-めちゃくちゃ長いです。内容知ってる方は、そのまま、どうぞ。知らない方は、キャラ表作るので、暫しお待ちを。無いと、絶対に解りません-




穏やかな午後、悟空は難しそうな顔で、1通の手紙と睨み合っていた。
そんな光景を見かねて、八戒は、洗濯物を畳みながら、口を開く。


「どうしたんですか、悟空。怖い顔して…」

悟空は、突然声をかけられた事に驚きつつも、八戒に睨み合っていた手紙を差し出してみせた。


「今日、学校で渡されたんだけど、よく解んなくてさ」


見ると、可愛らしい手紙に文字が並んでいた。


「最初に、時任に見せたら、『この超絶美形の俺様が居るのに』とか言いながら怒り出して…。で、後から来た久保田に見せたんだ。そしたらさ」


久保田は、時任が持っていた手紙を、受け取ると、軽く目を落とした

「ん、ラブレターじゃないの」
「らぶれたー?」

キョトンとその場に、立つ悟空に、優しく微笑むと、持っていた手紙を4つ折にし、そっと手渡した。

「そ、ラブレター。まぁ、好きな人に渡す手紙だ~ね」
「ふーん…」

悟空は、持っていた手紙に、再度目線を落とした。


「まぁ、良かったんでない。別に、悪い事も無さそうだし。で、時任は、妬いてると」

薄く目を向けると、時任は、噛みつく様に、叫ぶ。

「妬いてねぇよ!!!ただ、なんで、この超絶美形の俺様が居るのに、悟空にラブレターが渡されんのか、納得いかねぇんだよ!!!」

久保田は、そっと煙を吐き出すと、静かに、時任の首に手を回した。

「時任には、俺が居るから、良いんでない?
それとも、付き合いたい女の子でも居るの?」
「今は、居ないけどさ」
「なら、良いんでない?」
「でもよ、1度位は貰ってみたいじゃんよ。女の子からのラブレター。というか、なんで、この俺様の魅力に気づかねぇんだよ」
「ま、時任の魅力は解る人に解ってれば、良いんでない?俺は、ちゃんと解ってるし…」
「久保ちゃん…」


そんな2人をよそに、悟空は席に戻った。席に戻った途端に、悟空の前に座る斉藤が振り返り、尋ねる。

「ラブレター貰ったの?」
「うん…だけど…」


「良く解んなくて…」

珍しくも落ち込む悟空を優しく見つめていると、悟空は勢いよく顔をあげた。

「そう言えばさ、八戒おじさんってカナ姉とどうやって会ったの?」

突然の質問に八戒は、虚を打たれるも、穏やかに答えた。
苦笑を洩らしつつも…。


「僕たちの場合は、少し特殊だったんです。ほら、僕たちは、大学が同じでしょ?
で、僕が出ている授業に彼女が出ていて、たまたま、隣に彼女が座ったんですよ。最初は、それだけで…」


あの日、僕は、切符売り場の前に立ち尽くしていた。決して、買い方を知らない。とか、そういう事じゃなくて…。

「どうかしたんですか?」

女性の声が聞こえ、振り向くと、何処か見覚えのある女性が微笑んでいた。


「えぇ、少し困ってしまいまして…」


僕が、苦笑混じりに、答えると、彼女は、僕の傍に近づいてくる。
その当時は、あまり、人が好きじゃなかったから、早く離れて欲しかった。
でも、彼女は、そんな僕の意思を介さず、僕に近づいてきた。


「私で良ければ、何かお手伝いしますよ」


優しく微笑む笑顔が、嫌な筈なのに、どこか、嬉しかったのを覚えている。


「いえ、実は、機械が故障してしまったらしくて、お金が返って来なかったんですけど…。僕一人でなんとかしますから、大丈夫です。有難うございます」


早く追い出したくて、口を出る言葉を無視し、彼女は機械に近づくと、その美しく優しげな容貌からは、想像つかない様な、強い力で、機械を叩いた。機械からは、何事も無かったかの様に、お釣りが返ってきた。


「えっと、420円で良いですか?」

穏やかに笑いながら、彼女は、僕の手の平に、代金を包み込んだ。

「あ、有難うございます。でも、凄いですね…」
「そうですか?」


僕は、優しさと同時に、少しの恐怖を知った。


「それから、授業で会った時に話す様になって、付き合う様になって、結婚して、僕は此処に居るんです。
僕はね、悟空。花喃に会えて、良かったと思っているんです。だって、花喃には、こんなに素敵な家族が居て、そんな素敵な家族が僕の家族なんですから。
こんなに可愛い甥も出来ましたしね」


八戒が穏やかに笑うと、悟空も、嬉しそうに応じた。


「俺も、カナ姉が、連れて来た人が八戒おじさんで良かった。だってさ、八戒おじさん優しいし、料理も上手いし…えっと、それから…」

悟空が、いろいろと考えている内に、玄関先から声が聞こえ、居間の扉が開く。疲れきった顔をして、悟浄が悟空の隣に腰をおろした。


「はぁ…」
「お疲れの様ですね、悟浄」
「あぁ…、ったく、毎回、人使いが荒いんだよ。あそこの店長はよ」


悟浄が、不満混じりに呟くと、八戒は立ち上がった。

「まぁまぁ。あ、僕、何か、軽く作って来ますね。何か、食べたいものとかありますか?」


八戒の一言に、悟空は一人目を輝かせた。


「ホットケーキ!!!」
そして、もう1つの声がする。

「じゃあ、僕は、お茶を…」

居間の入口には、悟浄と同じくボロボロの格好をして、天蓬が立っていた。
天蓬の突然の登場にも関わらず、八戒は、落ち着いた様に、台所へと向かった。


居間に残った3人は、各々、好き勝手に羽根を伸ばす。
1人は、倒れる様に、床に寝転がり、もう1人は、机に顔を埋め、もう1人は、再び、『ラブレター』と、睨み合っていた。
真っ赤な髪が、床の上に、広がる。



暫くすると、悟空の前には、ホットケーキ、八戒の前には、煎れたてのお茶、悟浄と天蓬の前には煎れたてのお茶と一緒に、小さなおむすびが置かれていた。

「いや、俺いらねぇんだけど」とか「僕も、少し…」と首を振る2人を前に、八戒は穏やかに微笑んだ。


「食べて下さいね」


こういう時の、八戒には、反抗しない方が身のためだと、2人の直感が呼びかけたのか、2人は、大人しく、おにぎりを口に運んだ。


「にしても、お前がこんな時間に、此処に居るなんて、珍しいんでない。仲良し2人組は、どした?」


悟浄の問いに、悟空は顔をうつ伏せた。


「2人とも、この間買ったゲームするってさ」
「なら、なんで行かねぇんだよ。はさ~ん、さては、喧嘩でも、したな。良いか、喧嘩ってのは…」
「してねぇよ!!してない。ただ…」


悟浄は、うつ向く悟空の前に置かれた手紙を手に取る。


「ん、ラブレターじゃん。猿のくせに、一丁前だな、悟空」
「猿じゃないって言ってんだろ!!!ってか、勝手に見るなよな、バカ兄貴」


悟浄から手紙を奪い返すと、悟浄は、再度、その手紙を奪い返す。


「誰が、バカ兄貴だよ。良いから、見せろ」
「嫌に決まってんだろ。返せよ、兄貴」
「あ、てめ、このバカ猿」
「だから」


「うるせぇんだよ、てめェら!!!」


いつの間にか、2人の後ろには、一家の長、三蔵が立っていた。頭をさする2人を前に、八戒は、穏やかに口を開く。


「あ、三蔵さんも、飲みます?
お茶」
「あぁ、頂く」

三蔵は頷くと、自分の席に座した。
多くの人間が現れるこの家で、唯一、ただ一人が、座る事を許された場所、そこが、三蔵の席だった。
八戒がお茶を持って、三蔵の前に置くと、何気なく、彼は、問く。


「そう言えば、三蔵さんと金蝉さんって、どうやって会ったんですか?」
「なんだ、いきなり」

怪訝な顔をする三蔵をよそに、八戒は言葉を続ける。


「ほら、三蔵さんも金蝉さんも、あんまり、恋愛って興味無さそうじゃないですか。でも、実際に、出会って結婚しなければ、こうやって、僕たちは出会って無かったでしょ。って思ったら、つい気になってしまって」
「てめェだけ…」


文句を述べようとする声に、重なる様に声が続く。


「俺も聞きたい!!!」
「じゃあ、僕も…」
「んじゃ、俺も…」
「ね、三蔵さん」


八戒の言葉にとどめを刺され、三蔵は、しぶしぶ口を開いた。


「どれも、これも、あの、ばばあの仕業だ」
「ばば…。あぁ、倶楽部『Gokuraku』の観世音さんでしたよね?」
「あぁ…」

三蔵は、少し悲しげな顔をしながら、懐から、煙草を取り出し、火をつけた。今は、その場所も、人も思い出の中だけに、存在する。


「あのババアのせいで…」



いつもの様に、酒が呑みたくなり、俺は、通いの場所に行った。あのババアは、気に入らないものの、酒の旨さは他店を凌ぎ、また、内装の趣味も悪いものでは無かった為、いつの間にか、『酒を呑む=その店に行く』事になっていたから。
そんな、ある日、ババアが一升瓶を1つ持って、俺の隣に座った。


「おい、三蔵。俺から1つ提案があるんだが、乗ってみる気はないか?」
「黙って、俺の隣に座ってんじゃねぇよ」


観世音は、言葉を無視して、話を続ける。


「今から、ここを金髪の美人が通る。そいつを口説き落とせるかどうか」
「生憎、そういう話は興味が無ぇんでな。それより、さっさと、自分の場所に戻ったら、どうだ?」
「興味が無い?ふん、自信がねぇの間違いだろうが」


観世音は、足を組むと、三蔵の前に置かれた酒に口をつける。


「おい、勝手に呑んでんじゃねぇよ」
「ふん、自分の店の酒呑んで、とやかく言われる覚えはねぇな」
「俺の前に、置かれた時点で俺の酒だ」
「じゃあ、ここは、おごったら、どうだ?」
「死ぬか?」


三蔵の静かな怒りをものともせず、観世音は再度口をつける。


「で、どうすんだ。乗るのか、乗らねぇのか」
「乗ってやるよ」


三蔵は、彼女から奪うと、静かに酒を口にした。彼女の策略にはまったとも知らず。


暫くすると、目の前を金髪の背の高い女が通り、三蔵は、軽く手をあげると、注文を取りに来た女に甘い声で低く囁いた。
おおよその女なら、恐らく、その声で落ちただろう。でも、彼女は違った。


「おい、お前、名前はなんだ」
「人の名前聞くんなら、自分から名乗ったら、どうだ?」
「玄獎三蔵」
「金蝉」
「なら、金蝉」
「何だ?」
「俺の女になる気は無いか?」
「なんで、いきなり、初めて会ったお前の女にならなきゃならん。断る」


三蔵は、軽く口角をあげた。まるで、興味深いものでも、見つけたかのように…。


「ふん、断われるとでも思ってんのか?」


女は、女にしては、低い声で囁いた。


「あぁ。だいたい、お前に俺の事を幸せに出来んのか?」

三蔵は、煙草を取り出すと、火をつけ、答える。


「甘い事吐かしてんじゃねぇよ。幸せになるかどうかは、てめェの問題だろうが。俺に、何の責任がある」

その答えに満足したかの様に、金蝉は口角をあげた。


「ふん、面白い。なってやるよ、てめェの女に」


三蔵は、軽く笑うと、そっと煙草を離すし、女の唇に、強引ながらも甘い口付けをした。

「結局は、嫁のもらい手が無かったあいつを、無理矢理、誰かに嫁がせる為の策略だったらしい」


三蔵は、面白くなさそうに呟くと、その場を辞す。話を聞き終え、静まり返っていた4人は、それと同時に、止めていた息を吐き出した。


「なんというか…」
「良い。それ以上言うな、おじき」


悟浄は、八戒を制すると、机に頭をつける。もう、何も聞きたく無いとでも言うかの様に。
そんな彼から目を離すと、目の前に置かれていた、茶に目を落としながら、呟いた。


「壮絶。ですね…」



その後、悟空は、ラブレターへの断りの手紙を丁寧に書いた。

「あれ、断っちゃうんですか?」

八戒の問いに、悟空は、ペンを置きながら、答えた。


「うん、だって、俺、あんなに怖い事したくないから…」


うつ向く悟空に、八戒は胸の内で、そっと呟く。



まぁ、あれは特殊だと思いますけれど…。




三蔵と金蝉だからこそ、許されたであろう、恋愛。でも、それこそが、彼らの



Love Style….