〜相葉の場合〜




「それって、どういう…」

「和はさ…相葉くんのことを”推し"だと思ってるんだ。尊くて神のような存在。ファン…って言い方が分かりやすいかな」

「オレなんて、その辺にいるただの高校生だけど」

「…あいつ、恋愛にトラウマがあってさ。
相葉くんのこと好きなのに認めたくないんだ。
好きになった相手から拒絶されるのが怖いんだよ。
だから、好きだって気持ちを推すって言葉にすり替えて誤魔化してる。
傷つきたくない故の…自己防衛なんだろうけど」

「ちょっと待って。じゃあ…
今のままじゃ、オレが告白しても恋人同士にはなれないってこと?」

「んー…大好きな推しからファンサをもらったようなもの?」

「あぁ!コンサートで『俺ら5人で5万人を幸せにしてやるよ』みたいなことか!!」

「………いや、それとはちょっと違う気がするけど…」

「好きって言っても、本気にしてもらえないってことかなぁ」

「うーん…多分、存在してる次元が違うと思ってんだろうな」


なるほど、松本くんが簡単な話じゃないと言ったのも頷ける。
でも…だったら、どうしたら良いんだろ。


「やっぱり、段階を踏んだ方がいい?
いきなり恋人に立候補するよりは、友だちから始めた方がいいのかな」

「そうだな。少し関係性を縮めてからの方がいいと思う。
あぁ、じゃあ…とりあえず俺と友だちになるってのはどう?」

「…へ?」

「俺たちが友だちなら、和と一緒にいる機会も自然と増えるし。俺が相葉くんと対等に接してるのを見れば、和の相葉くんに対する見方も少しは変わるかも。
…嫌、かな?」

「嫌だなんてとんでもない!喜んで♪
松本くん…松潤って呼んでいい?!嬉しいなぁ」


「よろしくね」と松潤の両手を握り
ぶんぶん振ったところで始業のチャイムが鳴り響き

オレたちは教室まで猛ダッシュすることになった。





休み時間。

チラリと横を見れば、なんとなく元気のない様子のにの。
やっぱり昨日のこと気にしてるよね。
よし、グズグスしててもしょうがない。とりあえ謝ろう。


「にの、昨日はごめんね。
……怒ってる?」

「え?…怒ってなんて…ない、けど」

「本当?」

「うん…オレこそ…」

「良かったぁ!!」


本当にごめん。
迫って…困らせたこと、反省してます。

でも、にののこと好きなんだ。
その気持ちが先走ってしまったことは謝らないよ?
ちょっとずるいかもしれないけど…
そこは譲れないんだ。

この気持ちは、いつか…君に伝えるから。

それまで待ってて?


「じゃあ、これあげる!」


仲直り?の飴ちゃんを
にのの可愛い手の上にのせた。



つづく




miu