戻ってまいりした( ・∇・)
つづきです

潤くん視点…






酔って、本当に眠ってしまったのか
それとも…寝たフリなのか

どっちなのか分からなかったが、それ以上和を問い詰めることも出来ず、俺も自室に戻りベッドに入った。

だが、目を閉じると、和の泣き顔がチラついて眠れない。

途中までは上機嫌だったはずなのに。
何が…地雷だったんだろう?

いくら考えても、答えは見つからなくて…

寝返りを打っては 繰り返し吐き出される
深いため息の海に

俺は…ただ沈んでいた。





カーテンの隙間から 細く入り込む月明かりが
やがて、白々とした太陽の光へと変わる。

寝不足のせいだろうか、まだ重い体を起こすと、リビングの扉をそっと開いた。

…あれ?いない。

ソファの上には、毛布が丁寧に畳まれ置かれている。
部屋を見渡すと、庭へと続く廊下の先にある、掃き出し窓が僅かに開いていた。

いつもならそこに置いてあるはずのサンダルが見当たらない。

玄関側から外に出て、庭を覗くと
和は空を見上げて、歌を口ずさんでいた。


〜♪〜♪

…それは、初めて聞くメロディ。


あぁ。

そうか。そうだよな。


和は、自分の足でしっかりと人生を歩いている。
そして、この数年間の和の人生には…もう俺は存在していなかった。

7年前に分岐した二人の道は
それぞれ違う方向に向いていたのに

俺だけが、その場にうずくまり
まるで迷子のように、和の影を探していた。


もう…とっくに終わっていたのにな。


そんな当たり前のことに 今さら気づいて
何だか、笑ってしまった。


「! …あ…先生」

「……おはよ」

「おはようございます。
あの…昨日は、飲み過ぎてしまって、申し訳ありませんでした」


和は、深々と頭を下げた。 


「………いや、別に」

「そ、うですか」

「あぁ、そうだ。ひとつだけ…聞いていいか?」 

「はい?何でしょう」

「和はさ、俺の書いた本って…読んだか?」


和は、その大きな目を見開いた。


「もちろんです!全部読ませていただきました」

「……そうか。だったら…うん。もう良いや」

「え?それは、どういう…」

「この話は、これで終わりだ」


会話を強制終了し

俺は…まだ西の空に残る 
儚い光を纏う 有明の月を見上げた。




つづく



miu