つづきです

まだ潤くん視点…( ・∇・)






いつのまにか、雨音は消え
窓に目を向ければ、大きな水たまりの中にキレイな月が浮かんでいた。


「読み終わった?」

「あ…すいません!オレ…」

「別にいいよ。枚数とか大丈夫だよな?」

「はい、チェックはOKです!
まだ1/3なのに、絶対的名作の予感です…早く先が読みたいなぁ」


目を潤ませながらそう言う和が…
あまりにも昔と変わらな過ぎて、肩の力が抜けてしまった。


「そりゃ良かった。あの…さ、メシの用意できてるから、食えよ」

「いえ、泊めてもらえるだけでありがたいのに、そんなご迷惑をおかけする訳には」

「…作りすぎたんだよ。捨てるの勿体無いから食ってくれ」

「…でも…
あ…えっと、じゃあ…いただきます」


和は最初こそ遠慮していたが、俺がこういえば食べるだろうと思っていた。
シチューを皿に注ぐと、和の前に置いた。


「いただきます」

「…いただきます」


手を合わせて、スプーンを手に取る。口に運ぶと和は美味そうに目を細めた。


「美味しい…」

「…そりゃどうも。お前もビール飲むだろ?」

「いや、オレは…」


返事を聞かず、グラスにビールを注ぎ入れた。
同じように自分のグラスにも注ぐ。

乾杯、とグラスを合わせると、困ったように眉を下げた。


「運転する訳じゃないんだ。少しくらい飲めよ」

「……」

「今日はもう仕事も終わりだろ?
それとも…俺とは飲めない?」

「いや、そんなことは。…いただきます」

ちょっと圧をかけてしまっただろうか。
でも、お互い素面よりも少しアルコールが入った方が本音で話をしやすいだろうと思ったからだ。

和はグラスを両手で持つと、その味を確かめるように一口飲んだ。
? ビール嫌いじゃななかったよな?
7年の間に好みが変わったのだろうか。


「ハイボールにする?それともウイスキーの方がいい?」

「いえ、ビールで…大丈夫です」


俺はグイッとビールを煽ると、強い炭酸が喉を通り過ぎた。グラスを置き、自分もシチューを口に入れる。

……え?

何を食べても味がしなかったのに…
今、口に入れたシチューからは、優しいミルクの風味と野菜の甘みを確かに感じる。
顔を上げれば、和の皿はもう空っぽで、左手に持ったスプーンが申し訳なさそうに行き場をなくしていた。
くすっと笑って皿を取り、継ぎ足すと
体が温まったからか?
それともアルコールのせいか…
透き通るように白かった和の頬が、薄紅色に色づいていた。




つづく



miu