粒ワニ | ドラゴン龍のブログ 「塩っぱいくじら」

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ワタナベエンターテインメント所属
コンビ名:TOY(トイ)

ふと思った事、妄想した事を、後回しに綴ります。




Ⅰ.


粒ワニを見た。











粒ワニはそこら中にいる。

二酸化炭素の多い所が好きで、
渋谷の街やエレベーターの中や人間の口まわりにはこぞって集まる。







粒ワニは、
人間には見えない。

 









しかし、ある瞬間に立ち合った時
急に粒ワニが見えるようになった







それは、

橙色に怪しく光る満月が夜の空に低く浮かんだ瞬間…

ではなく。



7年付き合ってたカップルが実は兄妹だった事実を知らされた瞬間…

でもなく。



異邦人が宇宙人との子を産んだ瞬間…

でもなく。



サザエさんの双子の妹、サンサイさんの放送が決定した瞬間…

でもなく。



空から豚が降ってきた瞬間…

でもなく。



普段喋らない大人が、床のカーペットと話す時である。










コバルトブルー色のカーペットと話していた時、急にカーペットの上に大量の小さい2㎜ほどだろうか、生き物が動いていたのだ。




(ワニだ!)





私は驚いて大声をあげようとした、
、ここは壁の薄いアパートだ!
静かに暮らさなくてはいけない!
(最近私は肺炎になり、止まらない咳で深夜に迷惑をかけたばかりだ!)



私はとっさに口を抑え、
そのまま5分息を止めた。





(……5分)





限界が近づく。
私は息をそーっと吐き出す

その時だった!!!




カーペットの小さなワニたちが一斉に私の方を向きゾゾゾゾゾと近寄ってきたのだ!


ゾゾゾゾゾゾゾゾゾゾゾゾゾゾゾ
ゾゾゾゾゾゾゾゾゾゾゾゾゾゾゾ
ゾゾゾゾゾゾゾゾゾゾゾゾゾゾゾ
ゾゾゾゾゾゾゾゾゾゾンゾゾゾゾ
ゾゾゾゾゾゾゾゾゾゾゾゾゾゾゾ
ゾゾゾゾゾゾゾゾゾゾゾゾゾゾゾ
ゾゾゾゾゾゾゾゾゾゾゾゾゾゾゾ
ゾゾゾゾゾゾゾゾゾゾゾゾゾゾゾ
ゾゾゾゾゾゾゾゾゾゾンゾゾゾゾ
ゾゾゾゾゾゾゾゾゾゾゾゾゾゾゾ
ゾゾゾゾゾゾゾゾゾゾゾゾゾゾゾ
ゾゾゾゾゾゾゾゾゾゾゾゾゾゾゾ
ゾゾゾゾゾゾゾゾゾンゾゾゾゾゾ
ゾゾゾゾゾゾゾゾゾゾンゾゾゾゾ
ゾゾゾゾゾゾゾゾゾゾゾゾゾゾゾ
ゾゾゾゾゾゾゾゾゾゾゾゾゾゾゾ
ゾゾゾゾゾゾゾゾゾゾゾゾゾゾゾ
ゾゾゾゾゾゾゾゾゾゾゾゾゾゾゾ
ゾゾゾゾゾゾゾゾゾゾンゾゾゾゾ
ゾゾゾゾゾゾゾゾゾゾゾゾゾゾゾ



おぞましい恐怖が私を襲った!!!

私はバンジージャンプを経験事がある。
しかしその時とは比べ物にならない恐怖が私に襲いかかった!






小さなワニは私の顔の一点に集まった


さぁ、問題です!
ワニたちは顔のどの部分に集まったのでしょうか!?!?
次の3つの中からお選び下さい!

(1)口

(2)目

(3)顔






(1)を選んだあなた!
努力家のあなたには、近々報われる時が訪れ大きな成功を掴むでしょう。ラッキーアイテムは棚の上の餅です。


(2)を選んだあなた!
友だちを大切にしましょう。


(3)を選んだあなた!
心の汚れたあなたは生きている価値すらありません。その心臓を悪魔に渡し強い魔力を得ることです。きっと城も動くでしょう。ラッキーアイテムは自尊心!アクセサリーのようにぶら下げてみて!


(4)を選んだあなた!
まるで宇宙、されど個人。






程なくすると
小さなワニたちはソワソワとカーペットの上に戻っていった。


 
冒頭にも説明したが、
粒ワニは二酸化炭素が好きだ。

肺に溜まった濃い二酸化炭素は……

やめよう、



粒ワニは二酸化炭素が好きなのだ。









それから私と粒ワニたちの生活が始まった。



粒ワニはゆっくり歩く。

粒ワニはとても硬い。

粒ワニは水を飲まない。 

粒ワニは鳴く。

〈のぉーーーい〉と鳴く。

粒ワニは稀により目をする。

より目をしてる粒ワニを上から軽く押すと跳ねる。

3mは跳ねる。

そして着地した弾みで子どもを産む。

時々、食卓に紛れこむ。

間違えて食べてしまった事もあったが、ワニの味はしなかった。








a.

長瀬は2匹の粒ワニを飼っている。

ちょうど2年前だっただろうか、海辺で死にかけていた親子の粒ワニを拾い、飼い始めた。


ある日、子粒ワニは言った

「お母さん、いつになったら私たちは海に帰れるの?」

すると親粒ワニは言う

「ワニは海じゃなくて川に帰るのよ。」

長瀬はそんな会話を聞いているのかいないのか、ただひたすらに自分の爪をぼーっと見つめていた。

今夜は真冬並の寒さで、ニュースでは足早に家に帰ろうとするサラリーマンたちの姿が映っている。

長瀬はそのぐるりと首に巻いた長い髭で暖をとり、そのまま深い眠りについた。











Ⅳ.

私はよく話すようになった。

粒ワニを育てるために。

粒ワニたちに質のいい良い二酸化炭素を与えるために。

そして漫才師になった。

それも喋くり漫才師の方だ。

粒ワニたちはスクスクと育った。

観客の笑い声はとりわけ質の良い二酸化炭素なのだ。




Ⅶ.

こんな話、誰も信じてはくれないだろう。

それでも良い。

私は粒ワニたちのおかげで新しい人生を送れるようになったのだから。





ありがとう、粒ワニ。





エピローグ

とりあえず、私はウニが好きだ。
コンビニで「粒ウニ」と表記されたウニの瓶詰めを見た。
帰りに買って帰っていれば、今頃食べれたのになぁ、と後悔している。








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