二人が帰ってから、ウサダさんとは毎日のように電話をするようになっていました。
ウサダさんは、学生。
ぶにぃはフリーターで時間はなかなか合わなかったけど、朝から、夜中までメールして、それから電話して。
寝るのも惜しいくらいに、相手のことしか考えられなくなっていました。
でも、そんな自分の気持ちに気づかないまま2週間が過ぎたころ。
ウサダさんとケンカをしてしまいました。
理由はすごく些細なことで。
でも多分あの時はすごく疲れていたんだと思う。お互いに。
ウサダさんからのメールを無視して。
でも、本当は気になってて。
・・・でも、一言。
『ごめん』が打てなかった。
その日の仕事の帰り道は、なんとなく憂鬱で。
・・・・・メール、返そうかな・・・?そう思ったけど・・・・
でも、まだ、あのキスのことも聞けてない。
自分がどうしてこんなに切なくて、苦しいのかもわからない。
・・・自分は、どうしたいんだろう。
バイト先からの帰りのバスを降りて。歩きながら。
意味もなく泣きたくなってきて。
・・・メール、やっぱり返そうかな?
意地はってないで・・・・
家が見えてきたとき。
玄関先に座り込んでる人影発見。
「・・・何、してるの・・・?」
思わず目が点になる。
顔を上げた
その顔は、まさについさっきまで泣いてましたな顔で。
その手に持ってるのは大きな大きな花束。
「・・・・・っ!!」
「!?」
思いっきり抱きしめられた。
・・・・初めて、抱きしめられて、ドキドキして、ぐるぐるして、涙が出そうになったその瞬間。
ちりんちり~ん
と、自転車の音で我に返る。
・・・・・・このままだとご近所さんに見つかる。
明日になったら近所の噂の的になる。
それだけは勘弁∑(-x-;)!!!!
「と、とりあえず中に入ろう!!ね?」
「・・・いいの?入って・・・」
「いい、いいから!!」
「でも、怒って・・・」
「怒ってない!忘れた!いいから入ろう!?」
夕方の、わんこのお散歩に行かれるご近所の方々の注目の的にだけはなりたくない!!
抱きしめられたままの状態から必死で懇願し、名残惜しそうに離れるウサダさんを家に押し込んで。
入ってから、大きな花束を差し出してきて。
「・・・これ。」
「・・・?」
「・・・・・ごめん、な。」
やっぱり泣きそうな顔しながら、でもしっかり私の目を見て。
「許してくれへんかも、やけど。・・・・花、好き、って言ってたやん?」
差し出してくれたのは、
白いバラと、オレンジとピンクのマーガレットの大きな花束。
・・・・・なんて、人。
そのためだけに、3時間もかけて、家に来てくれたの?
県を2つはさんだプチ遠距離。
日帰りで会うのも戸惑うその距離で、ケンカしたのはバイトが終わるちょうど3時間前。
・・・・そのまま、飛び出してきたの?
・・・今日は大事な課題があるって言ってたのに。
「・・・課題は?」
ウサダさんは、いつものように少しはにかむように笑って。
「・・・貴女が、一番の優先事項なんです。オレの中で、何よりも。」
・・・思わず固まってしまいました。
そんな事いわれたのは、後にも先にも初めてです。
えっと。
「あ、えと・・・でも、課題はちゃんとしないと・・・」
「優先順位は貴女ですから(*゜▽゜ノノ゛☆。」
・・・ごめんなさい。
輝かんばかりのウサダさんに押し切られる形です。
・・・っていうか貴方さっきまで泣いてませんでしたか?
・・・気のせいだったのかと思ってしまいますよ
とりあえずお花にお水を上げ。
あがってもらい、少し話をすることに。
「で、課題は?」
「そう言うと思ってちゃんと持ってきたんですよ~」
確信犯。
っていうか、持ってきたっ!?
「え、あの?学校・・・」
「あぁ、大丈夫ですよ。明日はお昼からだから朝帰りますし。」
泊まり決定ですか。
・・・まぁ、そうしたほうが良いかとは思ってはいたんですが。
なんか。
自分の家なのに負けてる気がするのは気のせいですか(・_・;)?
いいですけどね。
泣きたくなるくらい嬉しくて、
泣きたくなるぐらい、切なくて。
好きなのかもしれない。
そう、実感してしまった、そんな一日。
結局、ウサダさんは次の日の学校はおさぼりなさいまして。
一緒に遊びに行って、初めてのプリクラを撮りにいきました。
・・・その時の花束は、今もドライフラワーにして部屋に飾ってあります。
見るたびに、その時の気持ちやあったかさを思い出せるから・・・不思議ですよね。