私は、捉え方次第では出来ると信じています。
どういうことかというと、それはこういう理屈です。
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1000万円の制作費のアニメが500万円になったら革新的だと思いませんか?
アニメ会社の利益率が10%から50%までに引き上げられたら革命が起こせると思いませんか。
うーん。もしかするとこれだけだと実感が沸かないかもしれませんね。
それではこれではどうでしょう?
あなたの労働時間が半分になって、収入が倍になったらどうでしょうか。
掛け持ちがなくなって、1つの作品に集中しても収入が落ちない環境は幸せではないですか?
自分の時間を作れ、家庭に時間を使えたらどんなにいいかと思いませんか?
なんか詐欺広告っぽいですがね、ただ、それ程のインパクトを業界に
起こせるという「強いイメージを持つ」ということが重要なのです。
自分を「どうせ自分なんか雑用だよ」と捉えてしまったら本当にただの雑用になってしまいます。
アニメ、映像業界には「果てしない無駄な時間」があります。
それをきちんと交通整理して有効な時間にすることが、もし出来たならば
地味だけど、それは革命的なのです。
タイムイズマネーという言葉はありますが、もっと言うと時間というは「全て」の源です。
時間の使い方というものは、人の人生の全てなのです。タイム・イズ・エブリシングです。
そしてその、関わる全てのスタッフの時間の管制官。
それが制作進行です。その極めて重要な役職についている意識がまず大切です。
コストカットと聞いて、良いイメージをもつ人は少ないかもしれません。
確かに、人件費を切っていくようなコストカットは誰も幸せになれません。
制作進行の最大の役割は、人を幸せにする「無駄時間のコストカット」なのです。
前置きが長くなりました。
この記事では、腐った現場にどっぷり浸かって腐敗しそうになった私が
みんなを幸せにする制作進行スキルについて、具体的に解説していきたいと思います。
★その一
~先回り能力~
先回り能力とは、問題が発生する前に芽となるものを潰していく能力です。
問題を小さいうちに潰す習慣をつけてください。後で発芽して成長すると取り返しがつかない問題になります。
【例】
●演出打ち合わせで出た「保留」カット。これは真っ先に潰しておく。後で100%爆発する不発弾になります。
●「色指定」をとにかく急がせる。後で差し換えが出来るからこそ急がせる。
「差し換え修正」というのは100%無駄で、しかも膨大なコストと認識しないといけません。追加予算がかろうじてかからないかもしれないデッドラインは、せいぜいカッティングまでです。色指定の遅れが、ここを過ぎると現場には膨大な人件費が発生し始めます。
その費用は、お金では還元されず、みなさんの貴重な人生の時間を奪っていくのです。
●特に優先度の高いレイアウトチェックバック。演出の人数は各話1人しかいません。
渋滞の元です。
チェックバック1日の遅れは、CG、作画、撮影、20人くらいの1日を待たせるのと同義です。
また、演出負担軽減の為、カット提出は随時、出来れば毎日提出してもらいます。
●返事待ちにしない。返事を貰う期限までつけて、返事を必ずもらえたかの確認をします。
混んで来ると自分がやったことを忘れるのでメールを送ったというのは、確認したことになりません。
電話もセットで確認し、とにかく早く未決定事項は潰していきましょう。
●演出の誤字、脱字は現場の人は読めません。
必ずチェックし、自分で読めないチェックバック資料を現場スタッフに送らないようにしましょう。自分自身のリテイク内容の把握の為に必須の工程です。
チェックしない制作進行は、制作進行じゃありません。ただの連絡係です。
★その二
~マルチタスク能力~
常に複数の人間が平行して動いています。何かに集中して何かがおろそかになる事がないよう
優先順位を頭に叩き込んで常に変化に対応できるようにしておきましょう。
基本は上流(演出)の部分を処理するのが最優先です。
今だったらスカイプやLINEなどで、リアルタイムで確認できる窓口があるとよいでしょう。
メールはとにかく受け取ったらすぐ返信。業務中は一時間以内に返信。
制作進行が一日返事しないというのは失格退場のレベルです。
★メールの返信は箇条書き厳禁!!!必ず引用返信する。
質問に対する答えを「全て」必ず返信する習慣をつける。分からない質問にも返事を必ずする。
返信漏れは、質問者にとってみたら、「返信済み」と扱われてると思って、確認の再送をしなければならないのです。
<引用返信例>
>>LOいつごろもらえますか?
12月12日いっぱいでなんとか上げ切れると思います。
>>ラッシュの締め切り何時までいけますか?
13日の15時までにお願いします。
>>(わからない質問)
すみません、現在確認しておりますので、本日中に再度ご連絡致します。
★無駄時間が多い「打ち合わせ時間」を削るには、とにかく「事前準備」が欠かせない!!
【演出打ち合わせ】
まずは、演出打ち合わせでの制作進行は「設定の確認役」として参加することが多いです。
そこで、一歩進んで、ここでは”演出の視点”で参加しましょう。
それが後々の「判断材料の基準」になるのです。
録音しつつ、キャラが3Dなのか、2Dなのか、背景は3Dなのか美術なのか、
ここで決め込ませ、表作成まで演出打ち合わせ内で終わらせてしまいましょう。
打ち合わせ終了と同時にメールで、各部署に送信できれば、実にスマートな仕事っぷりです。
ここで、以下のようなカットが出てきたら要注意。
後々、製作工程に響くポイントの例を紹介しましょう。
・3Dカメラカット・・・レンダリング時間が3倍以上になるので、プレビューチェックで演出に細かくチェックしてもらう必要あり。
・カメラマップカット・・・美術作成後の3Dの作業になる為、工程をかなり急ぐ必要がある。
・新規モデルの発生するカット・・・色指定のスケジュールを確認する必要がある。
【作画打ち合わせ、CG打ち合わせ、撮影打ち合わせ、美術打ち合わせ】
演打ちで「既に決まったことを伝える打ち合わせ」なので、本来、演出が迷うことは無いはずです。ですが、もし、「打ち合わせ中に考え込む癖のある演出」、要するに、カメラ繋ぎ芝居を事前に決め込まずに打ち合わせに臨む演出に当たってしまったら、とにかくちゃんと
決めてから打ち合わせをさせるよう釘を刺しておきましょう。
決め込まない場合、打ち合わせ日を延期した方が、現場的な負担は軽い位です。
ここの事前準備次第で「1話6時間の打ち合わせ時間が2時間」になるのです。
具体的な「釘の刺し方」ですが、ここで演出打ちにどういう姿勢で臨んだかが試されます。
演出打ちで、監督、演出が悩んでいた箇所は、作打ち、CG打ちでも同じ箇所で悩みます。
そこで保留になっていることや判断の先延ばしになっている箇所を、全て作打ち、CG打ちの前に潰しておくのです。
そこで問題になった箇所に事前に演出に答えを出させることで、打ち合わせでの悩んでいる時間を軽減できるのです。
あなたは、何も出来ない無言の時間を過ごしたいですか?
私は、そんな人生の無駄な時間は過ごしたくはないですね。
★上級編
●何を重視する演出かを知ろう。
・レイアウト、ポーズ、タイミング、芝居、撮影処理(絵づくり)、人によって重視するポイントが全然違います。
他の話数でOKなカットでも、演出変われば見るポイントが真逆になることもありますので、
演出を目指す人は一番勉強になるポイントであると共に、制作進行的には一番厄介なポイントでもあります。演出にずっとくっついていると、何を求めている人なのかが分かってきます。
その価値観を現場の人に教えてあげましょう。
「この演出はタイミングにうるさいので、タイムシートは厳密にあわせた方がリテイクになりにくいですよー」とか。
きっと現場の人も幸せになるでしょう。
●演出の悪癖、好み、性格も知ろう。
・チェックを何度も重ねるタイプか
細かいチェックをしない演出は同じカットに何度もリテイクを加えていきます。
LOチェック→モーションチェック→仕上げチェック→ラッシュチェック と、これだけだと、何がおかしいのか分からないかもしれませんが、チェックムービーの中には、
「ほぼ仕上げまで終わっているカットもある」という事です。
完成に近い状態のムービーで、モーションしかチェックしないというのはあまりに非効率です。
現場と確認して修正箇所全てチェックさせましょう。
同じカットに何度も別の箇所の修正させる行為は「演出の怠慢」である為、現場はやる気を削ぎます。現場のやる気を削がない努力もクオリティを上げる為の制作の腕の見せ所です。
そのスキルは演出になった時にも存分に生かされることでしょう。
・制作に丸投げの演出ではないか
制作にメモを取らせ、自分は言うだけの演出は全体的に制作頼りな傾向があります。
自分が出したリテイクを人任せにしているので、忘れたり、ラッシュで思い出したかのように修正を出すことがあるのです。ラッシュ時の原画修などはっきりいって鬼です。
言った言わないの不毛な論争にならないよう、表を作って用意し、演出に渡してチェックマークだけでも自分でも書いてもらう、または、録音するなどで万全の対策を取りましょう。
★最新のクラウド管理の可能性を常に探る。
googleスプレッドシートなどを「全スタッフに共有」をかけ、上流から末端までの全スタッフが今のカットがどのような状況になっているかリアルタイムに確認できる状況を作る等の新しい方法を導入するのは大事です。こうすることで、メールのやり取りが減り、提出漏れを阻止できる。CCのつけ忘れなどのミスの被害も抑えられる。
また「3Dだったカットが作画になりました」という連絡が漏れると現場が無駄な作業をするハメになるが、それを阻止できる。忘れていましたという言い訳を作らせない。
今は色んなWEBサービスが出ていますが、その情報にアンテナを常に張っておく。
今やっている作業が一年後には必要なくなっているかもしれませんから。
★最後に現役の制作進行さん、これから進行を目指す方に。
制作進行は立場上、一番と言っていいほど人に振り回され、理不尽な目に合い、しかも目立たない裏方ポジションです。
ですが、その雰囲気に飲まれ、だらだらとした打ち合わせに付き合って、あー今日は忙しかったなどと、仕事をしたつもりになるのはいい加減やめましょう。
打ち合わせはある意味では、仕事じゃありません。ましてや、スタッフの送り迎えなど、時間が束縛される業務外の雑用を受けないでください。
いかに無駄な時間を過ごしているか自覚しましょう。
その時間を減らして、カットの内容を演出の視点を持ち深く理解してください、そして、制作進行の渋滞となる芽を一刻も早く潰してください。
謝って、おだてて、いい気分にさせ、仕事を早く進めさせましょう。
アニメ業界は色んな原因で腐敗している部分は有りますが、進行さんが頑張ることで何十人
何百人と幸せにすることができるのです。
そして、演出や経営者などの道へのキャリアアップに一番近く、将来が明るいのも制作進行で真剣に頑張って全工程の知識や経験を重ね、胆力と人脈、そしてスタッフに信頼された未来のあなたです。
つづく。かも。