つづきです




松潤視点にかわります( ・∇・)







「え…?和、どういうこと?」


「ごめん、もう…アナタとは終わりにしたい」


「意味わかんねぇんだけど」


「潤くん、さよなら」







!!!


伸ばした手は、空を切り


冷たく濡れた枕の感触に

また同じ夢を見ていたことを知る。


なぜか…振られた俺よりも、深い悲しみの色が滲んでいたあいつの瞳が、未だに忘れられない。


あれから、もう7年も経つというのに…


我ながら女々しいよな。



はぁ。

ため息をつきながら、浅い眠りに疲れた体を起こすと、枕カバーを外して洗濯機に放り込んだ。


目覚まし代わりのスマホをポケットに突っ込むと、コーヒー豆をミルで挽いて、丁寧に湯を落とす。香ばしい香りが漂うカップに手を伸ばすと、変なタイミングで電話が鳴った。



「…はい?」



一年がかりで書いていた長編小説が漸く書き上がり、この後しばらくはのんびりしようと思っていた。だが、昔世話になった人からどうしても新作をと頼み込まれ、正直気乗りしなかったが、断りきれず短編小説を執筆することになっていた。

月イチで、前中後編の三部構成。

今日は、その第一回目の原稿の受け渡し日なのだが…



『松潤、今日取りに行く原稿なんだけど…おれ行けなくてさ。代わりにウチの社員行かすから、よろしく』


「ふうん…別に誰でも良いけど。こんな田舎まで、その社員も災難だな」



電話を切ると、窓際に置かれた椅子に深くに腰掛ける。


紅く色づき始めた樹々を眺めながら

また一つ…ため息をついた。




妻戸 寿門(ツマト ジュモン)とは、オレのペンネームであり、本名の 松本 潤(マツモト ジュン)のアナグラム。


7年前、恋人に振られた。

それから何をやっても上手くいかず、仕事も辞めて…

祖父が昔住んでいた空き家へと移り住んだ。



…愛していた。


でも、彼にとって俺は

取るに足らない存在だったのだと…


その事実が、ひどく悲しかったのだ。



正直、恨み言の一つも言ってやりたかった。


でも、電話もメッセージも…

手紙さえ届かない。

和は俺の前から完全に姿を消し、その後の消息は誰も知らなかった。


不安定になっていた俺は、和という人間が本当に存在していたのかさえ曖昧になってしまって…

ついには、自分の存在まで疑い始める始末。


…今思えば、病んでいたんだと思う。


どうしたらいいのか悩み考えて、自分の奥底にあるものを片っ端から文字に綴った。


それを偶然、大野さんが見つけてしまって…

せっかく書いたのなら、これを小説にしたらどうかと提案してくれたんだ。



何度も何度も書き直し

余計な装飾を削ぎ落とすと


残ったのは…和への恋情だけで


結局は、俺にとって"それ"が全てなのだろうと、自身の失恋をモチーフにした小説へと仕上げた。

そして、それが思いがけずベストセラーになってしまい、今に至るという訳だ。


チラリと時計に目をやれば、まだ約束の時間まで間がある。


遠くで洗濯機の回る音を聞きながら…

オレは、目を閉じた。





つづく



*・゜゚・*:.。..。.:*・'(*゚▽゚*)'・*:.。. .。.:*・゜゚・*


おはようございます♪

まさかの病み潤でごめんください( ・∇・)


最初の設定は、にのちゃんと潤くんを逆にしようと思ってだんだけど…

結局、この形に落ち着きました。


たまには…こんな潤くんも新鮮じゃない?

ね?!( ・∇・)

(どうか苦情は勘弁してください←)




miu