新年早々、人生の目標を「死なないこと」としている方を見かけ、胸が痛くなりました。

そこに、

そう決めておかないと死を選んでしまうかもしれない
常に死にたい気持ちと戦っている

という思いを読み取ってしまったからです。

この方は「死にたい」と、何度心につぶやき続けてきたのか。今この一瞬のうちにも、死の選択が頭をかすめているのかもしれない。それを必死で打ち消しているのかもしれない。

この方の周囲には、「死」を誘う者達が渦巻いている。

心に呟くたった一度の思いでさえ、見えない世界の影響を受けてしてしまうというのに。

彼は、自分の愛する家族の幸せを壊さない為、周囲を地獄のどん底に引き込むことを防ぐ為に、必死で死への誘惑を断ち切ろうとしている。

その決心を「死なない」という目標ににして、必死で生きている。
しかし他人には、軽い冗談交じりにこんな風に言うのでしょうか。


「俺の目標はね、死なない事だよ。」

「なんだよそれ、簡単過ぎるだろ」

「そんで楽しく生きるんだよ。」

「お気楽なヤツだな～」

「はははは…」


かつての私も、死の誘惑との長い格闘がありました。
だから、彼の気持ちが痛いほど良くわかるのです。

楽しく、気楽に生きられたら。
そんな人生などあるのだろうか。
普通に、幸せに生きたいと、何度願ったか。

重すぎる思いを抱え、それが深刻過ぎるほど、人に話すことができないのです。

人に心配させ、自分のように重く暗い気持ちにさせてしまうのが嫌なのです。

自分は大丈夫だ、平気なんだ、普通なんだと思わせておきたいのです。

死なない事。楽しく生きる事。

その難しさを知っているからこそ、それを目標に頑張っている。

バカみたいな目標と笑う者もいるかもしれない。
この苦しみを知らなければ、そうでしょう。
けれども知っていれば、これほど悲痛な願いは無いと私は思います。

彼は人知れず、辛い人生を歩んでいる。

虐めを隠す子どものように、必死で普通そうな顔をして。

彼は懸命に戦っている。死の選択と。

頑張って生きていて欲しいと思う。

月並みな言い方ですが 、生きていれば良い事もある。
生きていれば、そこから脱する方法にも辿り着けるかもしれないのです。

どうか、頑張って生きて欲しいと思う。



界見