【問題】
カブトムシとのお別れは、どういうときにくるの?

①冬越し出来なかった。

②アリなどにたかられ、弱っていき死んでしまった。

③前々から仲が悪いのは知っていたが、いつのまにか離婚調停までいっていた両親。
 ある日、母さんが「あんたはどっちについてくるの。もちろん、お母さんよね?」と訊いてきた。奥のほうで黙っているオヤジ。
 オレは答えた。
「オヤジについて行く」
「あんた正気!? このろくでなしのせいで、あたしたちがいままでどんなに苦労をかけさされてきたか、あんただってわかってるでしょ! なぜ! どうして!」
 半狂乱で問い詰めてくる母さん。オレは知ってたんだ、弟が母さんについて行くってことを。これでオレまで母さんと行ってしまったら、オヤジは独りになってしまう。そしたら、オヤジの心が持たないってことをオレは理解していた。
 泣き叫ぶ母さんとは正反対に、じっと口を噤んだままのオヤジの姿がひどく印象的だった。
 そして別れの日。
「お父さんたちは、行かないの?」と無邪気に訊いてくる弟。
「あとから行くよ。そうだ、コイツも先に持っていって、新しい家に慣れさせてやってくれ」
 そう言ってオヤジは、この夏、弟のために自分で獲ってきたカブトムシのかごを手渡した。
 かごを大事そうに抱えながらタクシーから手を振る弟が見えなくなったとき、親父の嗚咽が肩越しに聞こえた・・・。

 さて、何番?