エンカウント 11(おまけ) | BLの嵐´・∀・)`・3・) *'◇').゚ー゚)`∀´)妄想小説@櫻葉

BLの嵐´・∀・)`・3・) *'◇').゚ー゚)`∀´)妄想小説@櫻葉

嵐さんが好き、ただただあいばさんと櫻葉を愛でる小市民。腐ってるので閲覧注意((`・3・´人 ‘◇‘*))
お立ち寄りくださってありがとうございます。読者登録はご挨拶不要です。現在アメンバーの受付はしておりません。コメントのお返事は不定期ですがお気軽にどうぞ~

#11(おまけ)


#10

#1(はじめから)










七月某日──




例年であれば梅雨が明けていてもおかしくない。五月晴れの土用の午後のことだった。



(あ、よくプリン買いに来てくれるお兄さん)



ネイビーブルーのスーツが目に留まり品出しする手をふと止める。


雅紀がシフトに入る時はスウェット姿で見かけることが多いから珍しい。



余程甘い物が好きなのか、今日も堅焼きプリンを(ふたつも!)手に取った常連さんはビールと一緒に迷わずカゴに放り込み、

雅紀を見つけると意外そうに首を傾げたが、爽やかな笑顔で会釈してくれた。



「いらっしゃいませ。えと、今日イベント日なんでシフト変則なんです。オレも応援」

「ああ、そうだよね? いつも夜中に来たとき君がレジ打ってくれるから

夜かと思って思わず時計確認しちゃったよ」



高そうな腕時計に目を遣って、人当たりのいい大人な笑みを浮かべている。

立ち居振る舞いがスマートなんだよなこの人。

カッコいいしビジネスマンって感じで憧れる。



「長時間の立ち仕事だと大変だね。頑張って」

「い、いえそんな…! ありがとうございます」


急なシフト変更で夜中までぶっ通しになるけれど、引き受けてちょっとラッキーだった。


雰囲気が翔に似てるせいもあり、実は雅紀は彼が来店する度ほんのり緊張していたのだが、

まさか認識されてシフトを覚えてくれてたなんて。


こういう会話のキャッチボールは純粋に、ただのバイトでも店員として素直に嬉しい。



「えっと、七月からレジ袋有料になっちゃったんですけど、今日はどうしましょう?」

「あ、大丈夫です。これ……持たされてるんで」



どこか恥ずかしそうにガサゴソとマイバッグを取り出し広げ始めた彼に雅紀は目を丸くする。


男の人が持ってても違和感のない落ち着いたカーキ色のナイロンに、どこかで見たことのある二頭身のキャラクター。

口がペケポンの白くてかわいい小さなうさぎ。



「かわいい、ですね?」

「……いいですよ笑ってくれて。似合わないのは承知してるから」



不覚にもキュンとして、帰ったら翔にもマイバッグを持つよう勧めてみようと決意した。

かわいいのを見繕ってプレゼントしてみるのもいいかもしれない。きっと、文句を言いながらでも渋々使ってくれるだろう。彼みたいに。


内心ニヤニヤしながら会計後の袋詰めを手伝っていると、彼の財布からレシートのような紙がひらりと舞ってトレイの上に落ちてきた。



「これって七夕の短冊?」

「うわっ、あいつまた!」



ぎょっとした顔で若草色の紙を拾い上げた彼は、バツ悪そうに肩を落とす。

 “あいつ” の悪戯で紛れ込んだらしいその紙に目を落とし「しつこいな」と溜め息をつくが表情はどことなく柔らかい。


紳士的な品のいい人だと思っていたけれど、誰かに振り回されてるらしい場面を想像するとちょっとかわいい。

くすくす笑う雅紀に眉を下げてエコバッグを受け取った彼は、照れたように鼻を触った。


「こ………同居人の、悪戯なんですよ」


筆圧の濃い文字で書かれた短冊を満更でもなさそうに一読した彼は、イートインスペースの笹をチラリと見て「ご迷惑でなければ、」と切り出した。



「あそこに混ぜてもらうなんて可能ですかね?」

「ふふっ、いいですよ。短冊の持ち込みなんてはじめてですけど。

旧暦の七夕まで置いとく予定みたいです」



雅紀が笑えば照れくさそうにそっと紙を差し出して、ぺこりと頭を下げてくれる。



「ありがとう。なんかあいつ、ウチにも当然笹飾りが登場するって信じ込んでたみたいでへそ曲げちゃって助かります」



もう一度礼儀正しく頭を下げて、また来るねと手を振りながら帰って行く。


いやあ、今の笑顔はずるいでしょ。


最後ちょっと砕けた語尾になるとかホントずるい。あの人ぜったい会社とかでもモテるんだろな。



「でもオレには翔ちゃんがいるもんねーっと。よいしょ、脚立どこだ?」



彼から預かった短冊に籤を通し、せっかくなのでてっぺんの一等地に飾り付けてみる。

その後すぐに雨が止み、イベント日らしく客足が途切れることもなかったのでバイト仲間に聞くまで雅紀は知らなかったけど。



『みんなの願いが叶います様に



都会の片隅のコンビニで、夜中にふらりと現れて満足そうに笹を眺めていた男がこの日はもう一人いたらしい。









おわり