「…とりあえず、父で遊ぶのは勘弁してやって下さい。
それから、会見は1週間後にお願いします。」

「うむ、大々的にやるならそのくらいの準備期間は欲しいな。」

「あの…、今回会見に踏み切るに到った経緯を説明してもよろしいでしょうか。」

手を挙げて発言の許可を求めるキョーコに、ローリィはよし、と促した。

「…そもそものきっかけは、私が受けたトークバラエティー番組のオファーなんです。」

あと6日に迫った番組のテーマから、暴露ネタ、不破 尚との因縁までを事細かに説明し、キョーコはため息を一つついた。

「この話までで終わりにすると、虫酸が走る内容の報道が飛び交うのは間違いないです。
私も、何としてもそれは避けたいですから、…蓮さんに相談したんです。
“いっそ交際宣言して、腐れ縁よりもいいネタを出せばごまかせるかな”みたいなつもりだったんですが…。」

ちらっと蓮を見遣ると、蓮は真剣な顔で更に社長に詰め寄った。

「このチャンス、俺が逃せる筈が無いじゃないですか!
交際宣言して、むきになってキョーコに迫る馬の骨だって間違いなくいるんですよ!
だからこそ、婚約会見じゃなきゃ駄目なんです。」

「…蓮さん?
そんなに心配しなくても、迫ってくる男性なんていないわよ?」

キョトンとして蓮を見るキョーコに、首を振って“ダメだこりゃ”とがっくりする社長と蓮。
二十歳を迎え、芸能人として、一人の女性として、花開いた魅力で世間を魅了するまでになっていながら、未だ自分の魅力にまるで自覚がないキョーコであった。


「…よし、解った。
じゃあ、そのバラエティー番組の収録の後に婚約会見って事で行こうな。
それまでに基本マニュアルの質疑応答の内容、二人で詰めとけよ。」

スケジュールその他は社達が調整するだろうと、話を終わらせたローリィは、ふと気付いた事を口にした。

「蓮、お前クーには知らせていないのか?」

「…まだこれからですが。
まさか社長から知らせないで下さいね?」

「いいじゃないか~♪
そのくらい楽しませろ♪」

「嫌ですよ。
あまり父を弄ると、騒ぎが大きくなりますよ?
事態に収拾つかなくなったらどうするつもりですか?」

「心配するな!
俺は愛と楽しい事の為には労力は惜しまん男だぞ。
さ~てと♪
こうしちゃおられん!
早速準備に掛かるからな~!
腕によりをかけて目一杯サプライズにしてやる!
楽しみにしてろよ~!」



報告に来た二人を置き去りに記者会見までの1週間、影で暗躍したLME社長の行動は、後々までの業界内の語り種になったらしい………。


-end-





“結ぶ”編はここまでです。
“切る”←というか“切られる”編を近いうちにアップしたいなぁ。