リモコンを持ったまま立ってテレビを見つめる祥子さんの横で、ベッドに起き上がっただけの状態で俺も画面に釘づけになっていた。



『もう一つ面白い情報が入ってるんです。
昨夜遅く収録されたそのバラエティー番組で、トップアーティストの不破さんの暴露話も出たらしいんですよ。
どうもその暴露話も出所が京子さんらしいということで、その辺りの話も聞けるのではないかと報道陣も期待しているようです。』


…!!
俺の暴露話をキョーコの奴がテレビの収録で話した!?

シーツを握り締める手が震え出す。

「…今日の仕事がキャンセルになって、スタジオに缶詰って意味、解ったわよね。
急いで支度して、ここを出るわよ。
…?
尚、聞いてるの?」


祥子さんの言葉なんか耳に入ってなかった。
コメンテーターのやり取りの後、程なく記者会見会場に画面が切り替わったからだった。



『スタジオの宮木さん。
たった今、敦賀 蓮さんと京子さんが会場に入ってきました。
今から記者会見が始まります。』

『あ、はい。
よろしくお願いします。』



『えー、本日はお忙しいところお集まり頂きましてありがとうございます。
ただいまより、弊社所属俳優、敦賀 蓮、並びに京子の婚約発表会見を行わせて頂きます。』

会場が一気に騒然となった。
…俺は何か聞き間違いでもしたかと思ったが、祥子さんがリモコンを落とす音に、それが真実だと理解した。

アイツがマイクを取る。

『本日は私共の発表に、沢山の皆さんがおいで下さったようでありがとうございます。
え~、先程司会の方に発表していただきましたが、先週、私 敦賀 蓮はここにいる女優でありタレントの京子さんにプロポーズしました。
その結果、今日の佳き日を迎えられる事になりました事、ここにご報告申し上げます。』

心底嬉しそうな奴の横で幸せを噛み締めるように微笑むキョーコに、胸が締め付けられる。

『挙式、披露宴の予定は未だ立っておりませんが、お互いのスケジュールを調整して、出来るだけ早く式を挙げようと思っています。』

そう言って一度マイクを置くと、アイツは司会者に合図した。
司会者も心得たと頷き、質疑応答を始める。

『いきなりの婚約会見ですが、お付き合いはいつからだったんですか?』

『…そうですね。
2年くらい経ってます。
再会してからは…4年、かな?』

…再会?
アイツとキョーコは、芸能界に入る前に会った事がある…!?
その疑問を追及する質問も当然出た。

『再会ということは、お二人は以前会った事があるということですよね?』

『はい、実は彼女、俺の初恋の女の子だったんです。』

会場が更にざわめき立つ。

『俺が10歳、彼女が6歳で、夏の京都でほんの数日の楽しい思い出の女の子が、彼女だったんです。
10年後、全く違う場所で、待ち合わせしたわけでもないのに、俺は彼女に逢えたんです。』

昔、自分は満足に名乗りもしなかったのに、逢えるなんて運命としか思えないです、と照れ臭そうに言うアイツの横で、トマトみたいに真っ赤になりながら微笑むキョーコが、俺の知らない過去をアイツと共有していた事実に愕然としていた…。







キョーコちゃん、真っ赤になってるだけでなんも喋ってない…。