・・・・ ゛ 私の家はどうなっているんだろう ゛


それとおぼしき場所を訪れる。


ほとんどが草原だが かろうじてあの頃の


家々の配置が分かる。


アズマさん ミヤワキさん テンちゃん アラミさん そして


自分の家のあった場所にやってきた。


゛ ああ ここだ  あの匂いがする ゛


まさにあの頃の 土の匂い を覚えていたのだ。


はっきり分かる。 ここが私の家の庭なのだ。


あの頃 広々とした庭だった場所は今はただの草原。


家も塀も両隣の家も周りの家も何もない。


しかし はっきり分かるのだ。


あの時と同じ あの匂い がするのだ。


アカシアの ヒマワリの ダリアの ガ-ベラの 


カンナの 花たちの匂い。


それらの匂いは土の中に 記憶されているのだ。


゛ ああ ここでキリギリスを捜した・・・・・


ここでアリを見つめて一日しゃがんでいた。


ここにカブトムシの来る大きな樹があった ゛ ・・・・・


幸せだった時代の 幸せの象徴が まるで 『 雨月物語 』 の


ように今は 草原になっているのだ。


母の声が聞こえるようだ・・・・・・・・


゛ はやくおうちに入らないと 日射病にかかるわよ ゛


優しい母の姿がよみがえってくるようだ。


・・・・つづく