ラスト( ・∇・)
結論から言うと、潤くんはまた小説を書き始めた。
…妻戸 寿門 としてではなく、松本潤として。
" 悲恋の王 " とも呼ばれたベストセラー作家は、今では目をキラキラさせながら弱小出版社の平編集者相手に新作ミステリ小説の構想を練っている。
「だからさ、探偵役を平凡にしたいのは分かるのよ。でも特徴を持たせなければ”平凡"っていう魅力が生きないから」
「平凡なのに謎を解いてくのが魅力なんだけど」
「分かってないなー。ミステリなんだから謎を解くのは当たり前。それが単なる平凡じゃつまんないの。そうね…表に出さない裏設定でも良いから、キャラにしっかり個性を乗っけてあげて」
「お前…編集者みたいだな」
「…新人作家にはビシビシ言いますよ?」
「確かに」
潤くんは顔をくしゃっと崩して笑った。
あの後、オレが東京に帰るタイミングで潤くんも一緒に戻り、こちらでの活動拠点とするためのマンションを購入した。
ローンなしの一括払い。この辺りはさすがベストセラー作家というところか。思い切りがいい。
契約が済み、今は…引き渡しまでの間ホテルに仮住まいをしている状況だ。
「和、俺のマンションに越してくる?」
「終電に間に合う生活してれば、それでも良いんだけどね」
「お前、作家よりハードワークだな」
「おかげさまで。でも、潤くんずっとこっちで生活するの?」
「いや、本格的に書き始めるのは向こうかな。やっぱ落ち着くし。でも、月の半分はこっちに来るよ」
「月半分くらいならオレのアパートでもいいのに」
「いや無理だね」
「…確かに狭いけど、泊まれるよ?」
「お前の…あの時の声がデカ過ぎだから」
「ちょ、それは!」
////それはオレだけのせいじゃないよね?
まぁ、それは良いとして笑
オレは変わらず…
吹けば飛ぶような弱小出版社で、小説家を夢見る金の卵たちを育てている。
…この、目の前の尊大な新人を含めて。笑
「潤くん楽しそうだね」
「ん? 書くのが か?
…あぁ、楽しい。
ミステリ小説だけじゃなくて…歴史物とか、今までとは違うジャンルにも挑戦してみたいしな」
「……ねぇ、潤くん。
好きだけど、どうしてもその人と離れなきゃならない物語を書くとしたら。アナタはどんな話にする?」
「…え」
"余命宣告をされた主人公が、猫のように…ひっそりと独りで死に向き合う物語、かな。
大好きな恋人や、大切な友人に自身の死による悲しみを残したくなくて、その真実を隠して離れる…
覚悟の深さと清廉な潔さを、文字にしたい"
あの時はオレの問いに、そう答えた潤くん。
今のアナタなら…
どんな物語を綴るの?
「んー…
離れなくて済む方法を探す、かな。
全力で抗って…自分のやれる事を全部試して。
それでもダメなら、その時は、訪れる別れの日まで笑って過ごせるように、ふたりでいっぱい楽しい想い出をつくる。
もうこれ以上無いってくらいに幸せに包まれて、別れたあとも…胸の中の宝物が、温かな光を放つように」
そう言った潤くんの瞳は、優しくて…
でも、真っ直ぐにオレを見据えていた。
「…うん。オレ、その話なら読みたいな」
一度は閉じられた ふたりの物語は
再び開かれ…重なった。
未来は…
自分たち次第で、いくらでも変えられる。
さぁ、真っ白なページに
オレたちの新たな物語を紡いでいこう?
ふたりの物語を。
おわり
*・゜゚・*:.。..。.:*・'(*゚▽゚*)'・*:.。. .。.:*・゜゚・*
前回からちょっと間が空いたので、なんか唐突に終わった感がありますが( ・∇・)
大丈夫、こんなもんです笑
いつもながら、不定期更新なお話にお付き合いくださり、ありがとうございます。
書きたいシーンをひとつすっ飛ばしてしまったので
オマケを書くかも…って感じですが
お話としては、一旦終わりますね。
またお会いできたら…
( ´ ▽ ` )ノ
miu