町のクリニックを出て車に乗り込んだ私は、
自分でも驚くほどあっけらかんとしていた。

もし自分が癌だと告知されたらきっと呆然として、
絶望と不安でぼろぼろになったりするのかなと思っていたのに。
なんだか本当に淡々としていた。

その日は午後からママ友と久しぶりのランチを予定していたから
淡々としたまま、約束のお店へと向かった。

そのママ友はママ友という枠を超え、
親友と呼べるほど信頼できる友だった。

お互いの日ごろの話を語り合い、
美味しいイタリアンに舌鼓を打ちながら
久しぶりの再会を楽しんでいたが、
午前中は病院に行ってくると伝えていたことを
覚えていた彼女が、ふいにこういった。

「病院ってなんかあったん?」


どうしよう・・・
彼女に伝えようか。

いや、こんな重い話聞かされても
彼女もどう答えたらいいかわからないだろう。

でも、だけど
彼女の事を心から信頼している私にとって、
本当のことを伝えておきたかった。


「・・・・ひかへん?
あんな、私・・・・乳癌やったわ」


彼女はしっかり受け止めてくれた。
やはり信頼できる友だった。
伝えてよかった。

そして、奇遇にも
彼女の大切な友人が最近乳癌にかかり
手術を乗り越えたと教えてくれた。

そしてなんとその病院が、
今回紹介状を書いてもらったK大で、
そこの担当医がとても優秀で素敵な先生で、
最初は抗がん剤を使う予定だったのだが、
先生の考えで使用しない方法で治療をしたんだよと
私にとって朗報を教えられたのだ。

こんな奇遇なことってあるんやな。

もし今日親友に会えてなかったら、
そして病気の事話せてなかったら
また違った一日になったであろう。

心が明るくなっていた。
そして、信頼し頼りとできる友がそばにいることに
心から感謝をしたい。

ありがとう。本当にありがとう。

その夜、
旦那はたまたま実家に帰っていて家にいなかった。
まだ、旦那に伝える勇気がなかったから
これは神さまがくれた時間だと思った。

友が大切な友人を紹介してくれて
深夜彼女と話をさせてもらえた。
これももし旦那が家にいたら内緒で話などできないことだったから
本当に神さまがくれた時間だと思う。

彼女は本当に乳癌だったの?と信じられない程
明るくて気さくて、本当に素敵な女性で・・・・
治療や闘病の話も、まるで何でもなかったかのように
明るく話してくれた。

どれだけ彼女の話に救われたか。
そして彼女の担当医の話を聞くにつけ
ああ、素敵な先生だなと感じ
受診する不安がぬぐわれていった。

よし、大丈夫。
私は大丈夫。

乳癌?
乗り越えてやりましょう。
運命なら、挑んでやりましょう。

心が決まった夜でした。