続きです。






そんな時…

あまり  鳴ることの ない  ワタシの
携帯電話が

突然、着信音を 奏でた。

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それは

倒産した、前の会社で  
一緒に働いていた   

潤   からの ものだった。


潤とは、同期で 
仲も良かったのだけれど

会社が 倒産する前に  独立し…

ワタシと 同じ歳でありながら
既に自分の  会社を経営していた。


独立する時に  
会社側と チョット揉めた事もあり

それからは…

ワタシと 潤 が 連絡を取る事は無くなっていた。


「なあ、ニノ。
こんな事になってるんなら…
連絡してくれれば 良かったのに。

…うちの会社に 来いよ」


どこからか  
ワタシの境遇を聞いたのか

心配して、連絡を くれたらしい。


…一瞬  迷った。


「…少しだけ…返事を待ってくれる、かな?」


そう  言って 電話を切った。







side  智

んふふふっ。


思わず…思い出し笑いを
してしまった。

不思議な人達だったな。


隣に住んでいる ふたり。
櫻井さんと  相葉さん。


にの と…

お父さんと お母さん みたい。


…自分で想像して
思わず 笑ってしまった。


画材店からの帰り道

そんな事を 思いながら


なんだか  あったかい気持ちで
家路を急ぐ。


アパートの 錆びついた階段を
音を立てて 上り

ノックをしてから

鍵の かかっていない部屋の
ドアを開ける。


「ただいま~!」

「…お帰りなさい」


…あれ?


「…どうか した?」

「 はい?  どうも…しませんよ」


なんだろう。

何か…薄い フィルターが  
かかったような そんな 感覚。

その正体が 
わからないまま…


おいらは 

ニノを 描き始めた。



描き進めて いくうちに
違和感に 気付く。


描いては 消してを繰り返し

それでも…
少しずつ  色を乗せてゆき

描き上がりに近い状態に
なったところで

手が 止まっていた。


…にの の絵と 並行して
進めていた 事が ある。



『金が貯まると、いろんな所に 絵を描きに行くんだ。
今度、外国にも 行ってみようと 思ってて…』



パスポートの 用意はできた。

向こうでは  知り合いの家に
世話になる事も決まり…


準備は 既に整っていた。



今回の バイトで
予定していた 金額は 貯まり

…そのバイトも 今月いっぱいで
辞める事を伝えてあった。


後はもう
あの絵が  書き終われば

予定通り 日本を出て…



そう  思っていた。




つづく


2015.4.6  miu