27歳のサラリーマン、卯蓮無 何故男(ウレナイ ナゼオ)は毎朝早起きをして、喫茶店ペガサスでモーニングを食べるようにしている。
某有名大学を出た後、同期たちに遅れをとらないように、いや本当は抜きん出る為にそのような習慣を作ったのだ。どんなに夜遅くまで飲んでも朝5時に起床し、30分かけて歩き、会社の近くにある喫茶店で食事をしながら新聞2紙を読むのだ。
6時ちょうどに喫茶店の前にたどり着くと、ガラガラと喫茶店ペガサスのシャッターは空いた。
「おはようございます。」
喫茶店の女性は50歳代くらいだろうか。卯蓮無の顔を見るとすぐに挨拶をしてくれた。
特に愛想が良いわけでは無いが「仕事は何してるのですか」など余計な詮索をされる事もなく居心地が良かった。
「モーニング」
卯蓮無は、いつもの席に向かう途中にこの女性に注文する。
まだ6月の終わりだというのに、日中は熱射病になるのでは無いかと思うほど暑かった。
社内のエアコンもそうだが、この喫茶店も朝からエアコンを強めに入れてあり、席に着くとすぐに体は冷え始める。
卯蓮無は日中の冷えすぎる体を休めるために、家ではエアコンは使っていない。扇風機の弱で過ごすのだ。
30分かけてゆっくり歩いてきたが、それでも汗ばんでいる体を冷やすのに喫茶店の冷え具合は清々しくもあった。
ふう。新聞を読みながらも、頭の中では今日の会議の事を考えていた。
部長からの指令。売上を13%上げなければならない。ある程度のプロモーション費用などの予算はあるけれども、その額は十分では無かった。どうにか、新しい戦略を考えなければならない・・・。
そんな事を考えていると、モーニングがやってきた。
熱いアメリカン珈琲と焼いただけの厚手の食パン。スクランブルエッグと毎日同じコンソメスープ。コンソメスープには2、3切れの野菜の切れ端が入っている。よくもまあ飽きずに毎日食べているとは自分では思っているが、生活のリズムを変えるのが卯蓮無には怖かったのだ。
ただ、見えない世界の観点から言えば、この事が卯蓮無の出世を阻んでいた。
築50年くらい経っているビルの1階で、この喫茶店は30年ほどを営業していた。毎朝、いろいろな人がこのお店にやってきて、朝のひと時を過ごし、出勤していった。ちょうど卯蓮無が通い始めた5年ほど前に、壁紙や床を綺麗にやり直していたが、見えない世界の方は当然、ドロドロのまま。
「会社に行きたく無い」「はあ、また仕事だ」「疲れた」「なんで人生上手くいかないんだ」「借金が減らない」
そんな人々の想いの念がドッサリとその喫茶店には落ちていた。
もともと少し霊感のある卯蓮無は霊媒体質だった。
霊媒体質の卯蓮無にとって、その喫茶店に通い続けるという事は、余計な想念の中にじっくり1時間、浸かるようなものなのだ。
思考回路はどんどん悪くなり、本当は不安など感じなくて良いほどの準備や段取りをやっているはずなのに、不安が不安を呼び、連続した失敗への階段に進むことになるのだ。
今日もまた卯蓮無は喫茶店ペガサスでその体を念症へと誘う。
これもまた見えない世界の真実なのです。
※個人名や店名などは個人を特定したものではありません。あくまでフィクションです。
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