〜二宮の場合〜
え、どう言うこと?
教室の入り口に潤くんの姿が見えたから、オレに用があって来たのだとばかり思っていたのに、進んで行った先は相葉くんの席の前。
驚いて声も出ないオレを横目に、ふたりで仲良さそうに話している。
ちょっと潤くん。
あなた何してんのよ。
目で訴えると、友達になったんだよ って。
は?いつの間に?!
朝会った時は、そんなこと言ってなかったじゃないのよ。
…なんて、思ってたんだけどさ。
よく考えてみれば、同じ作家さんを好きなふたりだし。趣味が合うのかもしれない。
ってか…見慣れすぎて忘れてたけど、潤くんも美しいのよ。一人ずつでもかっこよくて麗しいのに、相葉くんとふたり並んだら目立つどころの騒ぎじゃない。男子も女子もこのふたりのオーラに当てられて近寄ることすらできないみたい。それなのに完全モブのオレがここにいるって不思議。
「なぁ、良いだろ?和」
「え?!あの…えっと、うん」
しまった。何の話をしてたんだろう?
まぁ、話を振ってきたのは潤くんだ。合わせておけばフォローしてくれるだろう。
オレは、話の内容を確認しないまま、うん と頷いた。
「マジで?!やったー!嬉しい」
「…へ?」
相葉くんは何をそんなに喜んでるんだろう?
何だか…聞いていませんでたとは言い辛い。
助けを求める視線を向けると、潤くんはニヤリと含み笑いをしている。
「じゃあ、これ」
潤くんが相葉くんの手に渡したのは、オレのお手製のお守り。
えええ、待って!何でそんなものが。
驚いて声も出ないオレを横目に、潤くんは自慢げに説明し始めた。
「和のお守り、めちゃめちゃ効くんだよ」
「そうなんだ!これがあれば次の試合勝てるかも。にの、松潤に借りるね」
いやいやいや。
それはかなり前に、潤くんと翔ちゃんがうまくいきますようにって願いを込めて作った恋愛成就のお守りで。決して必勝祈願のお守りではありません。
…ってか、確かにふたりが仲良くなれば良いなぁと思って、心を込めて作ったけどさ。それだけ。こんなものにご利益なんてあるはずないじゃない。それなのに、相葉くんってばすごく嬉しそうで…
今さらダメとは言えない雰囲気だった。
「…あの、でもさ。それは潤くんに作ったやつだから、新しく…相葉くん用に作るのでいい?」
「え、ほんと?!オレのために作ってれるの?!」
自己流ではあるけれど、ぬいを自作するくらいの器用さはある。
あぁ、そうだ。ぬいの衣装…ユニフォームも良いな。それも作ろう。帰りに100均寄って材料買って帰らなきゃ♪
「楽しみだなぁ♪
あ、そうだ!松潤、飴あげる」
「おう、サンキュ」
あ。
潤くんの手に乗せられた飴を見て
何だか…
ちくり、と胸の奥が痛んだ。
数日後。
「相葉くん、これ…」
怪我のありませんように
相葉くんが…
チームが、全力を出しきれますように
ひと針ひと針、心を込めて縫い込んだお守り。
神にも等しい相葉くんに渡すお守りに、神頼みをするのも如何なものかと思いながらも、近所の神社で念を込めてきた。
このオレがお賽銭100円も入れて。
潤くんに渡したお守りの時は10円だったから、その10倍は効くはずよ。
出来上がったお守りを相葉くんに手渡すと
テンション爆上がりした相葉くんに、ギュッと…抱きしめられた。
つづく
miu