たゆたううた -18ページ目

君が羽ばたく日まで

君の背中には
銀色の翼があることを私は知ってる



そこには
闇を好む少女がいた

  闇は私を一人にしない

否 一人でいることに気がつかずにいられるだけの空間で
一人 目を閉じていた

ある日
折れそうな三日月の晩に
少女は仄かに輝く存在を見つけた

闇は光の反射を受け入れる
光とは何であるかすら量れるほどに 鮮明に 

だからこそ見つけてしまった

  それはなに?
  月明かりよりも懸命に
  光輝こうとするそれはなに?

「君はだれ?」

  ―――

声の出し方も忘れるほど
少女はいつも一人だった

「誰でもいいよ、僕を助けて」

  そんなに綺麗なものを持っていて、一体何を言っているの?

問いかける間もなく
少女は手を引かれ 光の中に飛び出した

闇と自分以外の世界には
白銀色の翼があった

「自分の背中は見られないから
不安になるね
どうか 輝かしくなくてもいいんです
どうか せめて白い 力強い翼が ありますように」

銀色の翼は願っていた。
両手を組んで 誰にともなく

銀色の翼は
その不安に小さくなり
また前を向いては輝いた

呼吸をするようなその動きに
少女は見とれた

やがて
組まれた両手を包み込んで
少女は共に願っていた

   どうか…

  「…大丈夫」

呟いた少女の背中には
月明かりの様に
仄かな輝きが灯った



君の背中には
黄金色の翼があることを僕は知ってる

安息と平和

遠くで地下鉄の音がする

太陽の下に出られないモグラたちが

それでもなお
輝くものを求めて
乗り込む
銀色のハコ

それでもなお
夢を求めて
走らせる
鋼鉄の部屋

今なお
求めて止まない
安息と平和

光を忘れたモグラたちは

本当は
いつの日か
この暗い窓の外から
見たことのないほど
美しい朝日が溢れ出すのを待っている


プラットフォームに地下鉄が滑り込む


モグラたちは
今日も乗り込む
戦うために

モグラたちは
今日も出られない
太陽を見ると
戦えなくなるから

平成大恐慌のさ中で裁断機が奏でたレクイエム

 雪みたい

 この
 刻まれた
 歴史
 踏襲されて
 いく歴史
 
 もう誰も
 いないのに
 記録ばかりが
 雪みたいに
 残された

もう誰も
 歴史なんて
 覚えて
 いないのに

 刻まれるために
 残っていたの?


雪みたい
 
 消えて
 ゆくために

春を待ってるの?