つづきです







オレの腰が落ち着くまでの間、何もせず
ただ…ふたり寄り添っていた。


互いの体温を感じ

同じ景色を見て

同じ時を過ごす…


そんな他愛の無いことが、とても幸せで。

昼を過ぎた頃、ようやく動けるようになったオレは、潤くんの車で彼の家に向かうことにした。
コンビニで片手で食べられるものを買い込み、車の中で腹を満たす。

走り出した車は心地よいリズムを刻みながら、高速道路を進んでいった。


「和は寝てていいよ」

「いや、大丈夫」

「俺も疲れたら変わってもらうからさ。先に休んでてよ」

「ん…それなら…」


普段ほとんど運動なんてしてないオレにとって、昨夜の…潤くんとの行為に、躰中が疲弊していた。
でも、それだけじゃなくて。
安心感というか…
何にも変え難い居心地の良さが、優しい眠りを誘っていた。


「じゃあ…潤くんも無理しないで、疲れたらちゃんと言ってね?」

「ああ。わかってるよ」


オレは、潤くんのキレイな横顔を見ながらシートに躰を預けると、束の間の眠りに落ちた。



途中、寄ったSAで運転を代わり、ハンドルを握る。

前回とは違う、ナビの声。
その甘くて少し低い声にドキドキしながら…
都会から離れた、長閑な田舎の景色に懐かしさを覚えていた。


先日の嵐で通行止めとなった区間はまだ開通しておらず、潤くんの家に着くまでにかなりの時間を要した。
それでも日が落ちる前には、なんとか到着することができた。
 

「どうぞ」

「…お邪魔します」


遠慮がちに家に上がると、一度訪れただけなのに言いようのない懐かしさを感じた。

潤くんは窓を開けたりと、忙しそうにバタバタと部屋を行き来している。


「和、もう少ししたら風呂沸くから。そしたら入って?」

「あ、オレも何か手伝うよ」

「…一緒に入る?」

「えっと、先にいただきます…」


今朝の…
狭い自宅アパートの風呂場での光景が頭をよぎり、羞恥で悶えた。
チラリと隣を見れば、笑いを堪えて肩を震わせていて。

「////…何よ」と口を尖らせると、近づいてきた唇が触れ、ぽん と優しく頭を撫でられた。


しばらくすると、風呂が沸いたことを知らせる音が鳴った。
着替えを渡され 向かうと、古い建物と調和するように作られた、その風情に感嘆した。
外観はとても古い…いわゆる古民家なのだが、台所もリビングも、この風呂場も、内装は古き良き雰囲気を残しつつも、使いやすいように手が入れられている。
彼のこだわりが詰まった この家は、とても大切にされていることが見て取れた。

この家の どこにいても
潤くんに抱きしめられているみたいで…

なんだか泣きそうになってしまった。




つづく



miu