぐ出来るから!ね?」


相葉さんが人懐っこい笑顔を向け

ワタシを部屋に
招き入れようとしたけれど

ご近所付き合いは極力しない方向で、と思ったばかりの ワタシ。

ココは 丁重にお断りしようと 
言葉を探した。


「あの…お気持ちだけで結構…「遠慮しないで、どうぞ?二宮さん」


ワタシの言葉を遮って
櫻井さんが ドアを開けた。


なんだか…

有無を言わせない雰囲気が
そこにあった。



つづく

2015.1.31  miu