〜相葉の場合〜






ギリギリで放ったボールが、綺麗な弧を描きながらゴールに吸い込まれていく。
そして、試合終了のブザーが鳴った。

得点板を振り返る。
一点差でオレたちの勝利。

ずっと練習はしてきた。
バスケ部一丸となって頑張ってきた。

…でも、今回の相手は間違いなく格上で。
ちょっとだけ、諦めムードが広がっていたんだ。

でも、この日は何故か…みんなが絶好調超!
正直、実力以上の力が出たと思う。
それはオレも。
だって、にの(と松潤)がいるんだもん。見に来てくれてる。
好きなコに良いところ見せたいなんて…
試合が始まったばかりの時は、どこかそんなこと思ったりもしたけれど。
途中からはもう必死でそれどころではなかった。

…でもさ?
にのの声は届いてたんだよ。
相葉くん頑張って って。

その声が届く度、体が軽くなって

騒がしいはずの会場から雑音が消えて
視界がクリアになって
ゴールまでの軌道がはっきり見えて

…そして、最高の試合ができたんだ。


みんなで喜びを分かち合い

観客席を見上げれば…
もう二人の姿はなくて。

オレは、にのからもらったお守りをギュッと握りしめた。




一度学校に戻り、ミィーティングをして解散。
その足で、オレはにのの家に向かっていた。
本当はズルかもしれないけど、松潤に場所を教えてもらい、電車に飛び乗る。
駅からは歩いて15分くらい?
あぁもう。早くつかないかな。もっとスピード出してよ。
なんて、我ながらせっかちなのは自覚がある。
はやる気持ちを抑え、開いたドアから飛び出した。

スマホを頼りに、にのの家へと向かう。
途中…ちょっと迷いそうになりながらも、なんとか到着した。

深呼吸をして、息を整える。
ピンポンを押してから…

自分が、汗でびっしょりなのに気づいて慌ててしまった。

え、やばい。
オレ汗まみれじゃね?
着替えたはずのTシャツが、既に濡れていた。
後先考えずに来てしまったけど、こんな格好でにのに会うなんてどうよ。
せめて、汗拭きシートで拭いてから…って、ここ玄関だし。戻ったとしても道路でそれは不審者じゃない?
迷っているうちに、玄関のドアがカチャっと開いた。


「別に、ピンポン押さなくてもいいのに、潤くん。…って、え?!相葉くん!?何で…」


…もう仕方ない。
汗拭きシートは諦め、一歩下がって頭を下げた。


「にの、今日は応援に来てくれてありがとう!すごく嬉しかった!!」

「いや、その…」


試合…良かったね、と
右ナナメ45度から見上げたにのが、あまりにも可愛くて。
玄関先であることも忘れ、抱きしめたい衝動と自分の汗の匂いで葛藤して挙動不審になっていたオレの背中を、誰かがドンっと押した。


「中に入るなら入れよ。外から丸見えだぞ?」

「うゎ、ごめんなさい。って、松潤!!」


自分の家のように振る舞う松潤に促され、オレはにのの家に招き入れられることになった。




つづく



miu