・・・・・向こう岸は霞むくらい遠く その先には森があり
そのはるか向こうには皿が嶺が聳えていた。
その青い頂きには雪が見えることもあった。
私はよくその河原の土手に座って その雄大な風景を眺めたり
夕焼けを見て 感動したものだった。
゛ いつかあの向こう岸に行ってみたい。 いつかあの山に行ってみたい。
いつかあの山の向こうまで行ってみたい ゛
・・・・・いつもそんなことを考えていた。
― 今 ここに30年ぶりにやって来たのだ。
しかし 景色は大きく違っていた。
河原も重信川も見る影もない。 広大な河原は
信じられないくらい狭くなっていた。
雪すべりをした土手は護岸工事でコンクリ-トに変わっていた。
広い河原も 河川敷の工事でコンクリ-トで何段にも
塗り固められていた。
わずかに残された河原の幅は数十メ-トル そして
そこには一滴の水もない。
コンクリ-トで埋められなかったわずかの川底に
やっと昔のままの石ころが残されていた。
゛ 川はどこに行ってしまったのだろう ゛
゛ 河原はどこに行ってしまったのだろう ゛
゛ 土手はどこに行ってしまったのだろう ゛
゛ 土手の赤松はどこに行ってしまったのだろう ゛
・・・・・呆然と見回す。
・・・・・つづく